自分のしたい仕事が何なのか?
普段はそれを突き詰めて考える機会はなかなかありませんが、しかし、就職活動中や今の仕事がどうして合わず転職を考えているときには、「自分は何がしたいのか?」という問題に正面から向き合わなければならなくなります。
それでも、
とはいえ、あの仕事もこの仕事も興味がある。
もしくは、あの仕事もこの仕事も興味がない。
という自分のしたい仕事がわからず、答えがみつからない人も少なくありません。
「自分がしたい仕事は一体何なのか?」そんな袋小路に入ってしまったら、一旦肩の力を抜いてこう考えてみませんか?
個人のキャリアの8割は偶然の出会いで決まる

個人のキャリアの8割は、本人が予想もしていないような偶然の出会いによって決まっている。
と聞いたら、驚きますか?
実はこれは、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授のキャリア理論で、「計画された偶発性理論」として代表的なキャリアの考え方の1つです。
クランボルツ教授が米国で行った調査によれば、18歳のときに考えていた職業に就いている人は、全体の約2%にすぎず、多くの人のキャリアは本人も予想していなかった出会いやきっかけの積み重ねで作られるとしています。ですから、
「子どものころからの夢だった」
「学生時代から起業を目標にしてきた」
このように自らの興味や適性、得意なことから人生の目標やキャリアを描き、「やりたい仕事」を見つけ、その目標達成に向かって進むのが一般的…というわけではないのでひとまず安心しましょう。
むしろクランボルツ教授は、このような「キャリアは自分自身で、意図的に積み上げて形成するもの」という考えにこだわり、一つの仕事や職業を選ぶことは、様々な環境の変化が起こる今の時代にそれ以外の可能性を捨ててしまうことにつながると言っているくらいなのです。
「自分のしたい仕事がわからない」というと、それは「自分のキャリアや生き方について深く考えていないからなのではないか」といわれることもあったかもしれないし、そうやって自分を責めてしまったこともあったかもしれません。
しかし、それは自分の心を動かすような、「自分のしたい仕事はこれなんだ」と思えるような出会いをまだ経験していないだけ。
そう考えたら、ちょっと気が楽になりませんか?
とはいえ、「なんだ、まだ出会えていないだけなら、それを待っていればいいのか」という姿勢でいればいいのかというと、そういうわけではありません。
「待ち」の姿勢では、せっかくの出会いやチャンスも見逃してしまう可能性があります。
自分がこれだ!と思えるような仕事に出会う機会を、自ら創り出せるように、クランボルツ教授の理論をもう少し詳しく見てみましょう。
自分のしたい仕事に出会うために
心がけたい5つのこと
クランボルツ理論は、「偶然の出会いを待っていましょう」という理論ではありません。
クランボルツはその偶然の出会いを計画的に設計して、自分のキャリアをよいものにしていこうというポジティブなキャリア形成の理論です。「自分のしたい仕事がわからない」という状態から抜け出すために、「予期しない出来事」をただ待つだけでなく、その偶然を意図的・計画的にステップアップの機会にするために、クランボルツが提唱する次の5つのことを日々心がけていきましょう。
たえず新しい学習の機会の場を模索し続けること
2)持続性
失敗に屈せず、努力し続けること
3)楽観性
新しい機会は必ず実現する、可能になるなるとポジティブに考えること
4)柔軟性
こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
5)冒険性
結果が不確実でも、リスクをとって行動を起こすこと
(引用元:「その幸運は偶然ではないんです!」ジョン・D・クランボルツ著 ダイヤモンド社 2005)
今「自分のしたい仕事がわからない」という状態なら、ぜひ「好奇心」「柔軟性」「冒険性」を意識してまずは動き出してみてください。
部屋の中にいては、自分の感性を動かすような出会いは生まれません。自分の好奇心に従って、何でもいいから行動を起こしてみましょう。
「面倒くさい」でやめていたことを踏み出してみた先に、「これだ」と思えるような仕事との出会いの機会がある可能性は大いにあります。就職活動でも、「面倒くさい」をやめて参加した合同企業説明会で何となく良さそうな企業に出会い、それが就職先になり、仕事をしてみたら学生時代には思いもよらなかったその仕事が、実は天職だったということもあるかもしれません。
そして「どうせこの仕事はこんなもんだし」「自分は〇〇だし」という概念があると、その概念の外にある可能性を見落としてしまいます。「楽観性」をもって、ネガティブな概念や決めつけは捨ててしまいましょう。出会いは現状を悲観していたり、自分の考え方に固執していたりしたら、そのチャンスを見逃してしまいます。
さらに少しでも心に刺さるものをみつけたら、それを身につけるために努力し続けてみてください。
「自分のしたい仕事がわからない」のは、何も悪いことではありません。自分一人でどんなに一生懸命考えても答えがでないのであれば、それは自分の心を動かすような出会いをまだ経験していないということ。
「自分のしたい仕事」がわからなかったら、心を柔軟にして、自分の好奇心のアンテナが少しでも動いたものに対して行動を起こすことから始めてみましょう。
※参考文献
「その幸運は偶然ではないんです!」ジョン・D・クランボルツ著 ダイヤモンド社 2005
「クランボルツに学ぶ夢のあきらめ方」海老原嗣生著 星海社新書 2017