2016年卒業予定者の採用選考時期が原則8月以降となったことをきっかけに、今年新たに生まれた就職活動のキーワード、「オワハラ」。
「オワハラ」とは「就職活動終われハラスメント」の略語で、企業の様々な圧迫対応に悩む学生の実態がメディアで報道されるようになりました。
この「オワハラ」問題。企業側にも大きな問題がありますが、問題はそれだけではありません。「オワハラを受けたらどうしよう?」と表面的なオワハラ対策を考える前に、そもそも大切なことを考えてみませんか。
そもそも本当にその企業に入社したいのか?
「本命企業の面接はこれから先。だけどそれが失敗したら、後がない。」
選考時期の変更で、大手企業の採用活動の前に中堅・中小企業の選考が行われるようになり、就職活動の学生はこんな危機に直面するようになってしまいました。
第一志望の大手企業に不採用となった時の滑り止めとして8月以降に大手企業の選考が始まる前に応募した中堅・中小企業。その企業からもらった内定は、「保険」としてとっておくはずだったのに、「他の選考を辞退してくれたら内定を出すと言われた」「毎日呼び出されて、就職活動ができない」…というのがオワハラの一般的なケースです。
内定先企業のそんな対応に悩むかもしれませんが、ここで一度よく考えてみましょう。そもそも、自分はその企業に入社して、働きたい気持ちが少しでもあるでしょうか。第一志望でなくても、自分のやりたいことや、一緒に働いてみたいと思う人がその企業にあるでしょうか。
たとえ「保険」であっても、もし第一志望で不採用となれば、その企業に就職することになります。その時に、「この企業でもよかった」と思えますか。
「オワハラを受けて、仕方なく」という気持ちを入社まで引きずることになれば、入社後に気持ちを切り替えて前向きに働くのは難しいでしょう。そうならない自信はありますか。
少しでも「違うかもしれない…」と思ったら、その企業の内定を保険として持っておくことにそもそも意味があるのか?を考えてみましょう。
大手企業の選考後でも、採用活動を行う企業がゼロになるわけではありません。「オワハラを受けている」という嫌な気持ちが影響して、第一志望の面接でベストな自分が発揮できなければ元も子もありません。
また、オワハラをするような企業に入社して、本当に自分がやりがいを感じて働けるのか?という点についても考えてみましょう。
「この場で他の面接を断ったら、内定を出す」という究極の選択は、入社後の仕事の進め方を暗示しているかもしれません。
内定辞退をした場合に「損害賠償をする」「裁判で訴える」と言われるケースもあるようですが、一般的には内定辞退で学生が損害賠償や裁判で訴えられるようなことはほとんどありません。内定辞退で被った損害を立証する手間、その後の企業イメージのダウンなどの社会的影響を考えると、企業が辞退した学生を訴えるメリットはあまりなく、精神的な威圧が目的と考えられます。
そのような台詞が出た時点で、「こんな対応をする企業に就職するのは果たして幸せなのか?」を考えてみてください。
「オワハラ」をされたときに大切なのは、表面的にどう対応したらよいかではなく、そもそもその企業の内定が本当に必要なのか?を考えることなのです。
内定を保留することで不採用になる学生もいる
もう1つ大切な視点があります。あなたにとっては第一志望の「保険」である企業でも、その企業が第一志望である学生もいます。あなたが内定を断れば、他の学生に内定のチャンスが巡ってくるのです。
多くの内定を獲得できるのは、優秀な人材である証です。職業選択の自由のために保留にしておきたい気持ちもあるでしょう。
しかし、自分のキャリアプランや価値観に合い、入社したいと思える企業かどうか、内定先をきちんと吟味してみましょう。必要のない内定であれば、早めに辞退したほうが自分もスッキリして残りの就職活動に専念できるはずです。その辞退によって、他の学生にチャンスを提供することにもなると忘れないでいてください。
「その企業に入社することが自分にとってどうなのか」を真剣に考えましょう
多くの企業では、ある程度の内定辞退を見込んだ採用活動をしており、「多少の内定辞退は仕方ない」という認識は持っています。
それでも1人の学生の内定までにコストや労力がかかっており、何より入社後の活躍を期待している人材に辞退されるのは、企業にとっても様々な意味で大きな痛手となります。オワハラは、そんな企業の採用担当の立場から、発生したものだと言えるでしょう。企業の対応を責める前に、相手の立場を理解することも、これから社会人になる上ではとても大切です。
もしオワハラを受けた時には、表面的な対策の前に、まずは自分のその企業に対する思いに真剣に向き合ってみてください。
自分のキャリアプランや気持ちに沿って、企業の言い分も受け入れられるのか、そうでないのか。オワハラに対する正直な気持ちは、「そこまで自分を必要としてくれるのに、どうしよう」なのか、単なる嫌悪感なのか。自分の正直な気持ちを確認してみてください。
自分のキャリアプラン、企業に対する正直な気持ちを考えて、第一志望に受からなかった時に「ここでがんばろう」と気持ちよく妥協ができるかどうか。それが一番大切なポイントです。
もしわだかまりが残ると思うのであれば、オワハラ対策を考える前に、企業の内定を早めに辞退するのも誠実な対応の1つだと知っておきましょう。