「今の仕事ではなくて、他にやりたい仕事がある。」という前向きな理由から、「今の仕事に限界を感じているから、もう仕事を変えたい。」という後ろ向きな理由まで、様々な背景からキャリアチェンジを考える人は少なくありません。
何歳までなら、キャリアチェンジできるのか。30歳超えたらキャリアチェンジは厳しいって言われているけれど、本当のところはどうなのか。
キャリアチェンジについて「年齢の壁」の現実を知っておきましょう。
ポテンシャルで採用してもらえるのは入社2~3年目まで
入社2~3年目までの20代前半は、ほぼ新卒と同様に第二新卒としてポテンシャルで採用してもらえます。
第二新卒としての採用ニーズは景気に左右され、新卒採用時に不景気で採用を控えて、2~3年後に景気回復したような場合に、採用を控えた年次の社員を補うために採用が増える傾向があります。卒業した大学や新卒入社した企業によっては、異業界から超大手企業に転職することも可能です。
新卒で不採用となった企業にリベンジできる可能性もあり、第二新卒枠の中途採用では、異業界・異職種への転職も比較的スムーズです。
ただし、入社1年目で「この社風も仕事も合わないから、早めにキャリアチェンジしよう。」と転職活動をしてしまうと、「長続きしない人」「我慢ができない人」と企業からマイナス評価をされてしまう可能性が非常に高いです。
新卒入社した会社の仕事や社風がどんなに合わないと思っても、最低でも1年、できれば2~3年は頑張ったほうが転職市場での評価はよくなります。ここの1~2年の差は、プラスにこそなれ、マイナスになることはありませんので、キャリアチェンジを急ぎすぎないようにしましょう。
入社3年以内でキャリアチェンジする場合、大切なのは新卒入社した会社を3年以内で辞めるというのは、就職活動時に選択ミス、つまり失敗をしたのだと自覚することです。ただし、この失敗はマイナスではありません。
事実を正面から受け止め、失敗をきっかけに本当に自分のやりたいことや、自分が大切にしたい仕事観を見つけたと力強く語れることができれば、この経験をプラスにすることができます。自分にしっかり向き合って、キャリアチェンジの準備をしましょう。
20代後半から30代前半までは「熱意と実績」の準備を
この年代になると、企業も経験者を優先します。だから、キャリアチェンジで新たな分野に挑戦するなら、中途採用する企業に「経験者よりもこの人を採用したほうがいいかもしれない。」と思ってもらえる「何か」が必要になります。
その「何か」とは、真剣な熱意だったり、「こんなことがやりたい」という具体的な仕事イメージだったり、「今までの違う分野での経験をこう活かせる」という具体的なプランだったりします。
未経験の分野でこれを語るには、その分野に関してかなりの情報収集が必要になってきます。そのような情報収集をして経験者を上回るほどの「何か」をアピールするのがそう簡単ではないため、「30歳を越えたら、キャリアチェンジするのは極めて難しい。」と言われてしまいます。
しかし全く不可能というわけではありません。
自分のやりたい仕事に対して十分なリサーチをし、今までの仕事から活かせる能力や経験を具体的なエピソードでしっかりアピールできれば、可能性は見えてきます。
たとえば営業から総務にキャリアチェンジしたい場合、営業職として培った顧客視点やコミュニケーション能力が、今度は従業員を顧客とする「総務」という職種に活かせると言えるかもしれません。
他にも資格がプラスに働く分野へのキャリアチェンジ(経理など)であれば、その資格を取得しておけば、熱意や本気度を補足する材料になるでしょう。海外勤務を希望するのであれば、その国の言語を習い、習得しておくなども熱意や本気度の補足材料となります。
自分が今までの経験で得た能力を、新たな分野でどのように活かせるか。20代後半以降のキャリアチェンジでは、未経験の分野でも自分なりの仕事観が語れるくらいきちんと情報収集をして、チャレンジしてみてください。
※ただし、知識だけでなく「年齢相応の一定期間以上の実践スキル・経験」が求められる技術職(システムエンジニア含む)へのキャリアチェンジはもうこの年代になると、ほぼ不可能です。
35歳以上のキャリアチェンジの現実
35歳以上では、比較的容易な場合と極めて難しい場合に大きく分かれます。35歳以上でキャリアチェンジするのが比較的容易なのは、
1)組織や部下のマネジメント経験が豊富。
2)自分の専門と言える分野があって、かつそこで実績がある。
3)さらにその分野の知識や経験が応用できる分野に、キャリアチェンジしたい。
という3つの条件が全て揃っている場合、または2)と3)を満たす場合です。たとえば、「営業で実績を上げた人が、製品の販路に課題を抱える企業に販路拡大のミッションを持つ事業部長として転職する」「経理部長で成果を上げた人が、経営企画部長に転職する」というようなケースです。
それ以外では、35歳以上でキャリアチェンジするのは一般的には極めて難しいと言えるでしょう。なぜなら、企業は35歳以上で採用するならその分野のスペシャリストや業務経験が豊富な人材が欲しいからです。
社内でキャリアチェンジする場合でも、企業は35歳を過ぎた従業員に、未経験で不慣れな仕事をされるより、今まで通りの仕事をしてもらったほうがはるかに業務効率がよいため、社内での異動も難しくなります。
なぜ35歳以上のキャリアチェンジが極めて難しいのかを理解するために、「35歳を超えてキャリアチェンジ」という状況を客観的に考えてみましょう。
35歳を過ぎてキャリアチェンジされると、企業や職場は35歳を超えた「初心者」を扱うことになります。35歳を過ぎた未経験者に1から教えるのは、たとえ本人が気にしなくても周囲は相当やりにくいものです。
それもあって、「未経験だけど熱意がある人」「成長意欲の高い人」を採用するならば、これから成長する可能性が高く、入社後に企業に貢献してくれる期間も長い若手人材のほうが圧倒的によいのです。
さらにいえば、35歳を過ぎた人材は一般的に「仕事の癖」があり、企業風土に合うか、未経験の仕事を習得できるか企業としては不安に感じる要素もあります。
このような理由から、35歳を過ぎてキャリアチェンジするのは極めて難しくなります。但し、介護関連職など求人需要に対して深刻な人材不足が問題となっている分野にキャリアチェンジを希望する場合はこの限りではなく、35歳以上でもキャリアチェンジは可能となります。
20代後半からのキャリアチェンジは社内で打診してから
このようにキャリアチェンジをする際の年齢の壁は、多かれ少なかれ存在します。20代後半になってキャリアチェンジをしたいと思ったら、先に転職を考えるのではなく、まずは社内での異動を打診してみましょう。
全く初対面の企業の面接よりも、今までの実績や信頼、人間関係がある社内のほうが、あなたの主張を考慮し、聞いてくれる可能性が高いからです。
もちろん社内で異動を希望する場合にも、ここで紹介したような相応の「熱意と実績」が重要です。「今の仕事が嫌」という不満ではなく、新たな仕事への「熱意とそれに関連する実績」であれば、異動を叶えてもらえる可能性は格段にアップするでしょう。
社内で上司や人事部門に相談し、異動の可能性も全くなく、それでもキャリアチェンジへの思いが止められないようであれば、その時に転職活動を始めてください。
ただし、未経験職種への転職活動は通常の転職活動以上に時間がかかる可能性が考えられます。次の転職先を決めてから退職するという鉄則は、くれぐれも忘れないようにしましょう。