入社して2~3年経ち、仕事や会社に一通り慣れてくると、今後のキャリア形成について考えるようになります。その時に、「ゼネラリストとスペシャリスト、将来どちらがいいのだろう?」という悩みがでてくることも。
「スペシャリストのほうが、転職でも『潰し』がきく」「これからは、深い知識を持ったゼネラリストが求められる」など情報は様々です。「結局、どっち?」と迷ったら、こんな視点で考えてみませんか。
「ゼネラリスト」を選んだ場合のキャリアパスは?
ゼネラリストとは、複数の分野での業務経験と、それにまつわる知識を持つ人を指します。2~3年で異動を繰り返す大企業の人材育成制度では、このようなゼネラリストが育成される傾向があります。
会社の意向としてゼネラリストを養成するのではなく、キャリアパスとしてスペシャリストかゼネラリストか選べる企業もあります。いずれにしても、ゼネラリストを選んだ場合は、複数の業務領域で幅広く経験を積んでいくことになります。
たとえば文系職種では「営業→マーケティング→事業企画→新規事業立ちあげ」のように全く異なる領域へ異動を繰り返すようになります。また理系職種では、現場のエンジニアからチームやプロジェクトをまとめる立場になり、技術力よりもマネジメント力・プロジェクト推進力を磨くことを重視していくようになります。
他部署への異動でも、「商品企画→広告宣伝→販売促進」のように、関連する領域で異動を繰り返す場合は、「ゼネラリスト」というよりも「マーケティングのスペシャリスト」と言えるでしょう。同じように法人営業でも、「大企業へのルート営業→中小企業への新規開拓営業→大手企業への新規開拓営業」という場合も、「営業のスペシャリスト」と言えます。
「ゼネラリスト」に向いている人はどんな人?
ゼネラリストは、プロジェクトや事業を成功させるために、若手メンバーや内部・外部の協力者、スペシャリストのまとめる調整役・推進役となります。
複数の関係者をまとめて、プロジェクトや事業を推進するには、幅広い業務経験で培った広い視野と課題発見力、課題解決力、調整力、交渉力、コミュニケーション能力などが必要となります。
そのためゼネラリストは、人と話をしながら問題解決するのが好きな人や、周囲の人を動かして自分の思い描く事業やプロジェクトを推進していきたい人に向いています。一方で、人との交渉や調整が苦手な人や、自分の得意分野に集中したい人には、あまり向いていません。
「スペシャリスト」を選んだ場合のキャリアパスは?
一方スペシャリストとは、特定の分野に高い専門性を持ち、その分野に特化した仕事を行う人のことです。
技術系職種の場合は、いずれも専門性の高いスペシャリスト色が強くなりますが、一般企業の文系職種なら、人事や経理、総務、法務などの管理部門が該当します。これらの部署に配属となった場合、その部署で深い知識を身につけて「事務系スペシャリスト」のキャリアを歩むことが多くなります。
また前述のようにマーケティングや営業、品質管理や生産管理などの限られた職種内で様々な経験を積んだ人も、「スペシャリスト」です。
システムエンジニアは、技術の進化とともに専門性も細分化しているため、得意とする技術(アプリケーション、ネットワーク、データベース、システム管理など)、開発するシステムの内容(販売管理、生産管理、財務会計など)、担当業界(金融業界や製造業、飲食業界など)に特化した経験を積み重ねることで、「●●ならアイツ」というような専門性を身につけていくことになります。
「スペシャリスト」に向いている人はどんな人?
スペシャリストには、「特定分野に関する深い知識と経験」が必要とされ、常に最新の技術や業界動向、他社事例などの情報にキャッチアップしていることが求められます。
そのため、新しい技術や知識を学ぶことが好きな向学心の強い人や、自分の興味のある分野や好きなことを深く追求したいタイプには向いています。専門分野の知識や経験を、周囲にわかりやすく伝えられるコミュニケーション能力もあれば、さらに活躍の場は広がります。
自分の専門知識やスキルを高めることに喜びを感じる場合は、スペシャリストの道を選ぶほうが仕事の満足感を得やすいと言えます。
市場で求められるのはゼネラリスト?スペシャリスト?
「転職を考えるなら、専門性の高いスペシャリストのほうが転職しやすいのでは?」という認識もあるようですが、そのようなことはありません。
専門性の高いスペシャリストはもちろん、ゼネラリストの持つ課題発見力、課題解決力、調整力、交渉力、コミュニケーション能力なども転職市場でも十分評価されます。こうしたゼネラリストは、20代であれば幹部候補生として、30~40代であれば管理職の戦力として求められるのです。
ゼネラリストもスペシャリストもそれぞれに求人ニーズがあります。「転職しやすさで選ぶなら」という視点では、どちらも変わらないのが現実です。
どちらを選ぶかの決め手は市場性よりも自分の志向性
また、管理職はゼネラリストというイメージがあるかもしれませんが、最近ではプレイングマネジャーとしてスペシャリストでもマネジメント業務が付加されることも多くなっています。さらに、スペシャリスト部門を統括する立場になることもあり、スペシャリストも管理職になる可能性はあります。
ゼネラリストかスペシャリストか。どちらを選んでも、自分の目指す方向をきちんと意識して経験を積んできたのなら、転職市場でも企業からも必要とされる人材となります。
「転職しやすいか、潰しがきくか、出世しやすいか」という市場性や、出世や待遇という視点ではなく、ぜひ「どちらの働き方を楽しいと感じ、やりがいを感じるか」というあなたの志向性で決めてください。