内閣府や経済産業省が推進する「日本再興戦略」でも、「女性の仕事と子育ての両立促進」は非常に重要なテーマと位置づけられていますが、その推進策は動き始めたばかり。

現実にはワーキングマザーを取り巻く環境は、企業によって大きな差があり、「もっとやりがいのある仕事をしたいのに、任せてもらえない」、「激務過ぎて、家事も育児も全然できていないのが苦痛」など様々な理由から転職を考えるワーキングマザーも多いでしょう。

そこでワーキングマザーが転職で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないようにするために、考えておきたい大切なことを紹介します。

仕事はできる限り続けたまま転職活動を

続けたまま

ワーキングマザーの転職活動は、状況が許す限り、仕事を続けたまま行いましょう。「こんな職場でこれ以上は働けない!」と勢いで辞めてしまったり、「転職活動と育児と仕事、3つを同時にはできない」と辞めてしまったりする方もいますが、あまりおすすめできません。

退職してしまうと、希望の求人がなく、転職活動が想像以上に長引き、子どもを保育園に預け続けるために希望とは程遠い条件でやむなく転職…ということになりかねません。

また、正社員としての転職を希望する場合、住んでいる地域や職種によっては、そもそもワーキングマザーとして正社員で転職することが極めて難しいこともあります。

「子どもの病気でよく休んでいるから、面接でさらに仕事を休むのが難しい」こともあるかもしれません。やむを得ず退職してから転職活動せざるを得ないときには、転職活動が長引くリスクをきちんと理解しておきましょう。

キャリアか育児か、両方か。希望のワークライフバランスを明確にする

キャリアか、育児か、両方か。今回の転職で改善したいのは、どのような状況でしょうか。

「子どもを持つ女性には重要な仕事を任せてもらえない」という環境を改善するために、転職するのか。育児や家事などの時間を確保するために、転職するのか。それとも両方が叶う環境を手に入れたいのか。

今の状況を改善して、転職で実現したいワークライフバランスを明確にし、それを夫や家族に話して、理解し協力してもらえるようにしましょう。

たとえば、 「より責任ある仕事をし、子育てしながらキャリアを積みたい。」のであれば、夫や家族に今以上の家事・育児への協力をしてもらえるか確認する必要があります。

また、育児と家事などの時間を確保するために正社員から契約社員や派遣社員、パートに転職したいなら、年収が大きく変わることになります。やはり生活費や教育費などへの家計の影響を、夫婦で話し合わなければなりません。

転職は、職場の環境だけでなく夫や両親の育児協力体制を変える機会にもなります。後で後悔やトラブルとならないよう、しっかりと自分の考えを家族に伝え、話し合っておきましょう。

子どもが成長したときの自分の姿をイメージする

子供が成長

「子どもが小さいうちは、一緒にいる時間を多く過ごしたい。」「育児が大変だから、仕事の負担を減らしたい。」と、正社員から時間的に負担の少ない、パートや契約社員など非正規雇用の働き方へ転職を考える方もいます。

その際には少しだけ、子どもが中学生や高校生になったときに、自分がどんな働き方をしていたいのかをイメージしてみてください。そのイメージにある自分は、正社員でしょうか。それとも非正規雇用の働き方でしょうか。

「今はパートで、子どもが大きくなったらまた正社員に。」という働き方は、不可能ではありませんが、現実的には非常に難しくなります。あまり考えずに選択すると、「あのまま働いていれば、今頃は…。」と悔いが残ってしまうかもしれません。

さらに老後資金の問題もあります。正社員として働き続けた場合と、途中から非正規雇用になった場合では、受け取れる生涯年金額が大きく異なります。妻が正社員として働き続けるかどうかは、夫婦の老後の生活にも影響します。

転職は「今」だけでなく、長期的な視点で選択するようにしましょう。

ワーキングマザーを求める企業に出会えたら視野を広げてチャレンジ

視野を広げて

ワーキングマザーの転職活動というと「子どもがいて休みがちになるから、なかなか採用してもらえない」というイメージがありますが、最近では「ワーキングマザー歓迎」という求人もあります。

今や、「出産後に働きやすい環境があるか」「育児をしながら働いているワーキングマザーがいるか」は、優秀な若手女性の採用に重要な要素となります。そこで、ベンチャー企業や中小企業で社内に前例がない場合に、ワーキングマザーを採用してその事例を作りたいと考える企業も出てきました。

さらに新商品や新サービスの開発のために、ワーキングマザーの視点が求められることもあります。

ワーキングマザーは年々増加し、2012年の総務省の就業構造基本調査では、25~39歳の女性のうち働く人口の割合が69.8%と過去最高となりました。家事の短縮や育児サービスなど、ワーキングマザーの様々なニーズを満たすことが市場の活性化を牽引するともいわれており、そのためにワーキングマザーの視点が活かせるのです。

このような求人に出会った場合は、「業界に興味がない」「年収が減る」「企業規模が小さい」等、多少希望から外れていても、経験が活かせるのであれば、ぜひチャレンジしてみてください。

面接で話を聞けば、企業理念に共感できたり、意外な魅力ややりがいを発見できたりするかもしれません。また、ワーキングマザーを求めている分、その他の希望に満たない条件を差し引いても働きやすい環境である可能性があります。

「転職」を真剣に考えることで「今」を客観的に見つめ直す

「転職したい」と家族や友人に話すと、「子どもがいるのに、転職活動なんて大変じゃないの?」と言われるかもしれません。

しかし転職を前提に情報収集し、家族で話し合うことで、「今の状況」をより客観的に捉え、「これからの働き方」を真剣に考える機会になります。

実際に転職して、今よりも働きやすい環境になるかもしれません。また転職しなくても、様々な視点から検討した結果で「やはり転職しないで、この職場でがんばろう。」と思えたら、それも大きなプラスになります。

話し合いをきっかけに、夫や家族の家事や育児への協力体制が変わり、ストレスや負担を減らせる可能性もあります。

転職を考えることは、今を見直すいいチャンスです。後悔しないためにも、勢いや現状回避ではなく、長期的・客観的な視野で自分の求める働き方について考え、きちんと家族と相談してみてください。