安定や高待遇を求めて、就職活動で大企業を希望する学生は多くいます。しかし、中小企業には大手企業にはないメリットや魅力があります。ここでは、中小企業に就職するメリットと、自分に合う中小企業の選び方を紹介します。

日本の企業の99.7%は中小企業

中小企業

中小企業庁によると、中小企業の定義は以下の通りです。

□製造業その他:資本金3億円以下または従業員300人以下

□卸売業:資本金1億円以下または従業員100人以下

□サービス業:資本金5000万円以下または従業員100人以下

□小売業:資本金5000万円以下または従業員50人以下

中小企業の数は385.3万社と、日本の企業の99.7%を占めます。一方大企業は、1.1万社と0.3%にすぎません。従業者数でみても、大企業は1397万人で約30%。中小企業は3217万人と、日本の企業で働く約70%の社会人が中小企業で働いているのです。(中小企業庁「2014年版中小企業白書」)

「大企業に入りたかったのに」と思って働くか、その良さを理解して「中小企業でよかった」と思って働くかは大きな差となります。ここで、中小企業で働くメリットをぜひ知っておきましょう。

中小企業のメリット1:「距離」が近い

距離

中小企業で働くメリットは、規模が小さい分、経営者やお客様との距離が近いことです。

経営者との距離が近ければ、経営や事業に対する経営者の思いや考えを日々感じながら仕事をすることができます。中小企業にも、魅力的な経営者が数多くいます。こうした経営者の近くで仕事をすることで得るものや学ぶものは多く、大企業にはない大きなメリットといえます。

また、部署が細分化されていない分、お客様との距離も近くなります。

例えばSEの場合、大手企業では「発注元のお客様の顔を見たことがない」まま、開発に携わることは日常的です。しかし中小企業なら、開発規模が小さい分、お客様と接点を持ちながらシステム開発に携わる場面も出てきます。

中小企業のメリット2:仕事を幅広く任せてもらえる

任せる

規模が大きい分、仕事が細分化されている大手企業とは異なり、中小企業では1人が担当する仕事の範囲が広くなります。例えば、マーケティングを例にとっても、大企業では市場分析、商品開発、広告宣伝、PR、販売促進と全て異なる部署が担当しますが、中小企業ではそれを1人で担当することもあります。

その分、各分野の専門性を高めていくのは難しいですが、業務の幅広さにやりがいを感じるタイプには、中小企業での仕事のスタイルが向いているといえるでしょう。

中小企業のメリット3:提案が「かたち」になりやすい

かたち

 

また、細分化されていない分、仕事を進めるために確認が必要な関連部署が少なかったり、決裁者が近かったりと、仕事をスムーズにスピーディに進めることができます。

そのため、「これをやってみたい」という提案が採用されやすく、「かたち」になりやすいのが中小企業です。

大企業ではブランドや信用力がある分、小回りがきかず、新しいことにチャレンジしたり「かたち」にしたりするために十分なリサーチや準備が必要なことが多いのです。その点中小企業なら、大企業よりも業務改善や新しいチャレンジに取り組みやすいことはよくあります。

中小企業のメリット4:安定企業、優良企業も多い

安定企業

よく「中小企業は、大手に比べて安定性が不安」と言われますが、これは大きな誤解です。

中小企業でも独自の技術やサービスで、長年業績が安定している企業が多くあります。また、利益率の高い事業モデルで待遇がよい、経営者の経営理念から大手企業並の福利厚生や教育研修制度を整えている等の企業もあります。例えば、ステンレス加工を行うある企業では、従業員数は10名以下ですが、社員教育研修にかける年間費用は数十万と、超大手商社並の教育費をかけています。

「高収益と安定成長の事業モデルを維持するために、あえて事業分野の拡大を行わない」と、信念を持って中小規模での事業運営を続けている企業も多いので、「中小企業=安定していない、福利厚生が不安」という先入観で、優良企業を見落とさないようにしましょう。

魅力のある優良中小企業の見つけ方は?

それでは実際に中小企業への就職を考えたときに、魅力のある優良中小企業をどのように見つければよいのでしょうか。

最も簡単なのは、大手就職情報サイトを2~3つチェックすることです。そこで、「名前を聞いたことがないけれど、複数の就職情報サイトに掲載している」企業を調べてみましょう。

大手就職情報サイトの掲載には、それなりの掲載料が必要です。それを複数利用しているのは、それだけ採用に真剣であり、コストをかけられる資金的余裕があるということです。「名前を聞いたことがないから、応募しない」ではなく、「知らない会社だけど、何だろう?」と思ってみてみましょう。

そこで企業の名前をリストアップし、次に企業のホームページで、創業年数を確認しましょう。20年以上続いている企業は、景気変動を乗り越えてきたそれなりの強みがあると言えます。さらに社長の経営方針やメッセージを見て、人柄やその思いに共感できるか見てみましょう。

創業後それほど年数を経ていない会社では、社長のキャリアが重要です。大手企業で実績、スキル、人脈を身につけた社長が、そのアイデアを実現するために起業することはよくあります。その場合、創業後の歴史が浅くても、取引先や資本に盤石な体制が整っていることも多いのです。

そして、サービスや製品のオリジナル性も確認します。ニッチな分野でトップシェアのものがあれば、経営の安定性は高いと言えます。また、トップシェアの製品やサービスを生み出す企業は、「意見が言いやすい」「従業員の仲が良い」と、風土がよい可能性も極めて高いのです。

企業名を入れてネットで検索し、業界専門サイトやニュースサイトなどで紹介されている記事がある場合は、それもチェックしてみましょう。企業の強みがよく理解できるはずです。

企業説明会で空いているブースが優良企業に出会う最大のチャンス

このやり方は、自宅でもできる「魅力ある優良な中小企業の見つけ方」ですが、最もよい方法は、企業の担当者や社長に会って話すことです。その絶好の機会が、企業説明会です。企業説明会があれば、積極的に足を運んで、より多くの担当者と話をしてみましょう。

特に空いている企業ブースは、優良企業に出会う最大のチャンスです。基本的に企業説明会に参加する企業は、「新卒者を育てていきたい」という採用意欲の高い企業です。必ず何かしら、強みを持っています。多くの学生は、知っている企業のブースしか行こうとしません。それでは、優良企業に出会うチャンスを逃してしまいます。

企業説明会で、空いているブースがあれば、ぜひ進んで足を運んでみましょう。そして、「すみません。今日御社を初めて知りましたが、ブースをみて興味を持ちました。事業内容を教えてもらえませんか。」等と、素直に聞いてみましょう。学生が企業に詳しくないのは当たり前なので、知らないことを恥ずかしがることも遠慮することもありません。

そこで事業内容を学生にもわかるように丁寧に説明してくれる場合、その企業は魅力的な優良企業である可能性が極めて高いです。企業によっては、社長が直接話をしてくれることもあります。

中小企業は、「事業を拡大できない企業」では決してありません。学生の時点で今思い描いている中小企業のイメージが当てはまらない企業は、数多くあります。先入観を捨てて、中小企業の可能性を見つけてみてください。