人事異動の季節、希望しない勤務地や部署への異動の辞令を受ける方も少なくないでしょう。

「そんな仕事やりたくない。」
「なんとか異動拒否できないだろうか。」

と憂鬱になってしまったら、ちょっと見方を考えてみませんか。この異動は、もしかしたら仕事や人生に大きなチャンスとなる可能性もありますよ。

異動の理由や背景を確認してみよう

移動の理由

納得のいかない、希望しない人事異動の辞令を受けた際には、上司に異動の理由や背景を確認してみましょう。

上司にもよりますが、異動する理由や背景をきちんと教えてくれる上司も少なくありません。何故自分が選ばれたのか、異動先の部署でどのような働きを期待されているのかなど、異動の理由や異動先部署の抱える背景・課題などを確認すれば、希望しない人事異動の受け止め方も変わってくるかもしれません。

企業が人事異動を行う背景には、「昇進」「適材適所への配置」「人材育成」「事業縮小に伴う雇用の維持」「懲戒や業績の低い従業員への対応」等があります。

いずれにしても、従業員が持っている能力やスキルを最大限発揮して成長できるように、または職場や職務への人材ミスマッチによる支障を最小限にする目的であることは同じです。異動辞令が出るということは、少なくとも今の部署よりはあなたの能力を活かして成長できる、あるいはあなたの能力を必要としている部署が他にあるのだと理解しましょう。

また、「懲戒や業績の低い従業員への対応」という側面もあります。懲戒事由に心当たりがなくても、「最近仕事がマンネリ気味になっている」「上司や同僚とあまりうまくいっていない」「仕事で成果をあげられていない」などに、思い当たることはありませんか。

このような場合、「場」を変えて、改めて能力を発揮することが望まれています。今いる部署で、職場内の人間関係が悪かったり、成果が挙げられていなかったりしても、他の職場ではうまくいくことは多々あります。

もし思い当たるならば、慣れた現状を維持したい気持ちを捨てて、思い切って辞令を受け入れ、新たな環境に移ったほうが幸せになれる可能性は高いでしょう。

その仕事や勤務地には今持つ「イメージ」とは異なる側面がある

「営業にやりがいを感じていたのに、内勤になった」「開発部門いたのに、営業になった」など、人事異動では今までとは異なる職務に異動となることもあります。また希望しない勤務地へ、転勤を伴うこともあります。

その職務や勤務先に対して持ってマイナスのイメージを持っていると、「事務仕事なんてイヤだ」「営業なんてやりたくない」「××支社で働くのなんてイヤだ」という思いになってしまいます。

しかしどんな仕事でも、業務を知らずに抱く「イメージ」と、実際にやってみる「内容」には違いがあります。もしかしたら「嫌な仕事」「つまらない仕事」と思っていた仕事が、意外に自分に合っている可能性もあります。また、今まで使っていなかった自分の能力やスキルが、その職務で発揮できる可能性もあるのです。

例えば、ある企業で人事に配属され、社会保険労務士の資格も勉強しながら、人事業務にやりがいを感じていた20代のAさんは、広報室への異動辞令を受けました。人事のプロフェッショナルになるキャリアプランを描いていた彼女にとって、異動辞令はとてもショックなものでした。しかし、いつか人事への異動願いを聞いてもらえるように、目の前の仕事にベストを尽くそうと広報の業務に取り組んだ結果、広報の仕事にやりがいを感じ、より自分に向いていると気づいたと言います。

今までの「イメージ」を取り払うのは簡単ではありませんが、マイナスイメージを払拭してその仕事に向き合えば、意外なやりがいや適性に気づくこともあります。「こんな仕事なんて…」と思わずに異動先の職務をみてみましょう。

「与えられた仕事で成果を最大限上げる」のは次の仕事につながる

仮に不本意な異動であったとしても、その異動を受け入れて、その職務で成果を上げれば次の仕事のチャンスに繋がる可能性もあります。

企業で活躍する人の中には、不本意な異動先の業務でベストを尽くしたことで、次に大きな仕事を任されたり、その仕事が天職となったりした人も少なくありません。

「不本意ではない仕事でも、成果を出せるように全力で取り組む」という姿勢は、必ず評価されます。また、「望まない状況への対応力を上げる」チャンスでもあります。長い社会人人生のなかでは、望まない状況はこの先いくらでもやってきます。どんな異動でもそれをチャンスと捉えて状況を変えられる力を身に付けられれば、この先必ず役に立つ時がやってきます。

辞令を受けるのは従業員の義務であることを忘れずに

突然の異動辞令が、自分自身のキャリアプランやライフプランに沿っていないことはよくあります。しかし、希望しない異動辞令を受け入れて、異動先で能力を開花させたビジネスパーソンは非常にたくさんいます。

雇用契約で職務や勤務地が限定されていない場合、人事異動を拒否してそれを受け入れてもらえるのは極めて難しいのが現状です。
希望しない異動辞令を受けた時には、自分のキャリアプランやライフプランに合っていないからといって拒否するのではなく、受け入れられる側面がないか、冷静に広い目で状況をみてみましょう。

この異動は、自分の新たな可能性や能力に気づくチャンスかもしれませんよ。