仕事をすぐに辞め、転職を繰り返してしまう「辞め癖」。自分の希望と異なったり、嫌なことがあったら仕事から逃げてしまう「逃げ癖」。
この「辞め癖」や「逃げ癖」については、「仕事で、辞め癖や逃げ癖がついたら直らない」「辞め癖がつかないように、仕事はすぐに辞めないほうがいい」とか、「大変なことは無理にやらなくていいから、逃げてもいい」「辞め癖・逃げ癖なんて気にする必要はない」とか、賛否両論あります。
どちらの言い分にも一理あります。辞め癖がつかないようにした方がいいのは何故なのか、辞め癖なんて気にしなくてもいいのは何故なのか。「辞め癖や逃げ癖がついてしまった末路」のキャリアから考えてみましょう。
そもそも、どれくらいから「辞め癖」になる?
転職を繰り返す「辞め癖」に明確な定義はありませんが、在籍期間2年未満の転職を3回以上繰り返していると、「辞めることに抵抗がない人だな」という印象を面接時にもたれることが多くなるのではないかと思います。
「逃げ癖」も一緒に仕事をしていない限り、わかるものではないですが、転職回数が多いと、その転職理由がどんな理由であったとしても「この人、何か嫌なことがあったらすぐに逃げてしまう人かも」と思われるようになるでしょう。
この転職回数が4回、5回となってくると、「この人は、採用してもすぐに辞めちゃうだろう」という第一印象は一層強くなります。
ここで気を付けたいのは、「辞め癖」も「逃げ癖」も、自分ではそんなつもりはなくても、転職回数が多いと「辞め癖のある人だ」[仕事でいやなことがあったらすぐ逃げてしまう人ではないか」と思われてしまう可能性が高くなってしまうということです。
本当の転職理由は、仕事に飽きたわけでも、仕事から逃げているわけでも、仕事を辞めることに抵抗がないわけでもなく、「説明されていた仕事の内容や労働条件と違った」「入ってみたらブラック企業だった」「上司にパワハラされた」等と、それぞれの転職に相応の理由があるかもしれません。
しかし、そこまで丁寧に説明できる機会がいつもあるわけではありません。転職回数が多いと、次の企業に応募する際に企業の採用担当者からは「辞め癖がある、定着しない人」と一括りにされてしまうことも多いと知っておきましょう。
「辞め癖」や「逃げ癖」がついた末路は?
このように短期間で転職を繰り返す人の履歴書や職務経歴書を見て、採用担当は「ああ、この人、すぐ辞める人なんだ」「入社しても、何か気に入らないことがあったらすぐに辞めちゃうかもな」と考えます。
少子高齢化で労働人口の減少が進む今、企業の人手不足は深刻です。しかし、いくら人手不足といっても、企業もすぐに辞める可能性が高い人を積極的に採用したいとは思いません。
採用活動には、相応のコストがかかりますし、採用した人材が社内で活躍し実績を出せるようになるには、教育し育てる必要もあります。企業の視点からすれば、採用した人材が収益を上げて採用と教育にかかったコストを回収できるまで相応の期間がかかるので、採用した以上はそれなりに長く勤めてほしいのが本音なのです。
ただし、応募者が20代であれば、「転職回数が多いといっても何か事情あったかもしれないし、これから成長して変わるかもしれない」と期待する企業もありますので、「1年未満の在籍期間で、転職を繰り返している」という極端な状況でもない限り、人手不足が深刻な今はそれなりに求人もあり、転職で困ることは少ないでしょう。
しかし、30代でまだ転職を繰り返してしまうと、「よほどの事情」がない限り、企業は「この人は辞め癖があり、定着できない人なんだ」と判断するようになり、その人を積極的に採用しようとは思わなくなってきます。
ここでいう「よほどの事情」とは、2つのパターンがあります。1つは、その人が特定の分野で圧倒的な業績を出している場合です。「たとえすぐに辞めても、実績を残してくれればいい」と期待できるほどのキャリアや能力があれば、転職回数は何回でももはや関係なくなります。
もう1つは、求人を出しても応募者が少なく、とにかく誰でもいいし、すぐに辞めてもいいからからまずは採用したい場合です。応募者が少ないのには、それなりに理由があります。優良企業でも、規模が小さく知名度が低いがゆえに応募者が集まらないことはありますが、仕事がきつい、待遇が低いなどいわゆるブラック企業だからという理由もあるでしょう。
「働きやすい会社」や「安定している会社」、「やりがいのある仕事」や「待遇が良い仕事」には、転職回数の少ない人材からも応募があります。複数の応募があるならば、前述のように特筆すべきキャリアがあれば別ですが、同じような経験であれば、企業は「長く続けてくれそう」と思える人の選考を進めます。その結果、「辞め癖」がついてしまうと、自分の希望に合う企業からは縁遠くなってしまうのです。
つまり、企業の採用意欲が盛んな今は、20代であれば自分の希望に近い転職先を見つけられる可能性も高く、「転職回数なんて、関係ない」「辞め癖なんて関係ない」と思えます。そう思えるうちに、自分に合う企業を見つけられるといいのですが、それを繰り返して30代になってしまうと、転職活動は思うようにはいかなくなってしまいます。
「辞め癖」や「逃げ癖」がついたその先には、転職活動で自分の希望にあう企業になかなか採用されず、転職を繰り返すたびに待遇が下がったり、条件が悪くなったり、働きにくい環境になったりしてしまう「負のスパイラル」のリスクが待っていることを知っておいてください。
それでも体を壊してしまうよりは辞めて逃げたほうがいい
しかし、だからといって仕事から逃げてはいけない、会社を辞めてはいけないというわけではありません。心身に影響がでるようなストレスがあれば、その会社や仕事からは逃げたほうがよいことも多々あります。
「辞め癖」も「逃げ癖」も、「転職で応募したときに、マイナスのイメージを持たれやすくなる」「あまり繰り返していると、希望の仕事や待遇のいい会社に入社しにくくなる」というだけで、それがいいか悪いかを判断するのは自分自身です。
これからの自分のライフワークバランスを考えたときに、「生活費を稼げるなら、仕事はなんでもいい」と思えるならば、「辞め癖がある」という印象を持たれるキャリアだったとしても、仕事はみつかります。
短い期間で転職を繰り返し、「これって辞め癖?」「もしかして逃げているだけ?」と思ったら、自分の人生において仕事はどんな位置づけなのか、自分は仕事や会社に何を求めているのか、一度立ち止まって整理してみましょう。自分と仕事との距離や、仕事や会社に求めるものがしっかり見えてくると、今の状況の捉え方も変わってくると思いますよ。