転職活動をするとき、多くの人が「やりたい仕事かどうか」「給与がアップするか」「勤務地が希望に叶っているか」等で会社を選びます。
次の職場では長く仕事を続けたいから、できれば多くの希望を叶えたいのが転職です。しかし、すべてを叶えるのは難しいからこそ、仕事内容、給与、勤務地、ワークライフバランス等の中から叶えたい優先順位を明確にすることがとても大切になってきます。
この転職で何を重要視するのか。その価値観は人それぞれですが、後悔しない転職のためにぜひその判断軸に付け加えていただきたいのが、「その会社で出会った人と、一緒に働きたいと思えるか」「社風が自分と合うか」ということです。
仕事内容は、入社して数年で異動になる可能性もあります。給与や勤務地も、業績や人事異動で変わってしまう可能性があります。しかし社風は、よほどのことがない限り変わりません。
仕事は一人ではできず、人と協力して行うからこそ、一緒に働く人次第で同じ仕事が「やりがいのある仕事」にも、「辛い仕事」にもなります。応募活動を通じて、ぜひこのような視点で会社の「人」や「社風」をチェックしてみてください。
「いいな」と思える採用担当の会社との出会いを大切に
応募者への対応は、会社によって様々です。誠実な対応ばかりとは限らず、事務的な対応や、高圧的な態度、妙に馴れ馴れしい、そもそも目を見て話さないなど、好ましくないこともあるでしょう。だからこそ、「対応がいいな」「何となく合うな」と感じた採用担当者がいる会社との出会いは、ぜひ大切にしてください。
採用担当は、「会社の顔」です。そのため通常は、現場でエース級の実績を出した経験のある社員や、対人コミュニケーション能力の高い社員が担当しています。その意味で採用担当者は、社風やその会社で評価される人材の体現者です。
その担当者に共感が持てる、何となく自分に合うという場合には、あなたがその会社の社風に共感できる、マッチする可能性が高いと言えます。面接官や他の社員にも同様の印象を持ったら、その可能性はさらに高くなるでしょう。その際には、入社後にイキイキと仕事ができる可能性は高く、多少希望条件と離れていても、前向きに入社を検討する価値があります。
反対に採用担当に共感が持てない場合は、残念ながら社内の雰囲気も、あなたに合わない可能性が高いと言えます。この場合は、「条件には合うから」「給与は上がるから」と入社を決めても、何らかの理由でその状況が変わってしまったら、「こんなはずじゃなかった」とすぐに転職したくなってしまうかもしれません。
「若手が多い」「若いうちから仕事を任せる」のイメージと現実
社員は若手が多くて、活気がある。若いうちから任されるから、成長できる。
これは本当に素晴らしいことですが、その状況が自分のイメージする状況と合っているかを確認する必要があります。
例えば、「社員は若手が多い」というと、20~30代の社員が多い会社が当てはまります。その会社の「40~50代が少ない理由」を考えてみましょう。創立からまだ十分な年数が経っていなくて社歴の長い社員でも若いのか、それとも人が次々に辞めてしまう「長く勤められない会社」だから若いのか。そこには大きな違いがあります。
また、「若いうちから仕事を任せる」ケースでも、若手育成のために行っているのか、若い人しかいないから必然的にそうなのか、極端な実力主義だからなのかで、社風は大きく異なります。
若手育成のためなら、フォローや指導がある分、口うるさい上司に当たるかもしれません。若い人しかいないのなら、自由にできる反面、周囲に相談できる人がいるかどうかが不安材料です。極端な実力主義も年齢に関係なく裁量が与えられる良さがありますが、結果を出し続けなければならないプレッシャーもあります。
メリットデメリットはいずれもあります。その会社の状況と、自分が望む状況が合っているかどうか、きちんと確認しましょう。
採用条件の提示など内定後の対応は誠実ですか?
最後に重要なのが、内定後の対応です。後々のトラブルを防ぐためにも、採用条件は書面で提示してもらうのが望ましいです。労働条件の明示は会社の義務であると、労働基準法(労働基準法第15条)でも定められています。
転職エージェントを通じた場合はこの点問題はないですが、個人で転職活動をしていた場合にも、内定承諾前に「採用条件を書面で確認できますか?」と遠慮せずに伝えましょう。
このとき万が一、面倒だという雰囲気を感じたり、「入社してから」「そのうち」等うやむやにされたり、とにかく意思決定や入社を急かされたり…という場合には、注意が必要です。このような事務手続きの対応がきちんとできない人事には、入社後に何かあった時に頼ることができません。
あなたが内定を承諾する前なら、断ることもできます。「行きたい会社だし、どうせ入社するからいいや」と思わずに、最後の対応までチェックしましょう。
「一緒に働きたいと思えるか」も転職には大切な判断軸
「転職してよかった」と思う人に話を伺うと、会社を選んだ理由に、「やりたい仕事だった」等に加えて、「この会社の人と一緒に働きたいと思った」という答えが必ず入っています。
一方、転職しても1年前後で会社を辞めてしまった人に、その時の会社選びの基準を伺うと、「会社は仕事をする場所だから」と割り切って、仕事内容や給与などの条件面を重視し、「一緒に働く人」に対する優先順位は低いか、そもそも無かったという傾向があります。
会社を「仕事をする場所」として割り切るのも1つの考え方ですが、仕事や給与などの条件は入社してから時間が経てば状況が変わって、変わる可能性があります。その度に「思っていたのと違った」と転職していては、あなたのキャリアにマイナスです。
しかし万が一、何らかの事情で希望していた条件と変わったとしても、その会社の「人」や「社風」に共感できるものがあれば、「もう少し頑張ってみよう」と思えたり、新たなやりがいを見つけたりすることができます。
新卒ではないので「人」や「社風」だけで選ぶわけにはいきませんが、その会社で働く人や、その会社の社風に共感できるかどうかは、働き続けるモチベーションや仕事の成果にも大きく影響します。会社を選ぶ時には、ぜひ考慮してみてください。