2015年7月に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査の概況」によると、共働き世帯数は1077万世帯(2014年)と過去最高となりました。一方、「夫が働き、妻は専業主婦」という世帯は720万世帯と調査開始以来、一貫して減少を続けています。

共働きが当たり前になり、夫婦での家事分担も一般的になりました。しかし、「俺だって十分やっている。」という夫の自己評価と妻からの評価には差があり、それが夫婦関係のストレスになっていることもよくあります。

円満な夫婦関係を築くために、夫として家事の関わり方を少しだけ見直してみませんか。

やっているつもりだけだった!?夫の家事負担は全体の15%

image001

(出典:国立社会保障・人口問題研究所 「2013年社会保障・人口問題基本調査 第5回全国家庭動向調査」より作成)

「俺は十分家事をしている。」と思っても、それが十分でない可能性は大いにあります。家事分担が当たり前になってきたとはいえ、共働き世帯でも妻のほうが圧倒的に家事をする分量が多いのです。

それは体感値ではなく、国立社会保障・人口問題研究所の調査でも明らかになっています。家庭の家事を「100」とすると、夫が分担している家事の割合は14.9%。総務省の調査では、一番下の子どもが3歳未満の場合、妻が家事(育児を除く)に携わる時間の3時間4分に対して、夫は30分(総務省「社会生活基本調査」 2008年)という結果が出ています。

「自分のほうが、労働時間が長いから。」「妻はパートだから、その分家事をして当り前。」「仕事の付き合いもあるから、平日は家事なんて無理。」と思っていませんか。

もちろん夫のそんな思いに、多くの妻が理解を示しています。しかし、「家事をやっているつもりでも、生活に必要な家事の量の約7分の1の量でしかない」ということは自覚しておきましょう。

妻は仕事をしながら、残り7分の6の家事をこなしています。パートなどの非正規雇用でも、仕事で疲れるのは同じです。できる範囲でもう少し夫が家事の量を増やしてくれたら、妻は夫にとても感謝するでしょう。

では夫として、どのように家事に関わったらよいのか。「妻からの家事ハラスメント」も話題になるなか、お互いの関係が悪くならない家事の関わり方の秘訣がこちらです。

1:妻から「ありがとう」を求めない。「上から目線」でも気にしない

image002

「せっかく家事を手伝ったのに、妻はお礼も何も言わない。」
「ちゃんときれいになってない、私がやり直すなど文句ばかり言われる。」
「だから、もう家事なんてやりたくない。」

家事をした後の妻の対応に、不満を持つ男性も多いようです。しかし、共働き夫婦の場合は、家事は夫が「手伝う」ものではなく、「生活するために行うもの」です。「ありがとう」と感謝を期待して行うものではありません。

あなたは妻の家事に対して、「ありがとう」とお礼を伝えたことがありますか。「当り前だから」と何も言わないのではないでしょうか。家事が当たり前なら、当たり前のことをしたあなたに妻が何も声をかけなくても無理はありません。

家事に対して、「妻が上から目線だからストレスになる。」という方も多いようですが、妻が家事において上から目線になるのは多少仕方がありません。前述の調査では、夫と妻の家事の比率は1:6です。妻は夫の6倍の量の家事をこなしています。

これを職場に置き換えてみましょう。自分の6倍の仕事量をこなす人から指導があったら、「上から目線で話されてストレスがたまる」と思いますか。職場だったら、「仕方ない。」「それも当然か。」と思えませんか。

職場と夫婦はもちろん違いますが、このように考えれば、「妻の上から目線」にイライラしてストレスを感じることも緩和されると思います。妻の「上から目線」は気にせず、指導が入ったら職場の先輩や上司からの指導だと思って素直に聞いて、実践してみてください。

2:ゴミ捨て、掃除など取り掛かりやすい家事からスタート

image003

ある民間の調査では、夫が担当する家事の第1位は「ゴミ捨て」でした。ゴミ捨ては通勤途中にでき、最も担当しやすい家事でもあります。「ゴミ捨て」をしていない場合は、まずは「ゴミ捨て」から始めて、「周辺の家事」へとできることを広げてみましょう。

ゴミ捨ての「周辺の家事」とは、資源ゴミの分別、資源ゴミを出す他、お風呂の掃除、トイレ掃除、部屋に掃除機をかけるなどで、このような掃除全般は家事が苦手な夫でも手伝い分野といえます。

なぜなら、毎日行う必要がなく、平日時間に余裕のある時や休日にまとめて対応できるからです。また、お風呂やトイレの掃除は、掃除をする場所が狭く、工程が限られていますし、部屋の掃除は掃除機が活躍してくれます。

「掃除は自分が」と完全に分担をしてしまうと負担になりますので、平日余裕がある時や、休日に「俺がやろうか?」と声をかけて家事をする時間を増やしてみましょう。

3:洗濯物、食器洗い、料理・・・こだわりが強い分野は妻の意見を聞いて

image004

一方家事のなかでも、洗濯物を干す・畳む、食器を洗う、料理を作るなど毎日行われる家事は、頻度が高い分、個人のこだわりが強く表れる分野です。

これらの家事を自分流にこなしてしまうと、「そうじゃなくて!」といつも家事をしている妻からチェックが入る可能性は非常に高いでしょう。こだわりのない妻であれば特に気にする必要はありませんが、そうでない場合には、洗濯物、食器洗い、料理を行う場合には、妻の意見を聞いてください。

「それをしなければならない意味がわからない。」「こうやったほうがいいのに。」と思うこともあるかもしれません。しかしここで意見すると、日常的に家事の分担が少ない夫から意見された妻が腹を立てて、険悪な展開になってしまうかもしれません。

この分野で夫の意見を聞いてもらえるのは、夫の家事能力が明らかに妻よりも高い場合か、夫が家事をする時間が妻と同等かそれ以上の場合、あるいは妻が素直にそれを受け止められる性格の場合です。該当しない場合には、妻の意見を尊重し受け止めましょう。

4:妻の「手伝って」は快く受け止めましょう

image005

時には妻から「○○を手伝って。」と頼まれることもあるでしょう。妻が夫にあえて家事を頼む時は、よほど疲れていて大変な時か、忙しくてどうしても手が回らない時か、自分だけ忙しく家事をしているのに暇そうにしている夫が許せない時のいずれかです。

いずれの事態にしても、「○○を手伝って。」は緊急サインです。それがどんなに優しい言い方であっても、または刺々しくてイラッとするような言い方であっても、決して無視したりせず、手伝ってあげてください。

「○○を手伝って。」にどう反応し、対応したかで、妻の夫に対する心象は大きく変わります。「わかった。」と嫌な顔せずに対応してくれた夫には、信頼と感謝の気持ちが積み重なっていくはずです。

「もう少しでも」と感謝の気持ちを忘れずに

正社員同士で収入も同レベル、または妻の収入が高い場合でも、1:1の家事分担を目指すことは現実的ではありませんし、おそらく多くの女性もそこまでは望んでいません。

しかし、共働き世帯の夫と妻の家事分担が1:6という現実に、「もう少し夫にも家事をしてほしい」と思っている妻が多いのも事実です。

専業主婦でない以上、妻がより多くの家事をこなして当然と思わず、「できることはもう少しでも」という気持ちと、「仕事で自分と同じように疲れているのに、家事をしてくれる妻への感謝」をぜひ忘れないようにしてください。