結婚で地方に引越ししたり、夫の転勤について行ったり。女性の場合、パートナーの都合で地方に転職せざるをえないこともあります。
都市部でバリバリ働いて、仕事にもやりがいを感じていたのに、地方に行っても同じように働くことができるのか?と不安に思う方も多いでしょう。
その不安はおよそ当たってしまいますが、地方に女性が転職する現実を知っておけば心の準備もできますし、対策も考えられます。地方への転職で、女性が直面する現実を知っておきましょう。
1:仕事も年収も思っている以上に選べない
仕事には、都市部に集中している業界や職種があります。たとえば、インターネット関連サービスや人材サービス、マスコミ関連やエンターテイメント関連など、一部の業界は都市部に企業が集中しています。また、「事業企画」や「マーケティング」「コンサルタント」などの職種は、都市部の企業や、都市部の本社にしかありません。
また、営業職も多種多様な製品やサービスの企業があるわけでなく、ライフライン関連企業の求人が主流となり、女性の志向とは合わない傾向があります。
このように地方では、都市部ほど業種や職種のバリエーションがありません。今までの経験を生かし、同じような仕事をしたいと思っても地方では極めて難しいのが現実です。県庁所在地であれば多少状況は違いますが、数万人規模の地方都市であれば、都市部で働いていたときと同様の求人を見つけられる可能性は非常に低いでしょう。
仕事内容と同様に、「東京で働いていた時と、同じくらい報酬をもらいたい」と思っていたら、仕事はみつかりません。
東京とそれ以外の道府県の年収格差は、想像以上に大きいものがあります。全国の都道府県で平均年収が最も高い東京都(平均年収377.4万)から、隣の埼玉県(平均年収294.7万)に移っただけでも約80万円、20%もダウンします(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」平成26年)。
仕事も年収も、「今まで」に固執していたら、それらが叶えられない現実に苦しくなってしまいます。自分で自分を苦しめてしまわないよう、現実を受け入れ、柔軟な考えを持てるようにしておきましょう。
2:産休や育休を活用した女性社員例がないことも・・・
大企業の支社や支店、地元の上場企業なら話は別ですが、地元の中小企業の場合、産休や育休、時短勤務などの制度がない、あるいは制度があっても利用者がいないというケースもあります。
面接などでそれを確認すると、「女性が長く働けない会社なのでは・・・。」と引いてしまうかもしれません。
ここでも見方を変えてみましょう。それでも女性を中途採用しようとしている企業は、「これから制度を作っていきたい」「女性が長く働ける環境を作っていきたい」と状況の改善を考えていることも多いのです。
「前例がないから…。」と引いてしまうのではなく、「女性が子育てしながら働ける環境を、作っていきたいと考えているか。」と率直に聞いてみましょう。その問いかけに対する答え方の熱意や誠実さから判断しても、遅くはありません。
3:派遣社員や契約社員、パートで事務になる女性も多い
地方都市の場合、「結婚した女性は、家庭を守るのが第一」という保守的な考えも根強く残っています。その考えは、両親世代だけでなく若い世代の男女にも浸透しています。
そのため女性は、結婚したら家庭を優先できるように、パートや契約社員、派遣社員など時間の融通がつきやすい仕事を選ぶ傾向があります。都市部で働いていた時は何も言われなかったのに、地方に戻った途端、パートナーの両親からペースを落とした働き方を望まれたり、薦められたりすることも少なくありません。
こうした背景から結婚・出産後も正社員として仕事を続けている女性は、「地元の上場企業や市町村役所(教職含む)、病院(看護師としての勤務)に新卒で入社した人」がほとんどです。
都市部に比べて、「そもそも正社員として転職する既婚女性が少ない」という点で、様々な面でやりにくさを感じることがあると思っておきましょう。
4:「○○がやりたい」と周囲に伝えることで縁が生まれる可能性も
ここまでの現実を見ると、「働きにくそう…。」と思ってしまうかもしれませんが、やりようはあります。
地方都市といっても様々なサービスや企業が生まれ、既存企業でも市場の変化に対応する新たな仕事のニーズが生まれています。
「自分には○○の経験があり、○○の仕事がやりたい。」と様々な場に行き、周囲に言い続けていれば、人から人へそれが伝わっていき、ふとしたきっかけでやりたいことができるご縁が生まれるかもしれません。また、「こういうことを一緒にやろう。」とどこからか声がかかる可能性もあります。年収さえ気にしなえれば、NPO法人であなたのキャリアが活かせることもあります。
長期戦になるかもしれませんが、このような方法でやりたい仕事を手に入れる方法があることも知っておきましょう。
今までとは違う「ものさし」で仕事をみてみよう
地方都市と都市部では求人状況が大きく異なります。そのため、今までの価値観や「ものさし」で求人を見てしまうと、「やりたいことがない」「年収が低すぎる」と悶々としてしまいます。
そうならないためにも、地方に転職すると決まったら、今までとは違う価値観や「ものさし」で求人や企業をみるようにしましょう。
例えば、「興味のない商品やサービスはいや。」と思っていても、その先入観を取り払ってその商品やサービスをみてみると、意外な競合優位性や魅力がある可能性もあります。
年収は大きく下がるけれど、面接に行ってみたらとても社風がよく働きやすい環境だったということもあります。
さらに一見異なる職種でも、今まで身に付けてきた能力が活かせることもあります。たとえば「事務」という募集であっても、実はその企業でインターネット通販を強化したいと思っていて、実際にはインターネット企画に近い仕事ができるということもあります。
「やりたいことがない」「年収が低いからイヤ」と心を閉ざさなければ、都市部で働いていた時には気づかなかった企業の見方や、地方ならではの働き方の魅力を見つけることもできますよ。