大企業を辞めるのは、なかなか勇気が必要です。
安定した環境や給与、充実した福利厚生、社名を言えば一目置かれる優越感、予算の大きなプロジェクトなど、大企業でしか得られないメリットは数多くあります。
しかし一方で、業務の自由度が低い、顧客までのプロセスが遠すぎて誰の何の役に立っているのか実感しにくい、社内での限界が見えてきた…等、「それでも大企業を辞めたい」と思うこともあるでしょう。
大企業という環境はあまりにも恵まれているからこそ、辞めて転職した時に「後悔する人としない人」が大きく分かれます。
大企業を辞めて転職で後悔するのはどんな人なのか、辞める決断をする前にぜひ知っておきましょう。
あまりにも規模や環境の違う転職先を選ぶ人
「大企業のこういうところが嫌だったから、今度は違う環境で働きたい」
「大企業とは違う可能性を試したい」
そう考え、今までとは規模や環境の違う転職先を選ぶ人も少なくありません。それはチャレンジとしてはとてもいいことなのですが、そのギャップがあまりにも大きいと後悔する可能性もまた大きくなります。
大企業から中小企業やベンチャー企業の管理職へ、というのがこのケースで、初めての転職であれば、その環境の変化はどんなに想像しても「想像以上」になるという覚悟が必要なくらいなものです。
信用力、ブランド力、ネットワーク、人材の層、社内ルールやツールの整備度合など、働く環境は全く違いますし、大企業の「看板力」と中小企業やベンチャー企業の「看板力」も圧倒的に違います。極端に言えば、同じ取引先に行ったとしても、大げさでなしに手のひら返しをされるくらいの違いがあるのです。
また、売上規模や従業員人数は大企業でも、ここ10数年で急成長した「大企業」と以前からある「大企業」では風土から仕事の進め方のスピード感などが全く違いますから、これも同じ「大企業への転職」と思っていると、「あれ?」ということになります。
それくらいの激しい業務環境の変化のなかで、転職先の社風が肌に合えばまだ救われますが、その点をきちんと事前リサーチをして納得した上での転職でなければ、「思っていたのと違う…」ということになりかねません。
新しい環境は、知らないだけに良さそうに見えることも多いのですが、今在籍している大企業とあまりにも環境や規模が違う場合には、転職先の同業界に勤める友人知人や、客観的な意見を伝えてくれるプロのキャリアコンサルタントに相談し、決断の前にそのメリットデメリットを冷静に見つめ直す必要があるでしょう。
大企業のもたらすメリットに便利さを感じている人
大企業に勤めていると、人から一目置かれることが多くなります。顧客先でも、セミナーなどのちょっとした名刺交換の場でも、プライベートの場でも、
「〇〇にお勤めなんですね」
と「すごいですね」という気持ちが込められた一言をかけられることもあるでしょうし、仕事でも何でも、勤めている企業の信用力とブランド力は「何かと話が進みやすい」という目に見えない大きなメリットをもたらします。
結婚適齢期であれば、勤める企業によって「パートナーの探しやすさ」も随分変わってくるでしょう。
このように、一目置かれる目に見えないメリットを便利だと実感する場面が多いならば、大企業を辞めて転職するのは冷静に考え直した方がよさそうです。
次の転職先が、今の企業と同じくらい「一目置かれる」企業であれば問題ありませんが、そうでなければ、勤めている企業の信用力とブランド力がもたらすメリットが享受できなくなった時、「やっぱり辞めなければよかったな…」と思ってしまうかもしれません。
家族が今の大企業に勤めていることを誇りに思っている人
また、大企業で働いているというのは、自分自身の問題だけでなく、家族の「誇り」になっていることも少なくありません。
両親や配偶者が、自分の身内が〇〇企業で働いていることが自信になっている場合、辞めるといえばそれはもう全力で引き留められるでしょうし、黙って辞めたとなれば全力で非難されるでしょう。
全力で引き留めてくれるのならば、わかりやすくてまだいいのですが、口では「好きにしたらいいんじゃない?」といってくれながらも、心のどこかでは「〇〇企業勤めている」ということが拠り所になっている場合があるので、家族の本音がどこにあるのか、きちんとコミュニケーションをとることが必要です。
なぜならもし本音では「〇〇企業に勤めていてほしい」と思っていた場合は、「あなたの思うようにしたらいい」と背中を押してくれながらも、転職先で何かあったら
「やっぱり辞めなかったほうがよかったんじゃないの?」
「実は辞めない方がいいんじゃないかと思っていたのよね」
という一言で、あなたの中にある「後悔の念」を一気に盛り上げてくれる可能性が非常に高いからです。
今の企業の福利厚生や各種制度がものすごく充実している人
そして最後に。大企業ならではの特権ともいえる「福利厚生」や「各種制度」にも、目を向けましょう。
基本的に日本の大企業の福利厚生は、中小企業やベンチャー企業、大手企業の系列会社や外資系企業など、他の企業では考えられないほど恵まれていることが非常によくあります。また、勤務制度や研修制度なども、極めて充実していることがほとんどです。
今当たり前だと思っている福利厚生や各種制度は、おそらく転職したら高い確率で当たり前ではなくなります。
そのメリットは、今まで当たり前だと思っていたからこそ本当の意味で実感しにくく、まさに「失って初めてその重要さがわかるもの」といえます。
転職先に今と同様の福利厚生や制度があるという前提で考えてはいけません。「仕事のやりがいやキャリアアップと引き換えになるなら、たとえ最低限の福利厚生になってもいい」と思えるくらいの意欲がないうちは、転職は見合わせたほうが無難でしょう。
いろいろ紹介してきましたが、このような条件に当てはまるならば、「仕事のマンネリからの脱出」「新しい環境(チャレンジ)への興味」といった面ではなく、せっかく手にしている他人も羨むような環境をわざわざ手放すことはないのでは?という面に目を向け、今の環境でやりがいを見つけることを真剣に考えるほうが、より後悔の少ない仕事人生を送れるのではないかということに真剣に向き合ってみましょう。
仕事だけが人生の全てではないように、仕事のやりがいだけがすべてではないのです。
しかしもちろん、大企業を辞めて転職しても「後悔しない人」ももちろんいます。
それはどんな人なのか。
これはこちらのコラムで紹介させていただいています。