妊娠して新たな命を授かることはとても嬉しい反面、
働く女性にとっては妊娠期間と仕事の両立をどうこなすかという
「新たな課題」へのチャレンジの始まりでもあります。
妊娠による心身の影響は大きく、精神的に不安定になることもあれば、
妊娠初期は悪阻や切迫流産などの体調不良の心配もあります。
そんな状況で妊娠と仕事の両立をこなしていくためにはどうしたらいいのか、
3つの秘訣を紹介します。
1:職場への妊娠の報告は早めに
妊娠して最初に悩むのが、「妊娠の報告を職場にいつのタイミングですればいいのか。」です。これは妊娠後の体調や仕事内容にもよりますが、いずれにしてもできるだけ早めに報告するとよいでしょう。
一般的に、どれくらいのタイミングで報告しているのかは、日本労働組合総連合会が2015年2月に発表した「働く女性の妊娠に関する調査」から知ることができます。この調査によると、職場への妊娠の報告のタイミングで最も多かったのが、「第8週」で14.2%。
ただし、妊娠が判明した直後の「第4週」で報告する人も8.7%と多く、「第8週までに報告する人」の割合は45.2%となり、およそ半数の女性が妊娠2ヶ月までの間に職場に報告していることがわかります。
妊娠初期には、悪阻や切迫流産などで仕事を休まなければならないケースも発生します。仕事を休むのは仕方ありませんが、その分の業務を職場で分担する必要が生じきます。そのためにも、少なくとも直属の上司にはなるべく早めに伝えておいたほうが、体調不良による遅刻や欠席に対応してもらいやすくなります。
妊娠後に悪阻もひどくなく、切迫流産の可能性もなく、仕事も内勤で負担が少なく、体調に問題がないため、「安定期に入ってから…。」と思う人も少なくありません。実際に前述の調査では、15.1%の女性が安定期に入った16週以降に報告をしています。
これには、妊娠を報告することで周囲から気遣いされたくない、やりにくくなりたくないという気持ちもあるかもしれません。
しかし、妊娠すれば必ず出産で退職、あるいは育児休職を取る日がやってきます。その時のための人員の調整は、すぐにできるとは限りません。妊娠がわかったら早めに直属の上司には報告しておいたほうが、育児休職に向けた準備がしやすくなります。
責任ある社会人として早めに相談することで、仕事への影響を配慮する姿勢が伝わります。まずは職場に配慮することで、その後の協力が得られやすくなるのです。
2:「赤ちゃんと私が第一!」だからこそ妊婦の権利を主張しすぎない
最近ではマタニティハラスメントばかりではなく、妊婦がその権利を最大限に利用して、周囲に迷惑をかけて傷つけてしまう「逆マタハラ」も問題になっています。
・「妊娠」を理由に仕事をしなくなる(悪阻を理由に、遅刻早退欠勤が増えるなど)。
・イライラして周囲の人に当たる。
・「妊娠しているのだから、フォローしてもらえて当り前。」という態度になる。
などが一般的に「逆マタハラ」と言われる行動です。「妊婦様」とも揶揄されていますが、このような行動をとってしまうと、周囲の理解と協力が得られず、妊娠と仕事の両立がしにくくなってしまったり、本物のマタニティハラスメントを引き起こしてしまったりします。
あなたは気にしなくても、「以前妊娠した女性は大変だった。」という非常に苦い経験が職場に残り、次に妊娠する女性へのマタニティハラスメントの原因となることもあります。
「赤ちゃんと私が第一!」は大前提です。しかし妊婦の権利を主張し、周囲に自分への配慮を強制してしまうと、周囲から得られるのは「配慮」や「理解」ではなくて「反感」になってしまいます。
悪阻で休んだり遅刻したりすることや、妊娠の体調不良がいけないわけではありません。しかし、あなたが休んでいる分、あなたが本来やらなければならない業務を、遅くまで残業して手伝ってくれている同僚や上司が必ずいます。
この時に、「ありがとうございます。」「すみません。」という周囲への配慮があれば、周囲も受け止め方が変わります。
人間関係は鏡と同じなので、あなたが周囲に配慮を示せば、周囲からも配慮が返ってきて、妊娠と仕事が両立しやすくなる可能性が高くなります。
一方で、「妊婦の権利と都合」を主張すれば、周囲の同僚や上司もそれぞれの権利と都合を主張します。それが職場での冷たい対応や、仕事のやりにくさ、またはマタニティハラスメントになります。
「赤ちゃんと私が第一!」だからこそ、配慮をしてもらうために周囲への配慮を忘れないようにしましょう。
3:他人から何かを言われても気にしない
残念ながら現状では、妊娠しながら仕事を続けることをポジティブに受け入れてくれる職場ばかりではありません。
妊娠して仕事を続けていると、いろんなことを言われることもあるでしょう。
その中には、「まだ仕事を続けているの?休めばいいのに。」のようなあからさまに心無い言葉もあるかもしれません。
あるいは、「今が頑張り時だね!」「辛いなら少し休んでいてもいいよ。」という何気ない言葉に対して、「出産したら辞めろっていうこと?」「それってもう来なくてもいいってこと?」と、つい深読みをしてしまうこともあるかもしれません。
妊娠で精神的に不安定になることもあるので、なかなか難しいかもしれませんが、この時期に他人から何かを言われてもあまり気にしないようにしましょう。
世の中にはいろんな意見の人がいます。その人たちの意見や見方を変えるのは、大変です。真面目に働いているのであれば、妊娠しながら働くことにネガティブな人の意見を気にすることはありません。
もちろん、度が過ぎるときには我慢しすぎずに人事や外部の専門の相談窓口に相談するようにしてください。
※マタニティハラスメントの相談口 「あかるい職場応援団」(厚生委労働省)
http://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/inquiry-counter
妊娠と仕事を両立するためにも、周囲に配慮を
このように、妊娠と仕事を両立する秘訣は「周囲への配慮」と「大らかな気持ち」です。
これは妊娠期間中だけでなく、育休後に復職して育児と仕事を両立する際にも、また地域社会で子育てしていく際にも欠かせないものです。
もしかしたら、「私は妊婦で、配慮されるべき立場なのに、どうして周りのことを気遣わないといけないの?」と納得できない思いもあるかもしれません。ただでさえ、精神的に不安定だったり、ストレスを感じやすくなったりしているのに、「これに加えて周囲への気遣いなんて無理!」と思うかもしれません。
しかし、繰り返しになりますが人間関係は「鏡」のようなものです。心理学でも「返報性の法則」が言われているように、人は何かをしてもらったら相手に何かを返したくなる生き物なのです。
周囲への配慮と感謝の気持ちがあれば、周囲もあなたの体調への配慮を返してくれるでしょう。その配慮は出産後、復職した後の職場での働きやすさにも大きく影響するはずです。
妊娠と仕事を両立するために、そしてその後の育児と仕事を両立させていくために、今のうちから周囲に配慮する習慣を身に付けておきましょう。