夫の転職に反対する「嫁ブロック」。
かつては転職支援業界の業界用語だったこの言葉も、今や昼間のワイドショーで特集されるほど広まってきています。
「嫁ブロック」という言葉の響きからは、「転職したい」という夫の思いや希望を妻が阻止するかのようなイメージがあるかもしれませんが、妻に反対されることで冷静になり、転職先や、転職そのものを見直す機会になるのも事実です。
しかしそうはいっても、話し合いが面倒になって、「もう反対されるのにも疲れたし、このままでいいや」と不本意な意思決定をしてしまうと、納得できなかった思いはなかなか消えるものではありません。
そんな「しこり」が残らないように、転職に反対されないパートナーとの向き合い方を考えてみましょう。
「変化」を避けたいのは仕方がない
そもそも、脳には現状維持をし「変化」を嫌う傾向があります。
変化によって得られる報酬と失う損失を比べたときに、損失を重視してしまうのは非常によくあることであり、「現状維持バイアス」とも言われています。
つまり、「転職」という今までの生活に大きな変化をもたらすような状況を避け、転職を辞めて「現状維持」を求めて夫の行動を「ブロック」してしまうのは、「嫁だから」ではなく、人間の本能的な行動でもあるのです。
だから、たとえ反対されても「ああ、嫁ブロックだ…」「自分はこんなに転職したいと思っているのに、わかってくれない…」と嘆いたり、ましてや自分の未来を制限する「敵」のように思ってしまったりしないでください。妻が、自分への理解がない、自分のやりたい将来を阻もうとする「敵」のように思えてしまったら話合いは決してうまくいきません。
変化を嫌い、現状維持をしたいのは、本人の性格以前に、人間の「脳」の選択として仕方がないこと。そう思ったら、相手の気持ちも少し理解できるような気がしませんか?
「自分を理解してもらおう」ではなく、「相手を理解しよう」と思えば、コミュニケーションは自ずと変わってきます。自分を理解してくれない「敵」ではなく、自分の将来を実現するためにも、真っ先に気持ちを理解しておくべき「パートナー」として、妻と向き合いましょう。
「嫁」の負担を想像する
「脳は変化を嫌う」ということを考えると、転職による「変化」が大きければ大きいほど、反対されるのは無理もありません。
特に、
①年収
②勤務地
③残業時間
④年間休日
⑤福利厚生制度
は、家計や住居、家族と過ごす時間など、家庭生活に大きく関係しますので、妻への影響も大きい部分です。さらに、もし今の勤務先が有名な大手企業であることにステイタスを感じていたり、「ママカースト」のように夫の勤務先が友人関係に大きく影響していたりする場合は、「企業規模や知名度の変化」も精神的に大きな「変化」をもたらすでしょう。
つまり、①~⑤が大きく変化する、あるいは複数変化するような転職は、妻にとっても負担が大きいのです。言い返せば、この①~⑤の「変化」が少なければ少ないほど、「変化」による負担が小さくなり、転職を反対されるリスクも低くなります。
転職先を選ぶ際には、それを考慮しながら選ぶと「嫁ブロック」されにくい転職先が候補にあがるでしょうし、もしくは一緒に「変化」の少ない転職先を選ぶというのも、効果的ではないかと思います。
いきなり「転職」しない
「変化」を嫌うという点では、何の前触れもなく、夫からいきなり「今度転職する」といわれるのも、平穏な日常生活からの大きな「変化」です。この場合、自分の生活に大きな影響を及ぼす突然の「変化」に、反射的に反対してしまうのも無理はありません。
しかし、「転職」という言葉を使う前に、今の会社の状況や、自分の仕事に対する考えを小出しに伝えておくと、妻も日頃の様子やコミュニケーションから「ああ、今の会社だとやりたいことができないんだな」「ストレスがたまっているみたいだな」となんとなく感じられるようになります。
その積み重ねで「今の会社ではハッピーではないようだし、そのうち、転職したいと言い出すかも」と予想できていれば、夫が「転職する」と言い出しても「ああ、やっぱりね」と思うことができ、「転職」は大きな「変化」ではなくなるでしょう。
どのタイミングで、どのように伝えておくのがよいかは、夫婦の関係性によって千差万別ではありますが、大きな「変化」よりも、小さな「変化」を積み重ねたほうが変化に対するストレスも、お互いに小さくてすみます。
転職を成功させたいならば、「転職」が大きな「変化」にならないよう、できるかぎり事前のコミュニケーションを意識して、ソフトランディングを目指しましょう。
転職に対する考えをまとめてから話す
脳は「変化を嫌う」ことから、迷っていたら現状維持を選択する傾向があるため、夫が迷っていたら「現状維持」になるよう「嫁ブロック」するのは、ごく当たり前の行動とも言えます。ですからそれを回避したいならば、できる限り迷いのない状態で話し出せるのがベストです。
しかし、「今の会社を辞めたい」と、「退職への決意」は固まっていても、
・なぜ転職したいのか?
・今の職場では、なぜダメなのか?
・転職して何がやりたいのか?
と「転職に対する考え」がまとまっていないことはよくあります。
この状態で妻に話をしても、おそらく「辞めたいだけなんじゃないの?」と見抜かれてしまうでしょう。そしてそんな状況であれば「転職なんてやめたら?」「もう少しよく考えたら?」と、「変化」を回避するアドバイスを言われるのも無理はありません。
転職への考えがまとまっていないなら、いないなりに、「何が気になっているのか?」「それは何故なのか?」など、自分なりの気になる点を整理しておけば、話し合いはより建設的になります。コミュニケーションを始める前に、ぜひ転職に対する今の自分の考えを整理し、まとめておきましょう。