「上司が尊敬できないようなら、転職したほうがいい」ネットにはそんな論調のコラムもよく見かけます。確かに、尊敬できない上司の下で働くのは精神的にも辛いし、成長もできないし、何もいいことはないように感じます。
転職すれば、もっと尊敬できる上司の下で働けるようになるかもしれません。

しかし、転職した先で尊敬できるような上司にずっと恵まれる…とも限りません。最初はよくても、その上司が異動になった、転職してしまったという可能性はもちろんゼロではないからです。

「尊敬できない上司」に巡り合ってしまうかもしれない不運は、極論をいえば「上司」という存在がいなくなる「社長」になるまでずっとついてまわります。

この「尊敬できない上司問題」とどう向き合ったらいいのか、考えてみましょう。

転職すべきかどうか?を見極めるポイント

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一言で、「尊敬できない上司」といっても、「尊敬できない」にもいろんなタイプがあります。転職は最終手段ではありますが、どんなタイプ、または会社の環境ならば転職も「あり」なのか。その見極めのポイントを確認していきましょう。

➀「実害あり」なら前向きに転職を

転職を前向きに検討したほうがよいのは、すでに「実害が出て」おり、改善する見込みがない(人事部や上司の上司に相談するなど何らかの働きかけをしたけれど変わらない)、もしくは改善する手段がない(本人の性格で今さら変えようがない、人事部や上司の上司などに相談できる社風ではない)ケースです。

たとえば、

・〇〇ハラスメントをする
・飲み会にやたら誘い、行かないと仕事や評価に影響が出る。
・お気に入りいの部下だけをよく査定して、気に入らない部下(自分)の評価が不当に低い。

という場合で、すでにストレスで心身に影響が出ているようならば、「本当にこの会社で働きたいのか?」「この仕事がしたいのか?」ということを見つめ直した方がよいかもしれません。

②「無視できる程度」なら現職でやり過ごす大人の対応も

しかし、尊敬できない上司の行動が、「イライラするけれど、実害はそれほどない」ものであれば、仕事内容や待遇面で懸念点がないのであれば、現在の仕事でやり過ごす道を選んだほうが賢明でしょう。

たとえば、

・仕事ができない。
・仕事のやり方、進め方が自分とは異なる。
・仕事のスタンスが尊敬できない。
・性格的に合わない。
・人として尊敬できない。

など、「見ていて腹が立つ」「一緒にいるとストレス」だけど、自分の評価や業務には影響がなかったり、心身に影響がでるほどでもないような状態であれば、自分の見方、考え方を変えることでやり過ごせるようになることもあります。

たとえば、「こういう人間は、他人(部下)からの評価を下げ、信用を失う」と尊敬できない上司を反面教師にして学ぼうと思えば、状況の捉え方も変わってくるかもしれません。それもまた一つの成長ともいえます。

そして、「尊敬できない人」を反面教師にしてそこから学ぶことができるようになれば、まさに小説「宮本武蔵」の作家として有名な吉川英治の名言「我以外、皆、我が師」のように、どんな環境でも誰からでも学び、それを糧に成長できるようになります

この領域まで到達できれば、今の尊敬できない上司に出会ったのは大きな成長の機会となったと言えるでしょう。

ただし、「誰から学ぶか?」が重要な時期もある

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上司と部下の人間関係の問題は、会社員としての人生にはつきものです。
たとえ転職の面接で魅力的な管理職に出会い、「この企業には、尊敬できる上司がいそうだ」と転職したからとって、実際に上司となる人は別かもしれません。

だから、「上司が尊敬できないからといって、転職するのはありなのか?」という疑問には、

「転職したからといって、逃げられる問題ではない」
「転職した先でも、同じように尊敬できない上司にあたる可能性はある」
「今の職場で、状況を改善するよう努力したり、うまくやり過ごす術を身に付けたりすることも、成長の1つ」

というのが、一般的な答えになります。

しかし、キャリア形成の観点からみれば、特に仕事観が形成され、今後のキャリアのベースとなる20代では「誰から学ぶか?」はとても重要なポイントでもあります。

この時期に、尊敬できるすばらしい上司に巡り合えれば、仕事に対する考え方、取り組み方など多くのものを学び、今の成長を加速させることができるだけでなく、「この先ずっと、どんな環境でも成長し続けられるスタンス、考え方」という一生の財産を身に付けることができます

もし今20代で、会社を見渡して「異動したところで、この人から学びたいと思うような人はいない」というような環境であれば、今後の成長のために環境を変えるのは前向きな選択です。自信を持って、その選択肢を選んでください。

結論は急がず、我慢しすぎず

尊敬できない上司が嫌で転職するのは、ありなのか、なしなのか。
それは上司のタイプから職場の状況、今後の変化の可能性に加え、自分の見方や考え方が変えられるか、今の会社の待遇や仕事内容を手放してもいいのかなど、様々な要因が関係しますから、簡単に答えを出すのは難しいものです。

でも、これは急いで結論を出さなければいけない問題でもありません。

「こんな職場じゃ成長できない」と早急に答えを出すと、また次の職場で同じことが起こってしまいかねません。
「とりあえず我慢すればいい」と我慢しているだけでは現状は変わりませんし、精神的にもあまりよくありません。

「上司が尊敬できないくらいで、転職するなんて…」と「転職」を選択することにネガティブな意識を持ちすぎず、我慢しすぎず、前向きに今の状況に答えを出して、成長の糧にしていきましょう。