就職活動に面接の練習は欠かせません。しかし残念ながら、この面接の練習の方向性を誤ってしまっている学生も非常に多いのが現状です。実際に面接でも、
「一生懸命、練習したのは伝わる。でもなんだか、言いたいことがわからないし、人柄もよくわからない。」
と不採用になってしまうケースも多いのです。
面接は、ただ練習すればよいというわけではありません。今回は、多くの学生がやってしまいがちな誤りと、その対処法を紹介します。
1:志望動機や自己PRを暗記する
面接の練習で、最も多いのが志望動機や自己PRをきちんと言えるように、一言一句忘れないよう丸暗記してしまうことです。
特に面接では「1分以内で」等、制限時間を付けられることもあるので、時間内にきちんと言えるように、何度も原稿を推敲し、「1分間スピーチ」のように丸暗記する練習を積み重ねてしまいます。
実はこれが大きな誤りです。志望動機や自己PRは、ポイントやストーリーラインをしっかり覚えておくことが重要で、文章を一言一句丸暗記する必要はありません。
志望動機や自己PRを丸暗記してしまうと、面接の場でもその内容を「間違えずに言うこと」に意識が集中してしまいます。その結果、あなたの志望動機や自己PRは、抑揚のないスピーチや、どこか作り物のようなスピーチになってしまいます。
これでは面接官には、あなたの本当の個性や意欲が伝わりません。面接官も「一生懸命練習して暗記してきたな。」と努力は認めますが、本当の個性や意欲がわからないので、多くの場合不採用となります。
一方、ポイントやストーリーラインだけ覚えて、後はその場で考えて話すようにすれば、あなたの熱意や感情、個性が伝わりやすくなります。
ポイントやストーリーラインがずれていなければ、毎回多少の表現の違いなどはあっていいのです。面接の志望動機や自己PRの練習では、文章を丸暗記するのをやめましょう。
2:他人にチェックを頼まない
次によくやってしまいがちなのが、自分だけでチェックをして安心してしまうことです。今は様々なツールがあるので、面接の練習を録画・録音して、自分でチェックすることも容易になりました。
ツールを活用して、自分自身を客観視するのはとても重要です。録画・録音した自分の動作や志望動機などをチェックすることでも新たな気づきもあるでしょう。
しかし、面接はあくまでも「他人から見たあなたがどうか」が判断される場です。面接の内容は、自分だけではなくて可能な限り他人にもチェックしてもらい、アドバイスをもらいましょう。
今は大学のキャリアセンターや就職相談室でも模擬面接が受けられますし、民間のキャリアコンサルティングサービスも利用できます。友人同士でお互いに模擬面接をやってみるのもいいですし、家族に面接官役をお願いする方法もあります。
身だしなみや動作、言葉遣い、アイコンタクトなどの所作から、志望動機や自己PRの内容がわかりやすかったか、意欲が伝わるか等、自分では大丈夫だと思っていても、他人から見たら全く違う印象ということもよくあります。
他人からの率直なアドバイスで、面接は劇的によくなります。練習でもしっかり他人にチェックしてもらいましょう。
ただし、いくら他人からのチェックとアドバイスが大切とはいえ、応募する企業の面接官にそれを求めるのはおすすめできません。
面接の「最後に質問はありますか?」という問いに、「今日の面接の良かった点と悪かった点を、教えていただけますでしょうか?」と聞いてしまう学生もいますが、これはやめましょう。
この「最後の質問」は、応募意欲と関心の高さをアピールする機会であって、あなたの面接を改善する機会ではありません。「向上心のアピール」と思っている学生もいるようですが、質問が型にはまりすぎているのでアピールとしてもあまり適切ではありません。
もちろん面接官は答えてくれますが、それであなたの評価が上がることは「ほぼない」と心得ておきましょう。ただし、「実践練習」と割り切っている企業の面接でなら、ありかもしれません。
3:面接の質問の想定問答集を作って安心してしまう
面接では、面接官から様々な質問が聞かれます。その場で動揺しないように、面接の質問の想定問答集を準備する学生も多いでしょう。
就職活動の関連本や就職活動サイトには、面接の質問例なども多く紹介されていますので、いくつもの質問に答えを用意して、それを覚えて安心してしまいがちですが、実はこれも危険です。
このプロセスで大切なのは、その質問に対する答えの傾向から、「自分はどういう人間か?」という自分の価値観や判断軸の傾向を見出すこと。1つ1つの質問に対する答えを完璧に覚えることではありません。
様々な角度からの質問の答えを考えて、自分の価値観や判断軸がしっかり見えてくれば、あとは面接でどんな質問がきても対応できます。
企業の面接官によっては、学生が用意できないような変化球の質問を投げて、学生の本音や個性を確認したいと思っている人も少なくありません。多くの質問に答える練習をする中で自分の価値観と判断軸を見出していれば、どんな質問にも動揺することなく、答えられるようになるでしょう。
多くの想定質問をこなすことも、もちろん無駄にはなりません。答えを考えるために思い出した経験やエピソードは、他の質問に答える時にも活用できるからです。
そんな時に、想定問答集を心の支えにしていると、「そんな質問、今までなかった。」と動揺してしまいます。そうならないためにも、面接の質問対策は、想定問答集の「答え」を覚えるのではなく、「答え」の傾向から導かれる自分の価値観や判断軸を整理しておくようにしましょう。
4:「実践練習」が少ない
最後に見落としがちなのが、「実践練習」の場数を踏まずに第一志望群の企業を受けてしまうことです。
「実践練習」は模擬面接などではなく、実際に企業に応募して、本番の面接の場数を重ねることです。エントリーシートを書いて応募する、面接に行くという手順が必要なため、「興味がない企業に応募するのは面倒くさい。」「エントリーシートに何を書いていいかわからない。」「志望動機に何を言っていいのかわからない。」という思いもあるでしょう。
しかし、面接は場数を重ねるほど、うまくなるし度胸もつきます。面接での立ち居振る舞い、話し方も実践を積んで磨かれます。さらに面接で、他の学生の対応をみて、見習うべき点や見直すべき点が見えてくることもあります。
第一志望の企業の面接でベストなパフォーマンスをするためにも、ぜひ多くの実践練習も積み重ねましょう。
面接で「自分らしさ」が伝えられるように
そもそも面接の練習をするのは、面接で「上手く」伝えられるようにするためにではありません。限られた時間と、限られた質問の応答で「自分らしさ」を伝えられるようにするためです。
「上手く伝えよう。」「間違えずに伝えよう。」と意識するあまり、一番大切な「自分らしさ」が伝わらなくなってしまうことはよくあります。
誤った方向性で練習してしまっても、なかなかいい結果は得られません。目的と方向性を間違えず、自分らしさが伝わるような面接の練習を積み重ねていきましょう。