就職活動の準備で、避けて通れない自己分析。その手法も多くの書籍や就職情報サイトで紹介されています。あなたは自己分析をして、どんな印象を持ちましたか?

「いわれた通りに自己分析してみたけど、いまいちピンとこない・・・。」
「こんなにたくさんの質問に答えて、そもそも何がわかるのだろう?」
「就活本に書いてある質問には完璧に答えた!自分の強みはもうバッチリだ!」

この思いに共感したなら、自己分析で痛恨のミスをしてしまっているかもしれません。今からでも遅くありません。もう一度自己分析を見直してみましょう。

やればやるほど迷宮入り?自己分析の落とし穴

迷宮入り

自己分析を手助けしてくれる「自己分析シート」には、多くの種類があります。質問内容も様々ですが、どの自己分析シートにも共通するのはおよそ次のような質問です。

□自分の好きなこと、嫌いなことは何か。それはなぜか。
□得意なこと、不得意なことは何か。それはなぜか
□あなたの強みは?
□自分の性格を表現すると?
□今まで打ち込んだことやその成果は?
□自分史を作って今までの人生を振り返りましょう。

もっと細かい自己分析シートだと、より多くの質問項目があるでしょう。さらに「一度書いた答えに、『なぜ?』と5回問いかけて、答えを深堀りしましょう。」と指示されることもあります。こうした手法はもちろん、間違いではありません。

しかしシートに答えを埋めれば埋めるほど、自分でも何が言いたいのかわからなくなってしまい、自己分析によってかえって思考が迷宮入りしてしまう人もいます。

なぜでしょうか。

それは自己分析の目的が、「タスクとしての自己分析を完了すること」「自己分析シートを埋めること」になってしまっているからです。

目的を間違えると、どんなにたくさんの質問に答えて完璧に自己分析シートを埋めたところで、面接で使える答えは決して見えてきません。これが、就職活動の自己分析でやってしまいがちな痛恨のミスなのです。

そもそも自己分析とは何のためにするのか?

自己分析

ではそもそも自己分析とは、何のためにするのでしょうか。

それは、自分がやりたい仕事を見つけるため。自分の価値観や判断軸を明確にするため。自己PRや志望動機を作るため。

誰もがこのように理解していると思います。もちろんその通りですが、就職活動なので自分だけわかればいいという問題ではありません。正しく言えば、

「自分がやりたい仕事を見つけ、その仕事への熱意と仕事の遂行能力を、『企業が理解しやすい話(=志望動機・自己PR)』になるようまとめること」

が、自己分析の目的なのです。自己分析をすることで、志望動機と自己PRを納得性のある一つの物語として作り上げるとイメージしましょう。

従って、自己分析では

1)自分は何がやりたいのか?それはなぜか?
2)その仕事への動機や熱意を裏付けるエピソードがあるか?
3)その仕事を遂行する能力を裏付けるエピソードがあるか?

の3点を探していきます。このように目的を明確にすることで、思考が迷宮入りしてしまう痛恨のミスから抜け出すことができます。

最初にすべきことはやりたい仕事の軸を見つけること

自己分析は「やりたい仕事」に対する思いを、「その仕事への動機や熱意を裏付けるエピソード」と「その仕事を遂行する能力を裏付けるエピソード」を用いて誰が聞いても納得できる物語にすることが目的です。だから軸となる「やりたい仕事」を見つけるのが、第一歩です。

「自分のやりたい仕事を見つける」という目的意識を持って、今までの人生や自分の性格を振り返ってみましょう。もし自分のやりたい仕事が明確な場合は、まずは第一段階OKです。

「やりたい仕事」といわれてピンとこなければ、「社会でどんなことで役に立ちたいか」や、「どんな職場でどのように働きたいか」でも構いません。この「やりたい仕事」は、「○○になりたい。」という自分中心の思いではなく、「社会に○○の価値(サービス・商品)を提供していきたい。」という「人にどんな価値を提供していきたいか」という視点で考えてください。

答えが思い浮かばない場合は、今までで嬉しかったことや辛かったこと、特に印象に残っている出来事をよく思い出し、志望動機・自己PRの軸となるものを探していきましょう。

「学校の帰り道に花を摘んで帰って、母親にプレゼントして喜んでもらうのが好きだった。小さな花に人を喜ばせる力があることを知った。だから花で人を喜ばせる仕事がしたい。」

等、難しい話でなくてもいいのです。自らの体験から「○○だから、この仕事がやりたい。」というのは最も説得力のある志望動機になります。

企業に伝えることを念頭に必要なエピソードを集めていく

必要なエピソード

「やりたい仕事」や「社会でどんなことで役に立ちたいか」、「どんな職場でどのように働きたいか」という志望動機・自己PRの軸となるものが決まったら、次は「その仕事への動機や熱意を裏付けるエピソード」と「その仕事を遂行する能力を裏付けるエピソード」を探していきます。

同じ事例でも、「やりたい仕事」によって企業から求められる能力が異なるため、フォーカスすべき点が全く変わってきます。自己PRを使い回してはいけない理由はここにあります。

例えば、学生時代にレストランで接客業のアルバイトに打ち込んでいたとしましょう。

もしあなたが接客・サービス業に就職希望なら、レストランで接客する際に心がけたことや、お客様や店長に褒められた台詞等が、「接客・サービス業に向いている・能力がある」ことを裏付けるエピソードになります。

同じレストランのアルバイト経験でも、総合商社に就職希望ならフォーカスすべきエピソードは接客力ではありません。レストランの経営課題をどのように捉え、それを店長や周囲とどのように共有し、解決するためにどんな工夫・努力したかという課題発見・解決力や、常連顧客を作るためにどんな気遣い・努力をしたか等の関係構築力になります。

このフォーカスを間違えてしまうと、自己分析をどんなにしても、どんなによいエピソードがあっても、志望動機と自己PRが一貫しないチグハグなものになってしまいます。

また、どんなに素晴らしいエピソードでも、やりたい仕事への熱意やそれを遂行する能力に関連しなければ、使う必要はありません。関連性の低い長所をアピールしても、あなたがどんな人間かがわかりにくくなるだけで、就職活動ではむしろマイナスです。

一方、やりたい仕事への熱意とそれを遂行する能力に関連するエピソードは、できる限り用意しておきます。説得材料は多いほうがよいと心得ましょう。自分史を作ったほうがいいのは、必要なエピソードを思い出すためでもあります。様々なエピソードから、仕事への熱意と仕事を遂行する能力があることを裏付けていきましょう。

目的を明確にし、より効果的な自己分析をしよう

効果的な自己分析

どんな分析にも言えますが、分析をするときに目的や仮説がなければ有効な結果が得られません。自己分析も同じで、「やりたい仕事」という軸を明確にし、「この軸に合うエピソードや自分の長所を探す」と思ってしなければ、「この結果をどう面接に生かしたらいいのだろう?」ということになってしまいます。

「この仕事がやりたい!」と明確な軸があるに越したことはありませんが、「ある程度の軸」として仮説として設定しておく程度でもよいのです。自己分析する過程で「やはり自分はそうではない。」と気づきがあれば、より自分の核心に近づけたことになります。

一人でやっていると迷宮入りしてしまいがちな人は、信頼できる人と一緒にやってみるのもいいでしょう。目的を明確にした自己分析で、しっかりした物語を作ってください。