「新入社員で入社して間もないけれど、職場の人間関係がどうも合わなくてもう辞めたい」

新入社員研修が終わり、配属されてしばらくすると、職場の人間関係に悩み退職を考える人も出てきます。実際に退職しなくても、「辞めたい」と思いながら、なんとか日々をやり過ごしている人も決して少なくないでしょう。

誰かに相談すれば、「入社したばかりだし、もう少し頑張ってみなよ!」という答えが返ってくるのはわかっているけれど、もう辞めたくて仕方がない。そう思ったら、今の状況をこう整理して考えてみませんか。

新入社員・・・今は「人生でもストレスの多い時期」と受け止める

0730

会社という新たな環境で、新たに仕事を覚え、さらに新たな人間関係も築かなければならい。

「新入社員」というのは、実は良くも悪くも人生の中でもかなりストレスの多い時期なのです。

それを裏付けるのが、全米キャリア開発協会(NCDA)の会長を務めたナンシー・K・シュロスバーグの「シュロスバーグ理論」です。

その理論では、

「人生は(進学、就職、転職、結婚、子供の誕生、離婚、死別など)大きな変化をもたらす転機の連続で、人のキャリアはそれを乗り越えるプロセスを経て形成されていく」

とされています。

これらの転機では、「役割の変化」「人間関係の変化」「日常生活の変化」「考え方の変化」が1つ又は同時に複数起きるとされていますが、この4つの変化が劇的にしかも同時に起きてしまうのが「就職」です。

就職すると、学生から社会人へと「役割」が変わり、学生時代に同世代の友人中心だった環境から、職場で年上の先輩・上司中心の環境へと「人間関係」が変わります。

さらに、起床時間から1日の過ごし方など「日常生活」も劇的に変化。人によっては、就職に伴い引越しをする人もいるでしょう。

そして、学生から社会人へと「考え方や価値観を」変えることが求められます。

このように人生のなかで非常に大きな変化が起きている今、精神的に不安定になったり、ストレスを感じたりするのは、決してあなたが弱いからとか甘いからではありません。

まずは、「今は人生のなかでもそういう時期なんだ」と客観的に今を受け入れてみましょう。

「そもそも学生時代との人間関係は全く違う」と認識する

気軽で楽しかった学生時代の人間関係。

それに比べると、職場の人間関係はストレスフルに感じるかもしれません。しかし、ある程度は仕方ないのが職場の人間関係です。

学生時代は、同性代というだけでなく同じ進学先を選んだという点で比較的価値観も近く、気の合う友人を中心に人間関係が築けます。

一方職場では、同じ企業を選んだとはいえ、その判断基準は人それぞれ。世代も価値観も考え方も違います。学生時代のように気が合い、価値観も合う仲間や話し相手が見つかることもありますが、そんな相手に出会えるとは限りません。

学生時代とは異なり、職場の人間関係には「仕事を円滑に進める」という共通の目的があります。

気が合わない、どうも性格的に受け付けない、何となく気に障る・・・など、多少のことに目をつぶり、割り切る気持ちも持ってみましょう。

教育担当の先輩や上司に素直に相談する

もし、職場で話せる先輩や上司がいれば、今の気持ちを素直に相談してみましょう。

職場に誰もいなければ、採用活動であなたを担当してくれた採用担当者に相談してみてください。

採用担当者は、少なくともあなたが就職活動時にいろいろとコミュニケーションがとれた「会社の人間」のはず。次年度の採用活動で忙しいかもしれませんが、「職場のことで相談したいことがありますので、話を聞いてもらえませんか。」とメールをすれば、おそらく時間を取ってくれるはずです。

ポイントは一人で抱え込まずに、社内の事情や風土を知っている「社内の」誰かに一度きちんと相談することです。

「社外の」友人や家族に相談して、自分の気持ちや状況を客観視することと同じように、「社内の」誰かに相談して現状に合った解決策を模索することも大切です。

ぜひ試してみてください。

職場や同僚の価値観を否定するのをやめる

「もう、この職場無理!」
「自分とは絶対に合わない!」

そう思い込んで決めつけてしまうと、何もかも受けつけられなくなり、職場や同僚、先輩や上司をまずは否定的な目でみるようになってしまいます。

人は一度思い込んでしまうと、なかなかその思い込みから離れられないものです。

しかし、その思い込みを外せば、周囲の意外な側面が見えてくることもあります。苦手だと思う人も、実はあなたを気にかけてくれている、ということがあるかもしれません。

また否定的な気持ちでいると、嫌な気持ちが続いてしまいますが、その嫌な気持ちではなく目の前の業務に集中できれば、勤務中のストレスをいくらか緩和することもできるでしょう。

職場や先輩・上司の考え方を受け入れ、同調する必要はありません。

しかし、「自分とは違う見方もあるかもしれない」「違う考え方もあるかもしれない」と相手を否定するのをやめてみると、気持ちが楽になり、新たな側面や違う気づきがあるかもしれません。

「自分にも原因があるかもしれない」と一度は考えてみる

職場の人間関係に悩んだら、ぜひ一度は「自分にも原因があるかもしれない」自分の行動を省みる時間も持ってみてください。

「私は悪くない、間違っていない」と思ってしまっていませんか。そうかもしれませんが、自分では気づかない行動や無意識に行っていたことが、職場の人間関係に悪影響を及ぼしていた可能性は、決してゼロではありません。

朝は遅刻することなく出勤できていましたか。

「おはようございます。」「お疲れさまです。」などの挨拶はできていましたか。

話す時に相手の顏をみてちゃんと話せていましたか。

「です。ます。」の最低限の敬語は使えていましたか。

何かを教えてもらったときや、助けてもらったときに「ありがとうございます。」とお礼を言えましたか。

これらのことは、職場の人間関係を築くために最低限必要なマナーです。もし「できていなかった」という心当たりがあるならば、辞めて職場を変えても、また同じように人間関係で悩むことになる可能性が非常に大きいです。

自分を責める必要はありませんが、自分の行動で改善できることはないか、一度振り返ってみましょう。

新入社員で1年以内に辞めるデメリットも知っておく

それでもどうしても辞めたいと思ったら、退職するのももちろんありです。

しかし、辞める前に「新入社員で1年以内に辞めるデメリット」も、ぜひ知っておきましょう。

一般的に勤続1年未満で退職すると、次の就職・転職活動では書類選考上、普通の人よりマイナスのイメージからスタートします。

短期間で離職した人に対して、「我慢ができない人なのではないか」「ストレス耐性がないのではないか」「周囲とうまくやっていけないのではないか」などの先入観はどうしてもあるからです。

そのため、応募者が多い人気企業・優良企業の場合、書類選考を通過する可能性はかなり低くなります。

さらに新入社員なので、新卒ではありませんが社会人経験はほぼありません。

同じ条件の人材なら、来春の新卒入社を選びたいと思うのが企業の一般的な判断です。従って、新入社員で1年未満に会社を辞めた場合、転職活動は学生時代の就職活動よりもずっと大変だと覚悟しておきましょう。

但し、そのマイナスイメージを払拭できるような志望動機、自己PRが言えれば、今よりももっと自分に合う会社へ転職できることもあります。

新入社員で入ったばかりだけど、人間関係がつらくてもう辞めたい。

そう思ったら、まずは「今はそういう時期」だと思い、職場の人を否定しないようにしながら少し過ごしてみてください。そして社内の話せる人に相談したり、自分の行動で改善できることはないか振り返ってみたりしてみましょう。

そうこうするうちに、「辞めたい」と思う気持ちも和らぐ可能性があります。

それでも気持ちも環境も変わらなかったら、心身に影響が出る前に会社を辞める決断をしましょう。「会社が悪かった」ではなく「会社選びを失敗した」ことを素直に受け入れ、それが企業に伝われば次の道はきっと開けてくるはずです。