あなたは「根回し」にどんなイメージを持っていますか。
「面倒くさい」「どうも苦手」「そもそも、そんなことは必要ない」という方も多いでしょう。特に社会人になってまだ年数が浅いうちは、「根回しなんて面倒なことをしないで、そのまま話せばいいのに」と思うかもしれません。
しかし、どんな人も初めて提案された内容に対しては、「それを行うことで不利益はないか」と身構えるものです。特に責任ある立場になればなるほど、「デメリットやリスクはないのか?」と、その提案を実行した際の懸念点をきちんとチェックする必要があります。
そのため事前の根回しがなく、意思決定の場で初めて提案内容を見せた場合、その懸念点の議論に貴重な時間が費やされて、結論が流れてしまう…ということもあります。
面倒に思える根回しには、議論をスムーズに行う以外にも、メリットがたくさんあります。「根回しをしろ」という上司はいても、根回しがあなたにどんなメリットをもたらすかは、わざわざ説明してくれないかもしれません。根回しのメリットは大きく3つあります。ここでぜひ、理解しておきましょう。
1: 提案がブラッシュアップされる
根回しをすると2つの点から提案がブラッシュアップされていきます。まず1つは、根回しの準備のために、論点が整理されることです。根回しでは、相手の考え方の特徴や人柄から、どのような伝え方が効果的かを練る必要があるので、論点を今まで以上に整理する必要があります。
自分の立場からだけの視点でなく、相手の立場に立ったデメリットやリスクを洗い出すことで、今まで気づかなかった課題も見つけられるでしょう。
2つめは、根回しで相手からの「視点」が追加されるという点です。根回しでは、必ず相手も自分の意見を伝え、あなたの提案に欠けている点を指摘してきます。それを考慮してさらに練り直すことで、より実現可能性の高い提案へとブラッシュアップされるのです。
2:自分の支援者・協力者を作れる
根回しは、提案に対する自分の思いを語り、相手の思いや興味関心を確認する作業でもあります。反対する人やしぶしぶ了承する人もいますが、中にはあなたの思いに共感し、必要な情報や人脈を提供してくれる強力な支援者・協力者になってくれる人も現れます。
予算や提案の規模が小さいなど、時と場合によっては、根回しをしなくても実現できることもあります。しかし、どんな提案であれ、仕事は一人ではできません。いざ実行段階となった時に、思いに共感してくれている支援者や協力者がいるかどうかは、その仕事の進めやすさを大きく左右します。
会議の場だけで自分の思いに共感してもらうまでの合意形成を行うのは、極めて難しいと言えます。本気で提案内容を実現し、成功させたいと思うなら、意思決定前の段階でより多くの支援者や協力者を作ることが大切です。
3:「根回しできる」コミュニケーション能力が評価される
そもそも根回しの目的は、大きく2つあります。まずは、自分の提案に関連する意思決定者のデメリットとなるようなことや不安材料、懸念点を確認し、それを可能な限り解消すること。2つめが、自分の提案や意見へ理解を示してもらい、総論で賛成してもらうことです。
この目的を達成するためには、「根回しの順番」が非常に重要です。意思決定者の中で、「利害関係が最も大きい」「発言の影響力が大きい」などのパワーバランスを考えて、「最初に根回しすべき人」を見極める必要があります。この順番を間違うと、全てが台無しになってしまう可能性があるからです。
というのも、根回しを始めると、それはどこからともなく社内の関係者に広まっていきます。あなたが伝える前に、重要な意思決定者に「他人からの噂」として伝わると、「俺は聞いていない」と感情を損ねることにもなりかねません。そうなると感情的な要素が影響して、せっかくの提案が流れてしまうのです。
関係者の中で伝えるべき相手と順番を見極め、相手の考えや心情を配慮して自分の考えを伝え、相手から「YES」を引き出す。これには、高度なコミュニケーション能力が必要となります。
たとえその提案が承認されなかったとしても、根回しをした努力やコミュニケーション能力は一定の評価として残るでしょう。その積み重ねが、新しい案件や大きな案件を任せてもらえるチャンスへと繋がっていきます。
「根回し」は自分を成長させるチャンスでもある
このように、根回しをすることで自分の提案の要点がまとまり、提案に足りない視点が補われ、内容がブラッシュアップされていきます。また、その提案の実現に必要な支援者や協力者を増やすこともでき、コミュニケーション能力や人間観察能力が磨かれていきます。
自分の提案を実現に近づけるだけでなく、周囲の評価もアップし、自己の成長にもつながるのが根回しです。
提案の内容が重要であればあるほど、大きな案件であればあるほど、根回しがなければ実現は難しくなります。「根回しは面倒」「根回しは苦手」という方も、ぜひこの機会に根回しの価値を見直してみましょう。