育児休暇後に子育てをしながら仕事を続けられる制度として、「短時間勤務制度」を導入する企業は57.7%(厚生労働省 「平成24年度雇用均等法基本調査」)。

制度を利用する女性も年々増加し、2005年以降の利用割合は20.9%となりました(国立社会保障・人口問題研究所 「第14回出生動向基本調査」 2010)。

今や、多くの女性が利用するようになり、企業によっては小学校卒業まで利用できることもありますが、いつまでこの制度を利用するのかも新たな悩み所となっています。そこで、フルタイム勤務に戻るタイミングの見極めについて考えてみましょう。

まずは時短勤務のメリットとデメリットを再確認

メリットとデメリット

フルタイム勤務に戻るタイミングを考える前に、時短勤務のメリットとデメリットを改めて考えてみましょう。時短勤務のメリットには、このような点が挙げられます。

【時短勤務のメリット】

①家事と育児の時間を多く持てる(=子どもと接する時間を作れる)。
②保育園の送り迎えに余裕ができる。
③責任のある仕事は任されないことが多く、子どもの急な病気にも対応しやすい。

このように仕事を続けながらも、育児の時間を作れるのが時短勤務の大きなメリットです。一方、デメリットも忘れてはいけません。勤務時間が短くなる分、待遇や業務にはそれなりの影響があります。

【時短勤務のデメリット】

①短時間勤務制度を利用することにより、異動・降格になることもある。
②責任のある仕事は任せてもらえない。
③教育・研修の機会が与えられない(こともある)。
④制度利用中は昇給・昇進もない。
➄勤務時間が短いため、その分収入が減る(=老後の年金もその分減少する)。

子どもとの時間が過ごせる分、キャリア面では妥協と我慢が必要になってしまうのが時短勤務です。また、「時短勤務者がいると、その分の業務を負担しなければならないから困る。」と感じる人がいるのも、悲しいですが現実です。

これをふまえて、いつまで時短勤務を続けるか見極めを考える時に必要な視点が次の3点です。

ポイント1:夫や夫以外のサポート体制はあるか

まずは夫や夫以外のサポートで、育児ができそうかを確認しましょう。

フルタイム勤務に戻った時に、仕事は何時までかかるのか、出張や残業がどれくらいあるのかを考え、夫や夫以外の家族のサポート体制、保育園やシッター、ファミリーサポートなどの民間サービスなどを調べましょう。

子育てのパートナーとして、夫のサポートがあればベストですが、夫が多忙でも夫以外の家族や、シッター、ファミリーサポートを利用することで乗り切れることもあります。

シッターやファミリーサポートを利用すると、相応の費用が掛かりますが、これらのサービスが必要になるのも子どもが大きくなるまでの数年間です。多少の出費は割り切る覚悟もしましょう。

ポイント2:自分の人生で大切にしたいことが明確になっているか

フルタイム勤務になっても、子育ては続きます。時間に余裕がなくなり、大変に思うことも増えるでしょう。

だからこそ重要なのが、自分の人生で大切にしたいことが明確になっているかどうか、です。自分の気持ちが明確であり、その気持ちに基づいた決断ならば、どんな決断も後悔することはありません。

仕事で自分のやりたいことを実現したいのか。キャリアアップし、より責任のある仕事をしたいのか。将来的にも、金銭的に家計に少しでも余裕を持ちたいのか。まだ子育てを優先したいのか。自分の気持ちに問いかけて、真剣に向き合ってみましょう。

ここでフルタイム勤務に戻るポイントとなるのが、キャリアアップしたい、より責任のある仕事をしたいという思いが強くなっているかどうか、です。

その思いが強くなってきている場合、時短勤務はいわば「やりたいことを我慢している」状態になります。子育ての支援体制が整っていなければ、それもやむを得ないかもしれませんが、やりたいことを我慢している状態は、自分にも職場にも家族にもいい影響を与えません。

目指すキャリアプランが明確でなくても、「もっと責任のある仕事をしたい」という思いが強くなったら、フルタイム勤務に戻ることを真剣に考えるタイミングでしょう。

ポイント3:子育て、キャリアについて夫と同意ができているか

最後に大切なのは、子育てやあなたのキャリア・仕事に対する考え方について、夫が同意してくれているかどうか、です。

時短勤務では妻が行っていた家事や育児も、フルタイム勤務となれば、夫でも相応の協力や理解が必要となります。夫も子どもの送迎や家事をすることや、それができない場合は他の家族やシッターやファミリーサポートなどのサービスを利用することに理解を示してくれるか、夫ときちんと話合いましょう。

人によっては、「実はフルタイム勤務よりも、家庭に入って家事育児を優先させてほしい。」と思っていることもあります。安易に夫の意見を聞き入れるのではなく、自分の気持ちをきちん伝え、理解してもらうことも大切です。

ベストなタイミングは自分次第。周囲に相談して見極めを

一般的には、時短勤務からフルタイム勤務に切り替えるタイミングは、「子どもが3歳になったら」「子どもが小学校に入学したら」等と言われています。

ワーキングマザーに対する周囲の理解や職場の環境も人によって異なるため、「そんなに早くフルタイムになったら、子どもがかわいそうだ。」という声や、時短勤務に対する周囲の冷たい視線など、様々な外的要因に心が揺れるでしょう。

しかし、一番大切なのはキャリアや子育てに対する自分の気持ちと夫の理解です。気持ちが迷うなら、職場やママ友のワーキングマザー、キャリアコンサルタントなど状況を共有できる人に相談しながら、フルタイム勤務に戻るタイミングを見極めましょう。