結婚後の女性の働き方について、前編では正社員やパート・派遣社員として会社に勤める働き方をご紹介してきました。
しかし、結婚後の働き方には「専業主婦として家事育児に専念する」「フリーランスとして働く」「起業する」など「会社に雇われない働き方」もあります。
自分に合う道があるか、それぞれの働き方を選ぶときに何を考慮すればよいのか、そのメリットデメリットを確認していきましょう。
家族との時間を優先して専業主婦になる

総務省統計局「労働力調査特別調査」によると、2020年の共働き世帯は1240万。一方で専業主婦世帯は571万と、共働き世帯数が増える一方で専業主婦世帯数は減少の一途をたどっています。
しかし、本音では「できることなら専業主婦になりたい」と思う方も少なくないようです。ソニー生命保険株式会社が2020年に行った「女性の活躍に関する意識調査」で、働く女性に対し、本当は専業主婦になりたいかという質問をしたところ、「非常にそう思う」と「ややそう思う」と答えた女性は全体の29.8%。年代別に見ると、20代が41.7%でした。
また別の調査をみると、ニュースサイト「しらべぇ」編集部が行ったアンケートでは、専業主婦になりたいと思った人の割合は27.3%。この調査では30代が36.4%と高い数値を出しており、調査によって変動はありますが、全体のおよそ3割が専業主婦を希望していることがわかります。
「夫が高収入でないと、専業主婦になるのは難しい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、総務省統計局のデータによると、実際には専業主婦世帯で一番多い世帯年収は300~399万円。ついで200~299万円となっています。

国税庁「民間給与実態統計調査(令和元年分)」によると、20代後半の男性の平均年収は403万円ですから、専業主婦を実現するために必ずしも夫が高収入である必要はなく、夫婦の間に「そういうライフスタイルを実現したい」という思いがあれば、平均並みの収入で実現している人は多くいるということです。
それでは、「専業主婦」という働き方を選ぶメリット、デメリットをみていきましょう。
専業主婦のメリット1.
家事や育児に十分に時間をかけられる
家事も育児も、やろうと思えばいくらでもやることがあり、どれだけ時間があっても足りないほどです。
しかし、正社員でもパートでも、外に働きに出れば、どうしても時間に追われてしまいます。仕事と家事と育児を両立するには、「できる範囲でできることを」やれるよう、時間とバランスを見つけなければなりません。
しかし、家事や育児に自分の時間をすべて使える専業主婦という働き方ならば、「家事や育児に手をかけたい」「子どもが小さいうちはできる限り一緒にいたい」「子どもや夫との生活や時間を大切にしたい」いう思いを叶えられます。人生で、自分の大切な人のための時間、大切な人と過ごす時間を一番に考えられるのは、お金には代えられない大きなメリットでしょう。
専業主婦のメリット2.
仕事関係のストレスから解放される
会社を辞めてしまえば、仕事に関係するストレスは一切なくなります。納期やノルマに対するプレッシャー、職場の人間関係など、そうしたものから解放されます。
前述のように、仕事との両立で時間に追われることもなければ、仕事のストレスでイライラすることもなくなるので、心に余裕をもって家族に接することができるようになり、専業主婦になって家庭が円満になったという方も。
専業主婦になることで、心が軽くなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
専業主婦のメリット3.
夫の勤務スタイルに合わせられる
専業主婦になれば、夫の勤務スタイルに合わせることができます。国内外の転勤にも一緒に行くことができますし、激務の夫との家庭内のすれ違いを最小限に抑えることもできるでしょう。
専業主婦のデメリット1.
経済的なリスクが高まる
とはいえ、もちろんデメリットもあります。次にそれを確認していきましょう。
まず挙げられるのが、自分自身の収入がないので「経済的なリスクが高まる」ことです。「夫が高収入であること」が専業主婦になる必要条件ではないことは前述の通りですが、家計は夫からの収入のみになるということには、いろんなリスクがあり、それは夫が高収入でも平均並みの収入でも変わりません。
例えば、夫がリストラにあったり、病気で休職が必要になったりしたときに収入源が激減、あるいはなくなってしまうこともあります。転職で年収が下がるかもしれませんし、あるいは夫本人がどんなに仕事を辞めたいと思っていても、「年収が下がるから」という理由で転職を諦めてもらいたくなるかもしれません。
また、いつまでも夫婦円満でいるのが理想ですが、結婚生活がいつまでも円満とは限りません。何か離婚したい事由が発生した際に専業主婦でいると、「経済的に自立ができないから」という理由で離婚をためらう方が多いのも事実です。
さらに夫が高収入でない場合には、子どもの教育費や住宅費、老後資金に不安が付きまとうのも現実です。将来に備え、しっかり家計管理を行う必要があるでしょう。
専業主婦のデメリット2.
自分が自由に使えるお金が減る
専業主婦は、自分で自由に使えるお金も少ないです。少し前の調査になりますが、2013年の博報堂の「子供を持つ既婚女性の就業形態と消費に関する調査結果」によると、1ヶ月あたりの専業主婦のお小遣いの平均は1万4942円。
フルタイムの主婦のお小遣いは2万6725円、パート・アルバイトの主婦は1万5562円ですから、専業主婦が一番低くなっています。
「でもそれでも1万5000円近くあるなら…」と思ってはいけません。この数値は平均値なので、年収数千万を稼ぐ夫を持ち、月に何万円も、何十万円も、自由に使えるマダムのような人が平均値を上げている数字なのです。
「@nifty」の「何でも調査隊」によると、30代以下の専業主婦の1か月のお小遣いは5000円以下が64%と圧倒的に多数です。
「自分の服はここ何年も買っていない」という専業主婦は、筆者の身近にもたくさんいます。家事も育児も立派な仕事ですが、「自分の収入がない」という状況がもたらす様々な面も、きちんと理解しておきましょう。
専業主婦のデメリット3.
「自分」としての社会との関わりが減る
専業主婦になると、「家族」との時間は増えますが、「自分の時間」はほぼなくなります。その結果、社会とも「〇〇さんの奥さん」「××ちゃんのママ」として関わることが圧倒的に多くなり、「一個人として社会に関わる」と実感できる機会が一気に減っていきます。
社会との関わりを必要最小限にしておきたい方には、これはメリットとなりますが、「最近大人と会話していない」「子育て以外の話をしていない」と感じてしまうこともあるかもしれません。
自分の好きな仕事でフリーランスとして働く

正社員やパートなどで、会社に勤めるとどうしても時間に縛られてしまいます。
「決められた時間に仕事をする働き方では、家事と育児と仕事を両立できるか自信がない」
そんな方は、自分の経験や好きなことを活かしてフリーランスになるという働き方もあります。今はクラウドソーシングサイトで仕事も探しやすく、デザイナーや経理、Web制作など経験を活かした業務はもちろん、Webライターのように未経験から始められる案件も探しやすくなっています。
フリーランスとして仕事を始めやすい今だからこそ、そのメリット・デメリットを確認して、自分に適性があるか可能性を考えてみましょう。
フリーランスのメリット1.
家事と育児と仕事のバランスを自分で決められる
自分の時間をどのように使うか、どれくらい仕事をしてどれくらい家族のために時間を使うか、仕事の量や時間をある程度、自分で決められるのがフリーランスの最大のメリットです。特に今はWebで受発注が完結し、在宅でできる案件も多いので、通勤時間を費やすことなく時間を有効活用することもできます。
単価も様々ですが、パート代や自分のお小遣いくらいの収入を得ることの難易度はそれほど高くはなく、デザインなどのスキルがあれば、正社員並みの収入を得ることも可能です。
収入を得ながらも、時間的な制約はパートや正社員、派遣社員よりも格段に緩いので、子どもが病気になった時や、子どもの園行事や学校行事に参加する時などに都合がつけやすいでしょう。
フリーランスのメリット2.
仕事上のストレスをコントロールできる
フリーランスですから、どんな案件を引き受けるか、どれくらいの仕事をするのか、決めるのはもちろん自分です。クライアントとどのような関わり方をする案件なのか、どれくらいの納期で対応するのか、自分が選んだものを引き受けていくのがフリーランスです。
「収入のために、仕事は選ばない」ことも選べますし、「自分の価値観や働き方を優先したいから、仕事を選ぶ」ことも選べるから、仕事上のストレスをある程度、自分でコントロールできます。
フリーランスのデメリット1.
収入は不安定になる
仕事での自由裁量の部分は大きくなりますが、仕事の案件数や収入が保証されているわけではありません。また、正社員や派遣社員のように夏休みや有給休暇はなく、自分が仕事をしなかったら報酬は発生しないので、長期的な休みを取ったり、病気やけがなどで仕事が出来なくなったりした場合には収入が途絶えてしまいます。
フリーランスのデメリット2.
確定申告や帳簿管理が面倒
フリーランスは、個人事業主としての収支管理も自分で行わなければなりません。正社員や派遣社員、パート社員だったら雇用主である会社が行ってくれる年末調整などもないので、自分で確定申告を毎年行う必要があります。
毎月の経費管理も必要となるため、面倒な事務処理は会社員時代に比べると多くなるでしょう。
フリーランスのデメリット3.
健康保険料が高くなることも
そして、健康保険料も大きな問題となります。基本的には国民健康保険に加入することになり、保険料は各市町村によって異なるのですが、収入を得らえるようになればなるほど、保険料はかなり高くなります。正社員等で会社に雇用されていれば、「労使折半」で会社が出してくれている保険料を、自分で全額払わなければならないからです。
フリーランスが加入できる組合や協会に加入すると、健康保険料を押さえることができますが、手続きが面倒だったり、加入条件が厳しかったりするものも多いことも知っておきましょう。
思い切って起業する

最後に、思い切って起業するという働き方もあります。
「起業」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、「起業」して事業を始めるレベルは人それぞれ。本格的な事業計画書を書いて、銀行から融資を取り付けて始める「起業」もあれば、自分の貯金の範囲内で自宅の一室を使って自分の特技を教える教室を開いたり、カフェを始めたり、手作りのものを売ったりと、小さく始める「起業」もあります。
本格的に始めるとなれば、ストレスやプレッシャーは正社員時代の非ではありませんが、その分大きなやりがいを得られます。事業が成功すれば、収入も正社員時代をはるかに上回ることもできるでしょう。
また、自分でできる範囲のことを自分で持っているリソースのみをつかって、リスクを抑えて小さく起業することもできます。自己資金で始めれば、返済のプレッシャーがない分、自分のペースで事業を育てていくことができるでしょう。
さらに今は、個人でも取引できるM&Aサイトも複数あり、1から事業を立ち上げるのではなく、既存事業や既存店舗を買収し、自分のアイデアをそれに加えて事業を始めることもできます。
どんな事業でも立ち上げ期は大きなエネルギーが必要で、自分の時間を費やさなければ成果は上がりませんが、ある程度の規模になれば事業を人に任せることができるのも起業のメリット。そうなれば収入を得ながら、自由に時間を使うことができるようになります。
自分の気持ちと、家計と、パートナーの希望のバランスを

いかがでしたでしょうか。正社員や派遣社員、パートなど「会社に雇われて働く」以外にもいろんな働き方があります。
結婚後の女性の働き方は、自分がどうありたいかという気持ちが一番大切ですが、現実的にはそれだけで決められないのが難しいところです。パートナーである夫の希望(家事や家計負担の希望、転勤の有無などのワークスタイルなど)もふまえて、バランスをとりながら、納得できる働き方を探していきましょう。
ただ、どうバランスをとればいいのか、自分の気持ちがどこにあるのか、一人で考えているとわからなくなってしまうこともあります。
キャリア・コンサルティング・ラボでは、女性が結婚後の働き方を見つけられるように「女性のライフイベントと今後の働き方を考える60分」のコースを設け、女性のキャリア支援に長けたコンサルタントが「これから」を考えるサポートをしています。この先どうしようか迷ったら、ぜひお気軽にご相談ください。