長い育児休業を経て、職場に復帰する時には様々な不安があります。初めての育児休業後なら特にその不安は大きいでしょう。
不安な心理に加え、育児休業後には時短勤務を理由とした(あるいは時短勤務でなくても)、異動や降格などの変化があることも多いのが現実です。
そんな時に辛くなったり、空回りしたりしてしまわないように、育児休業後の職場復帰後の現実を心得ておきましょう。
1:妊娠前と同じ仕事をするのは、とても難易度が高いと知る
仕事が好きな女性なら、育児休業で休んでいた分、「仕事をしたい」という思いが高まっていると思います。休んでいた分を取り返そうと、保育園も育児サポートも万全の準備を整えて、モチベーション高く復帰するのは素晴らしいことです。
しかし、「両親(あるいは母親か義母)と同居していて、自分の代わりに子どもの世話を全てしてくれる人がいる」「ベビーシッターが数人交代で、自分の代役をしてくれる」という状況でもない限り、妊娠前と同じクォリティで同じ量の仕事をこなすのは、極めて難易度が高いと心得ておきましょう。
というのも、子どもは小学校入学位まで様々な病気にかかります。育休中、家にいる間はあまり病気をしなかった子どもでも、保育園に入れば状況は変わります。
園では、常に何らかの病気が流行っています。37.5度以上になれば、「迎えに来てください」と連絡がきます。会議も締め切りも関係ありません。インフルエンザなど感染症などを患えば、1週間は登園できず、さらに登園許可書をもらうために、完治後も病院に行かなければなりません。
結果として、遅刻・早退・欠席は必然的に増えてしまいます。ベビーシッターなど民間のサービスを使えば乗り切れますが、その分費用がかかります。費用を気にしなくても、「病気の子どもを放っておいて…」という自責の念は、多少なりとも生まれます。
「以前と同じように仕事がしたい」という気持ちが強ければ強いほど、早退・遅刻・欠席の度に自己嫌悪に陥ってしまいます。
職場に迷惑をかけたくないという気持ちは大切です。しかし、子どもの病気はどうしようもありません。自分を追い込みすぎないよう、「無理なこともある」と、ある程度割り切る気持ちも大切にしてください。
2:異動や降格は能力の問題でも業績を評価していないわけでもない
育児休業後に時短勤務を申請した場合、またはそうでない場合にも、異動や降格、また職務の変更に伴う減給が行われる場合があります。
「今までの分も仕事をしよう!」と意気込んで復帰したのに、このような処遇を受けて、「今まで頑張ってきた私の業績を会社は認めてないの!?」と憤慨したり、ショックを受けたりする女性も多くいます。
育児休業後の配置転換は、確かに「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に反する行為です。しかし法律は、現職相当に復帰させることを義務付けているわけではありません。
会社は、経営戦略で人員配置を見直した場合や、短時間勤務では対応できない場合、時間外勤務ができないと対応できない場合などに育児休業から復職した労働者の異動を行うことが許されるとされています。
先に述べたように、子どもは小学校入学するくらいまでの5~6年間は、本当によく病気になります。仕事の代わりは他にいても、母親の代わりはいないからこそ、会社はいざとなれば従業員が母親業を優先でき、その穴を他の社員がカバーできるような仕事や部署へと異動人事を行うことが多いのです。
育児休業を取得した社員がそのまま閑職に…という会社も残念ながらありますので、異動や降格の真意が別にある会社もあります。しかし多くの場合は、異動も降格も減給も、あなたの能力が下がったと、業績を評価していないという意味ではありません。
異動先にどうしても納得のいかない場合は、子どもが大きくなり、フルタイムで以前のように働けるようになったら、元の仕事を任せてもらえるのか人事に確認してみましょう。
「小さい子どもの母親業をしながら、通常通りの実績を上げるのは難しい」というのが、一般的な見方です。あなたの個別の能力を判断しているわけではありません。異動や降格に感情的になりすぎず、「母親業をこなしながら、以前と同様の仕事ができる」ということなら、実績でアピールしていきましょう。
3:利用できるサービスはフル活用。給料が全て保育費になっても気にしない
子どもが頻繁に病気になるとはいえ、できるだけ仕事に穴をあけず、職場にも迷惑をかけずにしたいものです。子どもを理由に、あまりに頻繁に遅刻・早退・欠席を繰り返すようでは、ワーキングマザー全体の印象に影響し、その後に育児休業を取得する女性の風当たりが強くなってしまいます。
そのためにも、利用できる保育サービスはフル活用できる準備をしておきましょう。例えば、病児保育や病後児保育は、地域で利用可能なサービスは可能な限り登録しておきます。感染症やインフルエンザが流行る季節は、1つのサービスだけでは満員で利用できないということもあるからです。
仕事をできるだけ優先したいなら、ベビーシッターを利用し、保育園のお迎えや習い事の送迎もお願いする方法もあります。
こうしたサービスを利用すれば、仕事に費やせる時間が増える分、給料のほとんどが保育サービスに消えていくでしょう。そうなると「何のために働いているのだろう・・・」「ここまでして働かなくても」と思うかもしれません。
しかしその負担も、子どもが大きくなれば変わります。今は給与が全て子どもの保育サービスになってしまっても、仕事を続けている限りキャリアは形成され、年金などの社会保障額も積み立てられます。
「保育サービスに払うくらいなら、辞めたほうが…」と思うかもしれませんが、一度辞めて育児に専念してしまったら、正社員として再就職することは非常に難しくなります。正社員と派遣社員、パート・アルバイトではそれぞれ生涯年収が大きく異なります。お金の問題であれば、ここで保育料を支払い続けても仕事を続けたほうが、長い目で見れば生涯年収は多いのです。
周囲への感謝と笑顔を忘れずに
ワーキングマザーの子育ては、周囲の協力なくしては成り立ちません。保育関連サービスでお世話になる方だけでなく、職場にも常に感謝の気持ちを大切にしてください。
以前の会社で、育児休業後に変わらぬ業績を上げている、営業職のワーキングマザーがいました。非常に多忙な仕事でしたが、彼女は子どものために午後6時に帰宅していました。終わらない分の仕事は、庶務がサポートをしていたので、彼女は外回りの度にその庶務にお菓子などちょっとしたお土産を差し入れて、常に感謝をしていました。
庶務の女性は、「いつも早く帰って、困るんだけど…」と笑って言いながらも、彼女の仕事をしっかりとサポートしてくれたそうです。
周囲の協力的な雰囲気を作れるかどうか。それは、日頃から子どものために休んだり、早く帰ったりしなければならない自分のサポートをしてくれる職場に対して、感謝の言葉を忘れずに、気持ちよく仕事を代わってもらえるような気遣いができるかによります。
利用できる保育サービスの準備を整えつつ、それでも時には乗り切れないこともあると割り切り、異動や降格にも感情的になりすぎず、周囲への感謝を大切にして、子育て期間を乗り切ってください。