育休後に職場に復帰。しかし、そこからワーキングマザーの新たな試練が始まります。
育児休業前とは異なる仕事、職場への異動。時短勤務を理由にした降格や減給。育休前は戦力として期待を感じながら仕事をしていたのに、「戦力外通告」を受ける、あるいは言葉にされなくてもそのような扱いを受けることは耐え難いものがあるかもしれません。
さらには、かわいい盛りの子どもと離れる切なさや、保育園に預けることになる子どもへの申し訳なさなど感情的な要因もでてきます。
育児と仕事を両立してみて、その多忙さに「この生活を続けられるのか」と不安になることや、なかには子どもに持病が…ということもあるでしょう。
ここでどうするかは、人生の大きな分かれ道です。この先後悔しないためにも、 「復帰してすぐだけど、やっぱり退職したい…」と思ったら、この3つの視点から今の状況を見直してみましょう。
キャリアプランのスピードを
「少し緩める」ことは難しいですか?
せっかく復帰して、仕事を頑張ろうと思っていたのに、異動や降格などで同期や後輩に後れをとってしまうと、非常にやるせなくなってしまいます。「他人とは比べない」というのは正論ですが、職場で時間を気にせずに働くことができる同僚や後輩を見て、心穏やかでいるのは、仙人の域にでも達しない限り難しいかもしれません。
しかし、仕事人生はこれからもまだ数十年、続きます。
そのなかで、あなたにとって本当に大切なことは、昇進のスピード競争に勝ち抜き、職場で一目置かれることでしょうか。
思い描いていたキャリアプランを少し修正し、昇進のスピードを少し緩めることを考えるのは難しいでしょうか。
子どもはいずれ大きくなり、病気もしなくなります。
小さいうちは急な発熱などで、頻繁に保育園から呼び出されることもありますが、成長するにつれて抵抗力もついてきますので、その頻度は減っていきます。小学校に入学すれば、下校時間が早くなる「小1の壁」もやってきますが、学童保育など利用できるサービスはあります。
今は辛いですが、数年もすれば状況は変わります。子どもが成長し、仕事に集中できるようになってから仕事で挽回して昇進した、というケースもあります。
今は同期や後輩に比べて、遅れてしまったように感じるかもしれませんが、今感じている「遅れ」は、二度と取り返せないものではありません。「腐らない気持ち」で仕事に取り組めば、仕事に注力できるようになってきたときに、きっとチャンスはやってきます。
キャリアプランの時間軸を少し、柔軟に考えてみませんか?
仕事と育児の両立
「ほどほど」で乗り切るのは難しいですか?
子どもと過ごす時間がない。子どもに寂しい思いをさせている。家事も全然できていないし、家のなかはぐちゃぐちゃ。一体、本当にそこまでして働く意味があるのか。
特に、夫の収入だけでも生活が成り立ち、「生活のためにどうしても働かなければならない」という場合には、「仕事の代わりはできるけど、子どもの親は自分だけ。子どもに寂しい思いをさせるくらいなら…」と、退職を決断するワーキングマザーも多くいます。
そして子どもが小さいうちには仕事を辞めて、大きくなったらパートで働く。
これは今までに多くの女性が選んできた選択肢でもあります。
しかし、結婚や出産を機に正社員としての仕事を退職し、非正規社員になった場合と、正社員として仕事を続けた場合では、生涯賃金で約1億円の収入差があるという試算もあります。(女の転職 Type 「「結婚したらパート」で1億円を失う! ワークスタイル別、女の生涯賃金を公開」)
子どもが小さくてかわいい間は、そばにいてあげたくなるのも親心です。この時期にそばにいれないのは自分も辛いかもしれませんが、このまま正社員として仕事を続けて安定した収入があれば、やがて子どもが成長し、進学を考えるようになったとき、経済的な事情からやりたいことを諦めたり、多額の奨学金で進学し就職後に奨学金の返済に苦労したりする事態を避けられる可能性は高くなります。
仕事と育児を両立するのは今は大変ですが、この時期を乗り越えて得られる収入は、子どもの将来に大きなプラスになります。
仕事も育児も、「ほどほど」で、今のこの数年をなんとか乗り切るのは難しいでしょうか。
いつも一緒にいられなくても、短い時間であってもしっかり子どもと向き合う時間をつくることで、愛情は伝わります。親子で一緒に笑顔で食卓を囲めるならば、買ってきたお惣菜だってご馳走です。家が散らかっているのも、「今は仕方ない!」と目を瞑ってみませんか。
育児休業から復帰後
すぐ退職したら後輩女性は困りませんか
2019年4月、NHK青山祐子アナが産休・育休を7年間繰り返して退職したことが議論になりました。青木アナの行動に対する個人的な賛否はいろいろあるかと思いますが、そもそも育児休業は、「復職する」という意志がある労働者のための制度です。
労働基準法でも、育児休業の対象となるのは、「事業主に雇用された期間が1年以上である者」と「その養育する子が1歳に達する日を越えて引き続き雇用されることが見込まれる者(子の1歳到達日から1年を経過する日まで、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。)」とあります。
つまり、規定上は「復帰後、1年以上働く意思がある労働者」のための制度なのです。
育児休業期間中は、企業から給与は無給のことが多くありますが、休業中の健康保険や厚生年金などの社会保険料を会社は負担し続けていて、その負担額は年間数十万となります。
これで復職後すぐに辞めてしまったら、会社にとっては多かれ少なかれ損失です。企業によっては大した金額ではないかもしれませんが、「復職する」約束が反故にされたことに対する「不信感」は残ります。
そしてそれは残念ながら個人の問題では済まず、多くの場合「これから職場で出産をする女性全体」に向けられてしまうものなのです。
もし職場に、育休取得後も働いている女性のロールモデルがいれば、「今回は、仕方ない」と後輩女性への影響は少ないでしょう。しかしそうでない場合には、今後、妊娠・出産し育児休業を申請したいと思う女性に対する風当たりが強くなるのは、避けられません。
実際に、知人が勤めていたある中小企業では、最初の育休取得者が育休明けにすぐに退職してしまいました。そのため会社では、「だから女性は…」「やはり出産したら退職を…」と育児休業に難色を示す雰囲気が強くなり、その後10年以上育児休業を取得する人が現れなかったそうです。
育児休業後、復帰してすぐに退職するか、それともある程度頑張って仕事を続けるかで、その後の後輩女性が育児休業を取得しにくくなるか、しやすくなるかに大きく影響します。復帰直後に退職した場合、実は周囲に与える影響も大きいことを忘れないようにしましょう。
退職がやむを得ないこともあるけれど…
働き続けるつもりで育児休暇を申請したけれど、子どもの病気や障害、保育園の入園問題や、退職を促すような異動や減給、職場の雰囲気、子どもが寂しがって心身に影響が出ているなどやむを得ず退職せざるを得ない状況もあるかもしれません。
しかし、育休から復帰後すぐに辞めてしまうことは、自分や子どもの人生に経済的な影響を及ぼすだけでなく、職場の後輩にも影響を与えます。
育休からの復帰後、まだ間もないけれど会社をもう辞めたいと思ったら、今後の働き方やキャリア形成、後輩への影響も含めて、もう一度だけ考え直してみましょう。
1人で答えを見つけるのが難しいときには、ぜひ私たちキャリアコンサルタントを活用してくださいね。