育休後、保育園が見つからない。
育児と仕事を両立できる自信がなくなってきた。
子どもがかわいくて、こんなにかわいい子を預けて働くなんて考えられなくなってきた。
育休前には復帰するつもり満々だったとしても、育休中に事情が変わったり、気持ちが変わったりして「やっぱり復帰できない」という結論に至ったとき、悩ましいのは職場への対応です。
申し訳ない気持ちはあるけれど、でも私はやっぱり辞めたい。
その気持ちが固まったら、責任ある社会人として職場への対応はぜひこんな配慮を心がけましょう。
復帰できないと決まったら早めに上司に連絡しよう
育休後に復帰できないことが決まった場合は、速やかに上司に連絡しましょう。
退職理由は、もっともらしい理由が思いつかなければ、いろいろ考えるよりも思い切って正直に伝えることをおすすめします。
本来、育児休業制度は「出産後、職場に戻って働きたい」社員のための制度ですから、職場は当然「戻ってきてくれる」と思って、ポジションや仕事を用意して待っています。復帰せずに退職するのであれば、そのポジションや仕事を担当する新たな人員配置を考えなければなりません。
育休終了直前に、「やはり復帰できません」と言われてしまったら、その対応が間に合わず職場に迷惑をかける可能性もあります。
「職場」や「会社」というと顔が見えない集合体になってしまい、「会社なんだから、なんとかしてくれるでしょ」と思ってしまいがちですが、その「会社」の実態は、一人一人、あなたと同じように業務が増えて残業するよりは、早く帰って家族やパートナーと時間を過ごしたり、自分の時間に費やしたりしたい、職場の同僚です。
「会社や職場への誠意ある対応」という意味では、職場の同僚たちへの影響を最小限にするためにも、「復職しない」と決めた時点で申し出てもらったほうが欠員補充の準備ができるため、早ければ早いほど会社や職場の社員にとっては「誠意が感じられる対応」になります。
たとえば、育休後半年くらいで「もう復帰はしたくない」という気持ちが固まったのなら、その時点で連絡してもらえれば、それだけ欠員補充は早く対応できます。戻ってこないなら、早く言ってもらったほうが職場の同僚にとってははるかにありがたいのです。
ただし育児休業制度は「戻ってきて仕事をしたい人」の制度のため、あまりにも早く意思を伝えると育休を打ち切られ、育児休業給付金がもらえなくなってしまう可能性があります。
「ギリギリまで育児休業給付金をもらえないと、家計が困る」「職場は困るかもしれないけれど、もらえるお金はギリギリまでもらいたい」(しかし育児休業給付金は、「育休後に復帰する人」のためのものなので、復帰しないと決めた時点で、本来の意味では給付金の対象者からは外れますが…)という気持ちもあるでしょう。
その場合は、就業規則などで決められた退職規定を確認し、「退職は〇日前までに届け出ること」等の記載があれば、その期日ギリギリに申し出るのがよいかもしれません。
「自分の育休中、職場は大変だったかもしれない」と
想像力を働かせよう
育休中に空いているポジションを、派遣社員を雇ったり、人事異動で対応できたりするのは大企業のみです。もし働いているのが中小企業であれば、職場に残った社員が仕事を分担して、なんとか人手不足の現場を回しています。
育休が終わったら復職するとわかっているなら、新たに人を雇えば1年かそこらで辞めてもらうことになるため、そのポジションに適切な人材を採用するのは、たとえパートやアルバイトであっても難しいからです。
「仕事と育児が両立できそうもないから」「大変そうだから…」「復帰してやっていく自信がない」という「自分が大変だから」という理由で今、「復帰しない」という決断をしたのであれば、ぜひ自分の大変さだけでなく、自分の育休を陰で支えてくれた、職場の同僚たちも大変だったのではないかと、少し想像力を働かせてみましょう。
職場の同僚にも、大切な家族やパートナーがいて、その人たちとの大事にしたい時間を削ってあなたがいない間の業務をしていたかもしれませんし、疲れて家事が手つかず片付かない家にため息をつきながら、働いていたかもしれません。
一般的に、代わりの人員が配置できない現場では、育休期間中に職場の同僚は多少なりとも業務が増えて、大変な思いをしていることが多いです。もちろん「お互い様」「子育ては大切」と思って支えてくれているでしょうし、大変なのは決してあなたのせいではありませんが、大変なのは、自分だけではないことは紛れもない事実です。
退職の際には、職場の同僚に育休中の仕事をフォローしてもらった感謝と、復帰できないお詫びをきちんと伝えておきましょう。
自分の行動が他人に影響を与えた経験を
次に生かそう
育休後復帰して、働いている女性の事例が多い会社であれば、あなた一人の退職が後輩に影響を与えることはほとんどありません。
しかし、もし過去に育休を活用した女性社員の事例が少なかった場合、あなたの退職によって今後、出産しても働き続けたいと考えている女性社員への対応が厳しくなるかもしれません。
「戻って働きたいといって育休を取得したのに、その約束を破って復帰しない」というこの行動が強烈な前例として職場に残り、「どうせ育休終わった後に辞めるっていうなら、ホント迷惑だから妊娠がわかった時点でさっさと辞めてほしい」という後輩の女性社員へのマタハラの原因になる可能性は、十分にあることを忘れないでおきましょう。
「もちろん後輩には申し訳ないと思うし、悪いと思っているけれど、どうしても私には無理だから」という思いはあるでしょうし、仕方がない事情はあるとは思いますが、自分の行動が思わぬところで、誰かにプラスとはいえない影響を及ぼしているのは残念ながら事実です。
それは素直に受け止め、少しだけ「自分のせいではないのに、働きにくい環境になってしまった」後輩の女性社員の気持ちや立場にもぜひ少し思いを寄せてみてください。
ただ、それを引け目に感じるのではなく、また開き直るでもなく、この経験を活かして、この先反対に他人の行動の影響で自分に何か望まない事態が起きたときに、「なんで私のせいじゃないのに…!」「ちょっと、なんてことをしてくれたのよ!」と波風立てずに、「世の中お互い様だから」と少しでも寛大でいられる気持ちを持てるような、そんな人として成長するきっかけにしていきましょう。
「自分の気持ちが大切。家族と過ごす時間や家庭が大切」という生き方を貫いた経験を活かし、これから先はぜひ、他人が大切にしたい生き方も認め、理解し、そしてそれを応援してあげられる人になってください。