仕事を続けるつもりで育休を取得したけれど、復職しないでこのまま退職したい。

育児休暇が明ける1歳頃は、生まれた子どももちょうどかわいい盛りです。夫の収入だけでもなんとかやっていけるし、子どもと離れたくないし、自分で育てたいし、もうこのまま退職したい。そう思う女性も少なくありません。

実際に、厚生労働省の「平成24年度雇用均等法基本調査」によると、育児休暇を取得後、復職せずに退職した人の割合は平成22年度の7.9%から、平成24年度は10.2%とわずかですが増えています。

しかし、復職し仕事を続けるメリットもあります。仕事と家庭の両立は多忙な日々になりますが、大変なことばかりではありません。ここで復職のメリットを一緒に考えてみませんか。

教育資金、老後資金…家計には圧倒的にプラス

老後資金

仕事を続ける最も大きなメリットは、収入面です。子どもが小さい間の数年間、時短勤務を利用したとしてもその後フルタイム勤務に戻れば、収入は元に戻ります。

夫の収入だけでも生活していけるかもしれませんが、共働きで妻にも収入があれば、将来の教育資金や老後資金の余裕が大きく変わってきます。子どもの希望する大学や行きたい留学先など、我が子のやりたいことを快く応援できるかどうかも世帯収入が影響するのが現実です。
また、遠い将来の話だけでなく、子どもの習い事や家族旅行の行先や回数など、目先の教育や娯楽も変わってくるでしょう。

正社員で定年まで働き続ける場合と、出産を機に非正規社員に切り替えた場合とでは、生涯年収に1億円以上の差が生まれるという試算(※)もあります。

「家族を犠牲にして、働くなんて・・・。」と思うかもしれませんが、働き続けることで子どもの将来にプラスになることもたくさんあるのです。

※参考記事:「結婚したらパート」で1億円を失う!ワークスタイル別、女の生涯賃金を公開(Woman Type 2015.3.16)

家庭以外に自分の居場所があることが気分転換に

育休後、復職しないで退職し、専業主婦になったとしましょう。仕事をしないで子育てと家事に専念できる専業主婦は、一見優雅に見えるかもしれませんが、専業主婦なりの悩みも多くあります。

まず専業主婦は子どもを保育園に預けられないので、幼稚園までの3年間、昼間は子どもと2人きりです。育児サークルに参加するなどもありますが、「今日は子どもとしか会話していない。」という日も多くなります。

基本的に24時間子どもと一緒なので、「自分の時間」は早朝か深夜など子どもが寝ている時間のみ。ママ友ができても話す話題は、子どものことばかり・・・といった独身時代や勤務時代とのギャップに、「こんなはずではなかった。」と嘆く女性もいます。

また、仕事をしていればその成果や達成感が味わえますが、育児と家事には終わりがありません。専業主婦になることで、夫は家事も育児もあなたに任せきりになり、それが当たり前になるでしょう。

大人と会話する時間がない。一人の時間もない。がんばっても誰も認めてくれない。かといって専業主婦だから、育児を任せて息抜きするのも何となく後ろめたい。

そんな気持ちから、育児ストレスを抱える専業主婦や、家庭以外に自分の居場所がないようで、社会からの疎外感を感じる人も少なくありません。

一方、復職して仕事を続ければ、家庭以外にも「職場」という自分の場所を持つことができます。仕事と育児の両立は大変なだけではありません。仕事や職場での人間関係を通じて、「自分の時間」をしっかり持つことができます。実際に、「仕事があるからこそ、育児の気分転換ができ、子どもに愛情を持って向き合える。」というワーキングマザーも多くいます。

育休中という、「復職できる場がある」立場での専業主婦生活と、もう戻る職場のない専業主婦生活は精神的に大きな違いがあります。仕事を続けることは、収入面以外に精神的にもこんなメリットがあるのです。

積み重ねたキャリアが途切れない

復職して仕事を続ければ、積み重ねてきたキャリアは途切れませ時短勤務になれば仕事が軽減されたり、異動になったりしますが、フルタイム勤務に戻れば職務も同等のレベルに戻ります。

任される仕事が異なるにせよ、雇用が継続され、積み重ねたキャリア(勤続年数)が途切れないことは、キャリアの面でも大きな意味があります。子育てが一段落してフルタイム勤務になった後に、今までの経験を生かして管理職になったり、大きな仕事を任されたりする女性も多くいるからです。

育休後に復職せずに退職してしまったら、再就職活動は容易ではありません。言うまでもありませんが、就職先が決まっていなければ保育園を見つけることは難しいですし、保育園が決まっていなければ、就職先も決まりません。

また、現在が正社員で再就職でも正社員としての勤務を希望する場合、時間が過ぎるうちに、正社員としての再就職はどんどん難しくなってしまいます。

内閣府が調査した「平成18年度国民生活白書」では、出産・育児のために離職した場合、1年未満の再就職なら正社員で雇用される割合は19.5%ですが、離職期間が1年以上となると、8.8%半分以下に減少しています。

「育児が落ち着いたら、再就職を。」と考えても、その再就職は非正規雇用での再就職となる可能性が高くなります。自分のキャリアから正社員の立場を捨ててもよいのか、収入や仕事のやりがいなどの面からもぜひ一度考えてみてください。

平日昼間を一緒に過ごせなくてもママの愛情は伝わる

「こんな小さい頃から、子ども預けて働くなんてかわいそう。」そんな思いや周囲の声が、育休明けに復職を考えるママの心を大きく揺さぶります。

しかし平日の昼間に一緒に過ごせなくても、ママの愛情を子どもに伝えることはできますし、平日の昼間に一緒にいないからといって、育児放棄になるわけではもちろんありません。

夜に一緒にお風呂に入る、絵本を読んであげる、「○○ちゃん、大好きだよ!」といって毎朝抱きしめる、土日に思いっきり遊んであげる・・・などを通じて、子どもに愛情を注ぎ、親子の絆を作ることは仕事を続けていても十分にできます。

特に1人目の子どもだと、育休後に仕事と家事・育児を両立することに不安を感じるかもしれませんが、仕事を続けるメリットは多くあります。そもそも育児休暇は、1年後に復職することが前提の制度です。「退職」の二文字が頭をよぎったら、仕事を続けるメリットを思い出して、考え直してみませんか。