育児休業をいつまで取得するか。「ママとして、いつまで赤ちゃんとの時間の過ごしたいか」という気持ちだけで決められれば理想です。労働基準法でも子どもが1歳から1歳6ヶ月になるまでの間の育児休業取得が認められているため、多くの企業ではそれに準じた育児休業制度を整備しています。
その制度を最大限活用した育児休業を取得したい女性は多いと思いますが、実際には保育環境や職場の環境などの影響で、育児休業を取得せずに退職する女性も増えています。
今回は、育児休業の期間を決める様々な要因について紹介します。
10ヶ月以上を取得する人が過半数の一方、1ヶ月未満で復職する人も
(出典:厚生労働省「平成22年度雇用均等基本調査」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-22.html )
厚生労働省の「平成22年度雇用均等基本調査」によると、育児休職後に復職した女性のうち6割以上が10ヶ月以上の育児休業を取得しています。
育児休業は「法定通り子が1歳になるまで」という企業は、73.8%。子どもが1歳以上になっても育児休業が取得できるのは、大企業を中心に約4社に1社の割合です。(日本の人事部HPより)
こうした企業の育児休業制度の状況や、平成20年度の調査結果に比べて、1ヶ月~10ヶ月未満の取得者が減少していることから推察すると、「制度をフル活用して、長期の育児休業を取得する女性が増えている」といえそうです。
しかし、一方で産後休暇後、1ヶ月未満で仕事に復職する女性も平成20年度の1.0%から1.5%と増えています。
また、そもそも「育児休業を取得しない」という女性も増えています。厚生労働省の「平成22年度雇用均等基本調査」によると、平成22年度の育児休業取得率は、83.7%。最も取得率が高かった平成20年度をピークに減少を続け、6.9%も減少しています。
一方で出産を機に退職する女性の割合は、1989年から2009年までの20年間の間に37.4%から43.9%と年々増加しています(国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」2011)。
(厚生労働省「平成22年度雇用均等基本調査」より作成http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-22.html )
1ヶ月未満と短期間で復帰する女性が増えているのも、育児休暇を取得せずに退職する女性が増えているのも、保育環境と職場環境に要因があります。
保育園は0歳児のほうが入りやすい?!
都市部に住んでいる方なら、「保育園は0歳児のほうが入りやすい」と聞いたことがある方も多いでしょう。それは体感値ではなく、実際のデータとしても裏付けられています。
出生数が減少しているため、認可保育園の待機児童数も減少傾向にありますが、それでも全国で2万1,371人の待機児童がいます。このうち、0歳児の待機児童は3,507人。一方、1~2歳児の待機児童は、14,555人と約4倍になります(厚生労働省 平成26年度4月)。この数からもわかるように、1歳を過ぎて認可保育園に預けるのは非常に競争倍率が高いのです。
育児休業取得者の約3人に1人が、10~12ヶ月の育休期間を経て子どもが1歳になる頃に復職しているという事実からも、激戦は避けられないのも当然です。また年齢だけでなく、4月よりも年度の途中のほうが保育園に入りやすいという時期的な要因もあります。
認可保育園に入れなかった場合、認証・認定保育所、認可外保育所、家庭保育所などの手段がありますが、保育料は認可保育園に比べ高額になります。こうした事態を避けたい場合は、保育園に入れやすい0歳児のうちに、年度の途中で保育園に預けて復職するか、仕事を辞めることになります。
職場の人手問題や育児休業を受け入れる風土の有無
職場では、従業員が育児休業で休んでいる間の欠員補充が大きな問題です。育児休業は、「復職する」ことが前提ですから、他の人を期間限定で採用するわけにはいきません。他部署から異動や派遣社員を雇うことで補えればいいですが、その余裕がないケースもあります。
結果として、1人欠員した分を残りの社員が補うこともあります。育児休業によって、職場の周囲の社員の仕事や負担が増えることも少なくありません。一方、「退職」であれば、その分の人員を採用できます。そのため非常に残念ながら、本音では「育児休業は困る」「できるだけ早く戻ってきてほしい」と思っている職場もあるのが、現実です。
育児休業を心から受け入れてもらえるか、表面的には受け入れてくれても実はそうではないかは、職場によって異なります。また、今後のキャリア形成を考えたときに、できるだけブランクを作りたくないという心理もあるでしょう。このような職場環境を考慮し、短期間で復帰することもあるようです。
保育環境や職場環境も考慮して納得できる妥協点を探して
「ママとして、できるだけ長く子どもと一緒にいたい」というのは、当然の思いですし、1年~1年半の育児休業は法律で認められた権利でもあります。
しかし住んでいる地域や職場によっては、その思いを貫き、当然の権利であるはずの育児休業を取得することで、思わぬ状況に陥ってしまうこともあります。それを避けるために、育児休業を取得しない女性や1ヶ月未満で復職する女性が増えているのです。
育児休業の期間をいつまでにすればいいのか。もし悩む場合は、こうした現実を見つめ、地域の保育環境や現在の職場環境も考慮し、自分の思いや今後の働き方とのバランスを考えて、納得のできる妥協点を見つけにいきましょう。