自分が今やっている仕事は、誰にでもできるような仕事ばかり。
毎日同じような業務の繰り返しで、やりがいや成長感も薄れて、この仕事にも、それをしている自分にも価値がないように感じてしまう。

そんなふうに思ったことはありませんか。

でも「誰にでもできる仕事」は、実はそんなに悪いことではありません。

自分の仕事が「誰にでもできる仕事」にみえて、「なんだかなぁ…」と思う気持ちが拭えなかったら、「誰にでもできる仕事」の違う側面を一緒にみてみましょう。

単調、つまらない、簡単、市場価値がないと思われがちな、「誰にでもできる仕事」ですが、そうではない見方も、たくさんあるのです。

「私にしかできない仕事」にはデメリットがある

自分の都合と理想

「これは、私にしかできない仕事」そう誇れるものがあるのは、とてもカッコイイように思えます。

しかし、何か特定の業務や仕事が「自分にしかできない状態」になると、不都合が生じる可能性もあります。

たとえば、「このクライアントの案件は私にしかできない」状態だったとしましょう。そうなると、もしあなたが体調不良で会社を休むことがあった場合、そのクライアントのフォローはなかなかできなくなってしまいます。

クライアントから問合せがきても、あなたがいなければ対応できません。

会社で働くのは職人の業務とは違います。

仕事を「自分しかできない」状態にしてしまうことは、自分が業務に携われない状態の時に、その業務が止まってしまうという大きなリスクがあります

「誰かにしかできない仕事」はリスクがあるため、そのような状態を作らないほうが客観的に見れば実は望ましいのです。

「仕事を誰にでもできるようにする」のは実は大切なこと

だからこそ誰かがいなくても代わりに誰かが対応できるように、「仕事を誰にでもできるようにする」のは経営的な視点からみればとても重要なことです。

たとえば、業務を「誰にでもできる」状態にすることを進めてうまくいっているのがおせんべいなどの製造で知られる株式会社三州製菓(埼玉県春日部市)の「1人3役制度」です。

三州製菓では、自分の担当業務以外の業務を学び、その取得レベルを「見習い」「担当」「玄人」などでわけ、担当業務を自分以外の社員もできるようになること、つまり誰でもできる状態になることを奨めています。

この制度によって、担当がいなくてもその業務を代わりの社員ができ、自分の仕事を代わりにしてくれる誰かがいるため休暇も取りやすく、繁忙期に他部署の人が手伝えるようになったそうです。

自分がいなければ業務が止まってしまうというのは、実はとても大変なこと。

「誰にでもできる仕事」にはそんな状態を避けられるというメリットがあるのです。

「誰にでもできる仕事」は「誰でも同じようにやる」わけではない

そして、「誰にでもできる仕事」は、実は「誰もが同じようにやる」わけではありません。一見誰にでもできるように見える仕事でも、人によって差は生じます。

たとえば、会社の電話の取り方1つでもそうです。「電話を取る」という業務は、それこそ「誰にでもできる」でしょう。

しかし、事務的に「はい、●●(会社名)です」と淡々と対応するか、「はい、●●(会社名)でございます」と明るい声で気持ちよく対応するか、で相手に与える印象、信頼感は全く違います。

メモの取り方、宛名の書き方、資料の作成の仕方など、1つ1つどれをとっても「誰もが同じようにやる」わけではありません。

やっている業務自体は同じなんだから、そんな差は大したことないように思うかもしれませんが、この小さな差の積み重ねが、「あの人は違う」と思われる差になっていきます。

「誰にでもできる仕事」の価値を高めることはいくらでもできる

さらに、一見「誰にでもできる仕事」にみえても、その質を高めることは誰にでもできます。

・メール1本の返信を早くする。
・資料をみやすいようにレイアウトを工夫する。
・手書きが必要な宛名の文字を丁寧に書く。
・気持ちよい挨拶を心がける。
・お辞儀を丁寧にする。

些細なことにみえても、こうした1つ1つの行動の質を高めるように心がけていくと、あなたに対する周囲の評価は変わっていきます。

資格や目に見える数字や業績でなくても、「誰にでもできる仕事」の質を高めようと努力する姿勢を評価してくれる企業は必ずあります。

その人にしかできないような特筆すべきキャリアやスキルを持つ人が、転職市場でも評価されるのではないかと思ってしまいがちですが、誰にでもできる仕事を丁寧に行うこともきちんと評価されるのです。

誰にでもできる仕事だから価値がない。

そんなことは決してありません。誰にでもできる仕事だからこそ、メリットがある。誰にでもできる仕事でもその質を高めていける。

こんな見方もあると思って、自分の仕事を見つめ直してみませんか。