自分のキャリア形成を考えての転職であれば、多少ならそれは問題はありません。
しかし「上司とうまくいかない。」「仕事が合わない。」という理由で
1~2年という短い期間で転職を繰り返している場合、
またはそうでなくても3回以上の転職歴がある場合は、
よほど高いスキルや能力、業績がない限り、転職回数が社会人生活に大きく影響します。
その影響は、もしかしたらあなたが考えている以上に大きいかもしれません。
外資系企業やベンチャー企業など転職回数を気にしない企業もありますが、
一般的に転職を繰り返すことが自分にどのような影響を及ぼすのか、現実を知っておきましょう。
1:「どうせ続かないだろう」という先入観がつきまとう
転職を繰り返す方の話を詳しく聞くと、決して本人に問題があったわけではなく、「やむにやまれぬ」状況で転職せざるを得なかったことも多いのが現実です。
・入社した会社が業績不振でリストラにあった。
・面接で聞いていた仕事と実際の仕事が異なっていた。
・入社時に条件提示された給与が支払われなかった。
など、企業側に問題があることもあります。しかし、そのような状況であったとしても、世間的には「運が悪かった、仕方ないね。」ではすまないのも、また現実です。
転職回数が多いというだけで、「我慢ができない」「周囲の人間とうまくやっていけない」など、「本人にも何か性格的に問題があるのだろう。」と勝手に思われてしまうことを理解しておきましょう。
そしてそう思われてしまうと、「どうせ続かないのでは。」「すぐ辞めるのでは。」という先入観でみられがちです。「長く働きたいと思っています。」と力説しても、その実績がないのであまり説得力がないと思われても仕方ありません。
これが採用判断の際にマイナスに影響するのは言うまでもありません。
また入社後も、少なくとも上司はあなたの履歴書に目を通し、その転職歴を確認します。上司も同じようにこの先入観を持てば、職場の人間関係はマイナスイメージからのスタートになります。そしてそれは、仕事の任され方だけでなく、職場で大事にされるか、信頼されるかに大きく影響するでしょう。
それが積み重なって、「上司や職場の人となんとなくやりにくい、馴染めない。」という状況に繋がっていく可能性もあるのです。
2:よい条件で採用されにくくなる
上記の理由から、中途採用では転職歴を気にする企業も少なくありません。転職情報サイトのリクナビNEXTが2006年に行った調査では、「転職回数が3回以上あったら気にする」と答えた企業は36%。「1社でも気にする」と答えた企業は8%、「2社」と答えた企業は8%。
つまり一般的に3回目の転職から、その回数が気にされ始めます。
企業も採用で失敗したくありませんから、「気になる点」があれば、よほど特筆すべきキャリア・熱意があるか、よほど他に応募者がいないような状況でない限り、採用しません。
つまり、応募者が集まるようなよい条件(年収、仕事内容や勤務地、オフィス環境や知名度、企業規模、福利厚生、財務体質の健全性など)の企業では、他の応募者との他者比較により、書類選考の時点で不採用になる可能性が非常に高くなってしまいます。
転職を繰り返すごとに条件が良くなる方も、もちろんいます。ただしそれが実現できるのは、自分のキャリアを考えてベストなタイミングでの転職を繰り返してきた方のみです。
そうではない場合、転職を繰り返した結果4社目くらいから雇用条件や待遇が下がっていくことは本当によくあります。その時に気づいても、もう取り返しはつかないのです。
3:企業や職場、自分を批判的に見ることに慣れる
転職を繰り返していると、「辞め癖」がついてしまいます。「辞め癖」は、「何かうまくいかないことがあれば、仕事を辞めればいい。」と退職に抵抗がなくなってしまう癖ですが、この「辞め癖」で増長される2つの性質があります。
それが、うまくいかないことを全て会社や職場のせいにする「問題を他人のせい」にする習慣と、「どうせ自分はできない人間だから、何をやってもうまくいかない。」という「自己信頼感」の喪失です。
うまくいかないことを他人のせいばかりにしていると、企業や職場を批判的な目で見ることに慣れてしまいます。また、「どうせ自分はできない人間だから。」と思ってしまうと小さな困難も乗り越えることではなく、逃げだすことばかり考えるようになってしまいます。これらが「転職を繰り返す体質」をより強固なものにしてしまうのです。
どうせ会社なんて。
どうせ職場なんて。
どうせ上司なんて。
どうせ自分なんて。
そんな考えで会社や職場、上司、そして自分をみていたら、職場や上司の「嫌なところ」や「自分に合わないところ」、そして「自分のダメなところ」ばかりに意識が向いてしまいます。人は「こうだ」と思い込むと、それ以外の一面になかなか目が向けられなくなるからです。
批判的な目で見ていたら、会社にも職場にも上司にも、そして自分にもよいところは決して見つかりません。
会社や職場、上司を批判的な目で見ている限りは、職場でよい人間関係はなかなか築けません。自分の良いところを見つけられなければ、困難を乗り越える力もアイデアもでてきません。
周囲も自分も批判的に見ることに慣れてしまった結果、「職場に居づらい。」「職場に居場所がない。」と感じてしまうような状況を自ら作り出してしまうかもしれないのです。
転職をする前にもう一度立ち止まってみよう
繰り返しますが、なかには転職回数を気にしない企業もあります。
しかし忘れてはならないのは、転職回数を気にしないのは「やる気と能力があれば」という条件付きだということです。転職回数の多さを補ってあまりある能力とやる気があれば気にしないだけのことで、人並み以上の「やる気と能力」が「転職回数を気にしないこと」の条件になっていると思って間違いありません。
転職を繰り返して「理想の職場」を追い求めても、全てが自分の理想通りでストレスもないという職場はなかなかありません。転職しても同じように上司が合わなかったり、自分に合わない仕事を任されたり、職場の人間関係がうまくいかなかったりする可能性もあるのです。
転職してはいけないわけではありません。しかし、「上司と合わない」「仕事が合わない」「仕事ができない」「人間関係がうまくいかない」などが転職理由であれば、職場ではなくて自分を変えることで問題が解決するケースもあります。
転職を繰り返したことによる影響は、決して小さくありません。企業が気にする3回目以降の転職をしたくなったら、ぜひ一度立ち止まってその転職を考え直してみましょう。