転職した会社には、誰もが多かれ少なかれギャップを感じます。苦労したり、困ったり、戸惑ったり…はよくあります。そうわかっていても、

「聞いていた仕事内容と全く違う。」
「上司と合わないし、社風にも合わない。」
「職場の人間関係が悪く、すでに出社するのが憂鬱だ。」
「面接で聞いていた待遇と全然違う。」

と辞めたい気持ちが止められなくなったら、「転職直後に辞めるリスク」に一度冷静に向き合ってみましょう。

短期間での離職は転職でマイナス評価になる

短期間

一度「辞めたい」と思い始めると、「在籍期間が長くならないうちに、辞めたほうがいいのかな?」という考えが頭をよぎります。「試用期間のうちにでも…。」と、「どうせ辞めるなら早い方がいい。」と考えてしまう方もいます。

それは非常に危険です。

短期間での離職は、どんな理由があれ次の転職でマイナスに評価になります。書類選考で、転職直後の離職を許容してもらえるのは20代まで、1回目の転職であれば30代前半まで。いずれも前職のどこかで3年以上勤めた経験がある場合です。

そうでなければ書類選考で、著しい業績や高いスキルを持っているのでもない限り、他の応募者を優先されるケースが多くなります。短期間での離職があると書類選考で通過しないというわけではありませんが、書類通過の難易度が一気に上がります。

1度短期間で離職してしまったがために、転職する度に希望の仕事内容や希望年収から離れ、待遇が下がっていく人は決して少なくありません。

転職直後で辛くても、今辞めてしまうと、もっと辛い状況になってしまう可能性も高いのです。それはどういうことなのか、詳しくみていきましょう。

「短い在籍期間」によってあなたに持たれる第一印象とは?

辞めたい気持ちでいっぱいの今は、「早く退職したほうがやり直しもきくし、企業も新しい人が採用できるし、いいに決まっている。」と思うかもしれません。しかし、それはあくまで個人的な感覚です。

企業の採用担当者も経営者も、そのような解釈をすることはほぼありません。一般的に「短期間での離職」が、どのような印象を持たれるかを知っておきましょう。

「短期間で離職してしまった」という事実は、どんな理由であれ、「事前に企業や仕事内容をよく調べて転職しなかったからだ。」という「リサーチ不足」か、「自分の気に入らないことや、仕事のストレスからすぐに逃げ出してしまう。」という「忍耐力の不足」として評価されます。

たとえ企業が業績不振を隠していたとしても、入社後に「話で聞いていた待遇と違う。」という状況になっても、どんなに職場の人間関係が悪かったとしても、企業が持つこの第一印象は変わりません。

「面接で条件をちゃんと確認しなかったんじゃないの?」
「この企業は怪しいって見抜けなかったの?見る目がないんじゃないの?」
「よく話を聞かなかったからじゃないの?」
「自分の思い込みだけで決めちゃったんじゃないの?」
「コミュニケーション力がなく、周囲の人とやっていけないタイプかな?」
「ちょっとイヤなことがあると、すぐに逃げ出すタイプだね。」

もちろん、選考ではそれまでの経験やスキル、熱意によってリカバーすることもできます。しかし、面接に進んだ場合でも、この第一印象が強く残ることを頭に入れ、それを解消できるようなアピールをするようにしましょう。

「辞め癖」がキャリアダウンの道につながる

短期間での離職に持たれるマイナスイメージのため、応募者が多く集まるような企業では他者比較により採用されにくくなります。

また、一度仕事を短期間で辞めてしまうと、「合わないとわかったら、すぐに辞めたほうがいい。」という「辞め癖」がついてしまいます。企業の採用担当者や採用決裁者は、確実にこの「辞め癖」を見抜きます。

「合わないなら辞めた方がいい」というこの「辞め癖」は、企業から見れば非常に不誠実であると理解しましょう。「従業員には長くしっかり働いてほしい。」という、従業員に対して真摯で誠実な企業は、従業員も仕事や企業に対して誠実であることを期待します。

「辞め癖」がついてしまうと、こうした「従業員思いの優良企業」から採用されなくなってしまいます。時間と労力をかけて採用した社員がすぐに辞めてしまうのは、企業にとってもリスクだからです。

1社目では3~5年勤務した後の転職で、短期間で辞めてしまった経験をきっかけに、数か月~2年未満の期間での転職を繰り返し、その度に年収が下がっている人に数多く会ってきました。「辞め癖」がついてしまうのは、人生でもキャリアでも、とても大きなリスクと認識してください。

「辞めたい今」を乗り切って身に付く能力に価値がある

辞めたいときには、「どうしても辞めたい今」を乗り越えて身に付けられるものは何か?に目を向けてみましょう。苦しい今こそ、今までにない能力を身に付けるチャンスと捉えることもできます。

たとえば、「仕事内容が聞いていた内容と違い、今までの経験を生かせない」場合には、新たなスキルや知識を身に付ける機会と考えられないでしょうか。

「ありえないほど激務」の場合には、無駄な仕事を効率化する能力を磨いたり、対応できる業務量のキャパシティを広げたりすることができます。

「嫌な上司・先輩・同僚がいる」場合は、「やり過ごす」「気にしない」「なんとかうまくやる」という社会人に欠かせない対人能力を身に付ける絶好のチャンスです。

「キャリアアップにつながらない、単調な仕事だった」場合には、単調な仕事をさっさと片付けて定時で帰宅し、キャリアアップのための勉強の時間ができたと思いましょう。

何よりも「辞めたい」と思いながらも、なんとか乗り切った「忍耐力」は大きな財産となります。せめて1年、「辞めたいけれど、今はこうした能力を磨く時間」と割り切ってみてください。

どうしても辞めたければ在職しながら転職活動を

どうしても辞めたい気持ちが止まらない、辞める意志は固いという場合は、リスクを最小限に抑えるために、転職活動は在職しながら行うことをおすすめします。短期間で辞めてしまって離職中になってしまうよりは、在籍しているほうがまだ「リスク管理能力がある」と印象がよいからです。

転職直後は面接に行くための有給も取りにくいですが、平日の夕方や夜、土曜日などの面接設定をお願いしてみましょう。日程調整してもらうためにも、転職エージェントに登録するのも有効です。

「この企業に合わない、転職に失敗したと気づいたんだから、早く辞めて軌道修正したほうがいい」と思う感覚は、転職市場では一般的に共感してもらえるものではありません。その軌道修正は今の職場で1年頑張った後でも決して遅くはありませんし、1年後のほうがいい軌道修正ができる可能性も高いのです。

心身に影響がでるほど我慢する必要はありませんが、転職直後の退職はそのリスクをよく考えてらにしましょう。