アベノミクスや円安の影響を受けた企業の好業績を背景に、2015年の転職市場は活況です。転職情報サイト・DODAが発表したデータでは、2015年3月期の求人数、新規求人数は同サイトが調査を始めて以来、最高値となりました。

求人が活況な今は、確かに転職希望者にとっては絶好の機会です。しかし、自分のやりたい分野や興味のある業界でピンとくる求人がないと、「好景気だから、いろいろ求人あるはず」「今はなくても、そのうち求人が出てくるはず」とやり過ごす方も多いでしょう。

そんな時に、ぜひ一度チェックしたいデータが「業種別の転職求人倍率」です。なぜなら、あなたが「待っている」業種や職種の求人は、どんなに待っても出てこない可能性もあるからです。

IT/通信系、メディカル系、サービス系・・・
そのなかにやりたいことはある?

03(出典:転職情報サイトDODAより http://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/033.html)

上のグラフは、転職情報サイトDODAが発表している業種別の求人倍率を表したものです。ここから、「今、どんな業界で求人が多いのか?」を読み取ることができます。

これを見ると、求人倍率として発表される全体の平均値「1.24」を上回っているのは、「IT/通信業界、メディカル業界、サービス業界」だけであることがわかります。そしてこの傾向は、2011年頃からずっと続いています。

他にも「メディア業界」の求人倍率が1.02とわずかに1を上回っていますが、それ以外の業界の求人倍率は「1.0」を下回っています。つまり、転職希望者にとっては厳しい状況が続いているということです。

求人が活況といっても、どこの業界でも求人が活況というわけでは決してありません。あなたの希望する仕事が、「IT/通信業界、メディカル業界、サービス業界」でなければ、「もう少し待ってみよう」と待ったところで、自分の希望にぴったり合う求人が出てくる可能性は、決して高くはないという現実を認識しておきましょう。

求人が多いのは「技術系」中心という現実
そして、もう一つ。転職を考えるときにチェックしておきたいデータが、この「職種別の転職求人倍率」です。どんな職種の求人が多いのかを示したこのデータを見ると、今市場で求められている人材はどのような職種なのかがわかります。

02(出典:転職情報サイトDODAより http://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/033.html)

これをみると求人倍率が多いのは、ほぼ技術系職種であることがわかります。IT/通信業界を筆頭に、建築/土木系、電気/機械系、メディカル系と業界は様々ですが、いずれも技術職です。

唯一技術職でないのが、コンサルタントやマーケティング職など、非常に専門性の高い「専門職」です。ただこの「専門職」の求人倍率は、該当する転職希望者数が少ないために求人倍率が高くなっているのであり、絶対的な求人数が多いわけではありません。

そして求人が多いイメージがある「営業職」の求人倍率は、「1.02」倍。人事や経理、また企画系職種に至っては、「0.88」倍。この状況は2008年から続いており、営業職の求人倍率はここ数年ずっと「1」を切るか、少し上回るか、企画系の事務職に至ってはずっと「1」を下回る状況です。

つまり、転職求人倍率がよくなり、新規求人が増えたとニュースになっても、あなたが事務系職種で、IT/通信業界や、メディカル業界に全く興味がない場合、「希望に該当するような求人は、転職市場には決して多くなく、あったとしても競争率が高い」ということなのです。

チャンスを逃さないためにも必要条件と十分条件を見極めて
01そこで、事務系職種の方の転職で重要なのが、転職における「必要条件」と「十分条件」を整理して、見極めることです。

年収、仕事内容、勤務地、勤務時間、社風、出産育児休暇などの子育て支援制度の有無など仕事を選ぶにあたって、叶えたいものはたくさんあるでしょう。

それを一度に全て叶えようとするのではなく、「絶対に譲れないもの(必要条件)」と「妥協してもいいもの(十分条件)」を明確に整理しましょう。そして、「絶対に譲れないもの(必要条件)」を満たしている場合には、多少他の条件を揃えていなくても、ぜひ応募してチャレンジしてみてください。そこに意外な出会いがあるかもしれないからです。

「年収も絶対アップしたい。仕事内容は、英語が使えないといや。会社も安定していてほしいし、勤務地も1時間以上は通勤したくないし、できれば子どもを産んでからも働きやすい会社がいい」

なんて、「せっかく転職するんだし、もう転職したくないから、できるだけ条件のいいところに」とついつい思ってしまう気持ちもよくわかります。しかし、「すべてを叶えてくれる夢のような会社」はありません。あったとしても、あなたを選んでくれるとは限りません。

「すべてを叶えてくれる夢のような会社」を探していると、「すべてではないけれど、必要条件は満たしてくれるいい会社」を見落としてしまいます。それは非常にもったいないことです。

また、「絶対に譲れないもの(必要条件)」と「妥協していいもの(十分条件)」を整理していないと、内定をもらっても納得感がなく、「まだまだ、いい会社がありそうな気がする」とせっかくのご縁をお断りしてしまい、結局その後転職活動が長引いてしまうこともあります。

反対に、内定をもらった会社になんとなく入社してしまい、「なんか違う…」と納得できなくて1年前後で退職してしまい、また転職活動をすることに・・・ということにもなりかねません。

求人がさほど多くないという市場環境で納得した転職をするためにも、この「必要条件」と「十分条件」をきちんと見極めることはとても大切なのです。

こだわりや価値観を一度捨てたら
素敵な出会いがあるかもしれません

「必要条件」と「十分条件」を見極めると、他にもいいことがあります。必要なものを見極めるということは、その分、余分なこだわりを捨てるということです。

たとえば、「仕事内容だけは絶対にこだわりたいから、年収は現状維持ができればいい」とか「年収アップさえできれば、仕事内容はある程度は広げてチャレンジしよう」とか、必要条件以外のこだわりを捨てれば、それだけ求人選びの視野が広がります。それによって、

「よく考えたら、この会社もいいかも?」

と思える会社が増えてくるのです。「この会社もいいかも」と思える会社を増やすことは、その分出会いのチャンスを広げ、転職成功の可能性を高めることになります。

「今まで興味はなかったけど、面接に行ってみたら人事の人とすごくフィーリングが合った!」「実はやりがいのありそうな会社だった」ということもよくあります。

こだわりを捨て、視野が広がった先で、実は自分の叶えたい条件を叶え、自分のことも求めてくれる「運命の会社」に出会う可能性は大いにあります。

繰り返しますが、転職求人倍率が回復したとはいえ、事務系職種にとっては楽観できない状況は続いていますし、今後も続きます。だからこそ、自分に必要なものをきちんと見極めて、本当に納得のできる転職ができるようにしましょう。