2015年3月の完全失業率は3.4%と、年明け以降減少が続いています。完全失業者数は228万人と、前年同月に比べ18万人減少し、58ヶ月連続の減少となりました。

団塊の世代の定年により、2013年、2014年は労働力人口も117万人と大幅に減少し、各業界でそれを補う労働力が必要となり、企業の採用意欲の高い状況が続いています。

こうした背景もあり、有効求人倍率が1.0を下回っていた2008~2013年に比べ、現在は随分転職しやすい環境になったと言えます。それでも、

「転職活動をしているけれど、なかなかうまくいかない。」

「書類選考もなかなか通らないし、面接に行っても結果が出ない。」

という方もいらっしゃると思います。そんなふうに転職活動がうまくいかない時には、必ずそれなりの理由があります。転職活動に疲れて行き詰まりを感じたら、一度立ち止まってこんな視点で活動を見直してみましょう。

 1:転職するなら年収アップは当然!と思っていませんか?

時々、転職後の年収を「現在の年収+50~100万」を希望している方がいます。しかし年収の考え方は、同業種なら「現状維持」が基本です。「年収アップしたらラッキー」くらいで考えておきましょう。

賃金は、個人の能力だけでなく企業の収益構造によっても変わります。社員の年収が高いのは、利益率の高い収益構造で社員に多くの給与を支払うことができる業種や企業です。それがあなたの希望の業種や企業と一致するとは限りません。

同じ業種でも企業努力によって独自に高収益を実現している企業もありますが、基本的には同業種であれば、その収益構造に大差はありません。だから同業種への転職で、大幅な年収アップを期待しても難しいのです。

国税庁が発表している、業種別の平均年収のデータもあります。こちらも参考に、希望する給与が妥当なのかそうでないのか、判断する目安にしてみてください(ただしこれは、全年齢の平均給与となります)。

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出典:国税庁「平成24年分民間給与実態統計調査結果」(http://www.nta.go.jp/)より作成
※注 横軸の数値の単位は(千円)

さらに地方へUIターン転職ならば、どんな職種・業界であれ都市部の賃金から2~3割ダウンします。一例をあげると、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、全国トップの東京都の平均年収は612万。同じ首都圏でも、群馬県(全国17位)では平均年収445万と3割近く下がります。

「転職で年収が100万アップした」という話をインターネットで見れば、「私も!」と思う気持ちもあるでしょう。しかし、希望する業種や職種、地域によっては、大幅な年収アップは実現しないことを理解しておきましょう。また、年収は今までのキャリアに対する評価ですから、未経験職種にチャレンジしている場合は、下がっても仕方ないと考えておくことをおすすめします。

2:知名度や製品・サービスの好き嫌いで会社を選んでいませんか?

規模

知らない会社、規模が小さい会社など、「よく知らないから受けない」と条件が合う企業の応募を見送っていませんか?または製品やサービスを、何となくの好き嫌いで判断していませんか?実はその行動が、あなたを求める企業との出会いを遠ざけているかもしれません。

こんなケースがありました。

子どもを地方の実家の両親に預け、都内で働く32歳のシングルマザーの由紀さん(仮名)は、子どもと共に暮らせるようUターン転職を希望していました。

英語が得意な由紀さんは、経理や貿易事務の経験を活かし、できれば英語を使った仕事をと考えていました。

現在の年収は420万でしたが、希望年収は350万まで妥協しました。それでも地方に事務職の求人は少なく、それだけの給与をだせる企業もほとんどありませんでした。しかし、あるメーカーが彼女のキャリアに興味を持ち、彼女は書類選考を通過しました。

そのメーカーは中小企業ながら、ある製品で国内トップのシェアを持ち、その多くが海外に輸出され、海外で極めて高い評価を得ていました。そのため業績も安定し、地元では社員の待遇や社風の良さも評判で、彼女の希望する年収を提示できる数少ない企業の1つでした。

しかも職種は、由紀さんの第一希望の英語力を活かせる貿易事務。希望する条件をほぼ完ぺきに満たしていましたが、「扱っている製品に興味が持てない」と彼女は面接の話を断りました。その後数か月、希望に合う求人がないまま、由紀さんの転職活動は続いています。

このケースを「もったいない!」と思えたら、転職活動の行き詰まりを改善できる可能性は大いにあります。

企業の製品やサービスを好きかどうかはとても大切です。しかし、今自分が持っている知識や情報で判断する前に、よくリサーチしてみましょう。オリジナル性や将来性、顧客の評判など新たな情報を得れば、その企業や製品やサービスに魅力を感じる可能性は十分にあります。

「よく知らないから受けない」「製品やサービスに馴染みがないから、受けない」ではなくて、「知らないから、調べてみよう。会ってみよう。」と、心を広げて会社の良いところを調べる姿勢を持つと道は開けてきます。

3:「企業が求める人材」を理解していますか?

理解

企業が採用するときに、どんな業界、どんな職種でも共通する、「応募者に不安を感じる条件」があります。この条件に当てはまる場合には、「自分のキャリアは一般的に懸念点が多い」という事実を受け止め、それをリカバーできるような対策を用意する必要があります。

1)転職回数が多い(4回以上)。1年未満で辞めた会社がある。

転職回数が多いと、一般的に「また転職してしまうのでは?」と懸念されます。また在職期間が1年未満の企業があると、「すぐに辞めてしまうのでは?」「責任感がないのでは?」「何かトラブルがあったのでは?」と懸念材料はさらに増えます。

もしも該当する場合には、自己PRなどでそれぞれの転職で何を考えていたのか、なぜ短期間で退職したのか、相手が納得できる理由を説明しましょう(もちろん、作り話はタブーです)。

2)離職期間が長い(6ヶ月以上)。

離職期間が長いと、「自分を客観的に捉えることができないのでは?」「危機感が足りないのでは?」「計画性がないのでは?」と懸念されます。

「介護をしていた」「資格の勉強をしていた」などのきちんとした理由があれば、それを明記しましょう。何となく離職期間が伸びてしまった場合には、離職期間の長さを少しでもカバーできるよう、やる気や熱意をアピールしましょう。

3)派遣社員の期間が長い

社員の募集の場合には、直近の経験が正社員のほうが望ましいのが本音です。派遣社員歴が長いと、「自主的に仕事ができるか?」などの点に不安があるからです。

派遣社員から正社員を希望する場合には、自主的に仕事をした経験や正社員同様の責任ある仕事をした経験など「正社員としても十分働く能力と意欲がある」ことをアピールしましょう。

 4:せっかくの転職だからより多くの希望を叶えたいと思っていませんか?

希望

「最後の転職にしたいから、絶対妥協したくないんです」という話をよく聞きます。長く勤めたいから、納得できるよう多くの希望を望んでしまう気持ちはよくわかります。

しかし、転職活動が長引くのは、あなたの希望と企業が求める条件にミスマッチが発生しているからです。「全てに妥協したくない転職活動」に、無理が生じているサインです。企業の条件は変えられません。あなたの希望を変えましょう。

それには、本当に自分が必要とする叶えたい条件(必要条件)を見極め、それ以外は柔軟に検討することが必要です。年収も、待遇も、仕事内容も、勤務地も、社風も、企業の知名度や規模も・・・と全てを叶えることはできません。

「年収をクリアできれば、仕事内容は経験が生かせればいい」「経験が活かせるなら、企業規模は問わない」「正社員になれるなら、業界は問わない」など、譲れないものを絞り、それ以外の条件については幅広く企業を選ぶようにしましょう。

 柔軟に考えれば転職活動は変わってくる

いかがでしたでしょうか。転職活動に行き詰まりを感じ、疲れた時こそ、自分自身のこだわりを見直し、視野を広げるチャンスです。

自分が本当に叶えたい条件を見極め、柔軟に企業を選べるようになってきたら、転職活動はきっと変わってきますよ。