「満員電車で通勤するのも疲れたし、人ごみも苦手だし、地元に戻ろうかな…。」と考える人。
「数年働いたら、地元に戻ろうと決めていた。」という人。
「親が帰ってこいとうるさいし・・・。」という人。
地方に移住したい若者が増えている今、都市部で働きながらも、Uターン転職を考える人は少なくありません。
一方で、「Uターン転職で後悔した。」という話もよくあります。生まれ育った地元に帰ったはずなのに、後悔してしまうのは何故なのか。後悔しないUターン転職のために、地方に転職する「現実」を知っておきましょう。
1:年収は2~3割下がるのが常識
都道府県別年収ランキング | |||||
1位 | 東京 | 377.4万円 | … | ||
2位 | 神奈川 | 336.0万円 | 38位 | 高地 | 250.9万円 |
3位 | 大阪 | 321.9万円 | 39位 | 島根 | 250.8万円 |
4位 | 愛知 | 312.5万円 | 40位 | 長崎 | 245.4万円 |
5位 | 京都 | 301.5万円 | 41位 | 山形 | 242.5万円 |
6位 | 千葉 | 299.5万円 | 42位 | 佐賀 | 241.8万円 |
7位 | 奈良 | 294.9万円 | 43位 | 秋田 | 241.4万円 |
8位 | 埼玉 | 294.7万円 | 44位 | 宮崎 | 238.2万円 |
9位 | 静岡 | 292.9万円 | 45位 | 岩手 | 234.6万円 |
10位 | 滋賀 | 292.0万円 | 46位 | 沖縄 | 227.7万円 |
… | 47位 | 青森 | 226.6万円 |
(出典:厚生労働省 平成26年賃金構造基本統計調査)
注:年収は男女平均額。全国平均年齢42.1歳、全国平均賃金299.6万円
こちらに紹介したランキングは、厚生労働省が発表する「賃金構造基本統計調査」の結果です。
全年齢、男女の平均額になりますが、これを見ていただいてもわかるように1位の東京と2位の神奈川を比べても、平均で約40万円。つまり、1割以上年収が下がります。1位から5位、東京から京都に転職しただけでも、2割年収が下がるのです。
この調査結果からもわかるように、全国平均の年収299.6万円を超えているのは、1位~5位までの都市部の5都府県のみ。都市部は年収が高いので、地方にUターン転職する場合、年収が2~3割ダウンするのが一般的です。
現在の年収にもよりますが、3割程度は誰でもどんな職種でも下がると心得ましょう。年収を現状維持という条件で地方の求人を探しても、希望の求人に出会える可能性はまずありません。
Uターン転職をする方の中には、内定後に提示される年収や月収にショックを受ける方もいますが、それも決して評価されていないのではなく、そもそも地方は給与水準が2~3割低いのです。
2:「生活費が安い」は幻想なことも
「それでも地方は生活費が安いから。」とよく言われますが、それも見方次第です。家賃や土地代などは確かに安く、賃貸で暮らすのも広い家が借りられますし、マイホームも購入しやすくなります。住環境は、都市部での生活に比べてかなり理想に近づくでしょう。
しかし、日常的な食料品や日用雑貨の価格は、都市部と地方ではほとんど変わりません。価格競争の激しい都市部のほうが、価格が安い商品もあります。
また、地方では都市部ではほとんどかからない自動車関連費用が発生します。
地方暮らしには自動車が必要不可欠なので、1人1台所有することになります。自動車を所有すれば、車のローンや日々のガソリン代、各種税金、各種保険、定期的な車検費用やタイヤの購入費用などの維持費が発生し、年間を通じて大きな出費になります。さらに、積雪地方ではスタッドレスタイヤの購入も加わります。
ただし、都市部ほど外食の店舗がなく、車社会で就業後にそう気軽には飲みに行けないことなどから、外食費用や交際費はかなり減少します。Uターン転職した人の中には、「お店がないので、ショッピングに行って無駄遣いすることがなくなった。」という声もあります。
住居関連費用が減った分(もしくはそれ以上に)、自動車関連費用が発生する。食品や日用雑貨は都市部と同程度。外食費用や交際費が減少する分が、「生活費が安くなった」に繋がるかどうか。
「地方は生活コストが安い」というイメージが持たれがちですが、これが都市部と地方を比べたときの出費面の変化の現実なのです。
3:今の経験が地方では活かせないこともある
地方では、2つの意味で今までの経験が活かせないこともあります。
1つは、そもそも今までと同様の仕事の求人がないケースです。例えば、各種インターネット関連サービスや教育研修や人材派遣・紹介などの人材サービス、各種コンサルティングサービスなどは地方には少ないビジネスモデルのため、なかなか求人がありません。
2つめは、仕事上でも今までの経験があまり必要とされないというケースです。それ以外の職種でも、都市部と地方では仕事の進め方やルールなどが異なり、今までの経験や知識を仕事で活かせない、評価してもらえないこともあります。地方と都市部ではビジネス感覚が異なることもあります。今までよしとされていたルールが通用しないことや、評価されていた能力が全く受け入れてもらえないことも珍しくはありません。
「ゆとり」と「家族」というキーワードに魅力が感じられるかどうか
Uターン転職の現実を紹介しましたが、Uターン転職にはよいこともたくさんあります。例えば、Uターン転職した人が口を揃えていうのが、「通勤時間のストレスを大幅に減少できたこと」です。地方では基本的には自動車通勤で、大企業の工場周辺を除けば渋滞になることもあまりなく、満員電車のようなストレスはありません。
また、多くの場合は都市部の企業よりもアットホームでよくも悪くも人への関心度は高くなり、人とのつながりを作りやすくなります。
他にもUターン転職のメリットには、「家族との時間ができる」「地元の昔からの友人と過ごす時間ができる」等があります。週末に自家農園を楽しんだり、アウトドアを楽しんだり・・・と、都市部にいた時に比べて余暇の質も変わり、「人間らしく生きられるようになった。」と、年収が下がっても今の生活に満足しているという声はよく聞きます。
避けられない年収ダウンと仕事内容の変化と引き換えに得られる、「ゆとりのある生活」や「家族と過ごす時間」が魅力的だと思えれば、Uターン転職後に後悔する可能性も低くなるでしょう