「仕事が楽しくない…」というと、「仕事は楽しくなくて当たり前」なんて返しをされることもあるかもしれませんが、仕事はつまらないよりは面白いに越したことはありません。
ただ、仕事が楽しくなくても気にならない生き方があったり、状況は変わらなくても考え方を変えたり…と辞める前にもできることはいろいろあります。辞めることはいつでもできます。仕事が楽しくない状況をなんとかしたいと思ったら、こう考えてみませんか。
仕事が楽しくない理由を分析する

「仕事が楽しくない」と一言にいっても、「楽しくない」理由はいろいろあります。仕事が楽しくない現状を改善するには、自分がなぜ仕事を楽しくないと思っているのか、気持ちを整理することが大切です。楽しくない理由がわかれば、対処法も見えてくるからです。
「仕事が楽しくない」と感じるには、一般的に以下のような原因が考えられます。今の自分はどれに当てはまるのか、自分の気持ちを客観的に見つめてみましょう。
1. 人間関係がストレスになっている
仕事が楽しくない、つまらないと感じる理由の1つが人間関係です。なかでも、大きく影響するのが、仕事の指示を出し、自分の仕事の評価者でもある上司との人間関係でしょう。
「上司との人間関係が良好で何の問題もない」「上司は尊敬できる相手」と思えるのは、よほど運が良い方で、多くの会社員は多かれ少なかれ上司には何らかのストレスを抱えています。パワハラやモラハラとまではいかなくても、上司に対してストレスを感じてしまう要素はいくらでもあるからです。
たとえば、上司が次のようなタイプだったら、一緒に働く部下はちょっと大変ではないでしょうか。
・自分のことしか考えていない。
・「自分の意見や経験が絶対」というタイプで部下の意見を全く聞かない。
・部下を理解・評価しようとしない。
・部下の業績を自分のものにしてしまう。
・部下をえこひいきする。
・経営層にばかりいい顔をして、部下への態度が横柄。
・マイクロマネジメントで細かく関与してくる。
・部下にあまり関心がない。
・仕事が全然できない。あるいは仕事をしない。
上司とはいえ人間ですから、多少の欠点は誰でもあるものですが、それでも許容範囲を超えてしまうと仕事へのモチベーションに大きくしてしまうでしょう。
2. 職場に「いいな」と思える人がいない
「人間関係がストレス」というほど、トラブルはないけれど、尊敬できる上司や先輩もいない。一緒に仕事をしていて刺激し合ったり、気が合うような同僚もいない。
そんな「可もなく不可もなく」の状況は、トラブルを抱えている状況と比べれば恵まれてはいますが、どこか物足りなさを感じてしまうのも無理はありません。
すぐに退職を決意するほど切羽詰まっていないからこそ、何か物足りない、不完全燃焼のような状況がズルズルと続いてしまう可能性もあります。
3. 仕事が簡単・単調すぎて成長を感じない
仕事が簡単すぎる、毎日同じことの繰り返しで変化がなく、単調で刺激がないという方もいらっしゃるでしょう。
「同じ給与なら、簡単で単調な方が楽でいい」という考え方もありますが、仕事に変化や成長を求めるタイプの方がこのような仕事についてしまうと、物足りなくなってしまうのも無理はありません。
4. 仕事にやりがいを感じられない
事業は、誰かがその商品やサービスに対価を支払うことで成り立っています。対価を支払うということはそれだけ必要とされていることであり、仕事はそうした事業に関連して発生しているので、あなたの仕事は必ずどこかで誰かに必要とされ、役に立っているはずです。
しかし、「誰のための仕事なのか?」という相手が見えにくかったり、無駄な業務が多かったり、成果がなかなか感じられなかったり、上司の納得できない指示に仕方なく従わなければならない仕事だったりすると、「この仕事は何のために、誰のためにやっているのだろう?」とやりがいを感じられなくなってしまいます。
仕事の意義や価値を見失ってしまうと、仕事もつまらないと感じてしまうようになってしまうでしょう。
5. 仕事内容が合わない
仕事内容が、自分の適性に合っていない方もなかにはいらっしゃるでしょう。
たとえば、人と話すことが好きなのに、事務作業ばかりで誰とも会話することがなく1日が終わってしまったり、数字が苦手なのにデータ集計の業務が多かったり、人と話すのが苦手なのに営業職だったり…。あるいは、自分の適性が何かはわからないけれど、「なんとなく今の仕事内容はどこかつまらない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
自分が「好きなこと」と「できること」と、会社が「あなたに任せたいこと」が、できる限り一致していると仕事は楽しくなりますが、その重なりが小さくなればなるほど、仕事に楽しさを見出すのは難しくなってしまうでしょう。
6. 評価や報酬が見合わない
「仕事が楽しくない」という感情のなかには、「こんなに頑張っているのに、評価や報酬が満足できないから、面白くない」という種類の感情もあります。
その原因としては、
・上司が部下のことをちゃんと見ていなかった。
・上司(会社)が評価するポイントと、あなたが力を入れていたポイントが異なっていた。
・上司がえこひいきするタイプで不当に低い評価をされてしまっている。
などが考えられます。
報酬が見合わないのは、上司による査定評価が影響する賞与が低いのが納得できない場合と、そもそも会社の報酬体系全体の年収が低い場合と2つのパターンがあります。前者は自分か上司かどちらかが異動すれば、解決できる可能性がありますが、後者は会社全体の問題なので、転職しない限り改善するのは難しいといえます。
辞めるか現状維持か?仕事が楽しくないときの対処法

さて、今自分が「仕事が楽しくない」と思っているのは何が理由なのか、なんとなく見えてきましたでしょうか。
仕事が楽しくない理由がわかったら、これから紹介する改善する対処法に目を通し、「やってみようかな」と思えるものがあったら、ぜひ試してみてください。試してみるときには、「試しにやってみようかな」くらいの軽い気持ちでトライし、自分には合わなそうだったり、無理そうだったりしたら、すぐにやめて他の方法を試してみましょう。
楽しくない仕事は辞めたくなるでしょうし、「仕事が面白くないなら、辞めればいい」という誘惑もあると思います。
しかし、仕事を辞めて「この仕事なら楽しいはず」と思って転職した仕事が、入社してみたら実は楽しくなかった、ということは十分にあります。また、転職して最初はよかったけど、いつの間にかまた「仕事が楽しくない」状況に直面することも考えられます。
仕事はつまらないよりも楽しいに越したことはありませんが、この先何十年も働き続ける人生で、環境要因に恵まれ続けて「楽しい仕事を続けられる」ことはまずありえません。だからこそ、ここで
・どんな仕事や環境でも、楽しさを見いだせる力
・仕事が楽しくなくても特に気にならない力
・自分の環境を「仕事が楽しい状況」にできる力
のいずれか1つを身につけておくと、この後の人生で非常に役に立ちます。辞めるのはいつでもできます。まずは現状維持をしながら、自分が今ここで身につけられるのはどの「力」か、模索してみるのはいかがでしょうか。
1. 自分の考え方や捉え方を変えてみる
自分の考え方や捉え方を変えることができると、「どんな仕事や環境でも楽しさを見いだせる力」が身についてきます。
たとえば、嫌な上司も「むかつく」ではなく、「上司もいろいろあるんだな」と思えれば見方も変わります。仕事ができない上司も「なんでこんなに仕事ができないのに、自分よりも給与をもらっているんだ」と思うと、不条理を感じずにはいられませんが、「そんな人にムカついていても、何の特にもならない」と自分の関心の外にその上司を追いやることができれば、心が乱されることも少なくなります。
大ベストセラーになった「嫌われる勇気」(岸見一郎著 ダイヤモンド社)でも、
人は主観的な意味付けの世界で生きている。つまりその人特有のメガネで世の中を眺めており、全て個人の解釈が介在しているから、あなたのかけているメガネ=解釈は、自分で今すぐに変えられる。
と紹介されています。自分の解釈、つまり考え方や捉え方を変えるだけでも、状況を変えることはできるのです。
ただ、今まで自分の一部であった考え方や捉え方を変えるには、何かの「きっかけ」が必要なこともあります。そのためにも誰かと話してみたり、本を読んでみたり、何か新しい情報に触れるきっかけをつくっていくとよいでしょう。
2. 同僚や先輩に相談する
もし、相談できる同僚や先輩がいれば、楽しくない今の状況について話をしてみるのもおすすめです。
「誰かに話す」ことで自分の気持ちを整理できますし、声に出して話すことで「ああ、自分はこう考えていたんだ」と気づくこともあります。ただ話を聞いてもらうだけでも考えや気持ちがすっきりするでしょう。
また、もしかしたら同僚や先輩のアドバイスや視点が、今の状況に対する考え方や捉え方を変える「きっかけ」になるかもしれません。あるいは、あなたが知らない社内の情報を教えてくれて、それが状況そのものを改善する突破口になる可能性もあります。
時には思い切って周囲の人に頼ってみましょう。
3. プライベートで楽しめることを始める
仕事は楽しいに越したことはないですが、仕事に「楽しさ」を求めない生き方もあります。「仕事は生活費を得る手段」と割り切って、プライベートを充実させていくと、仕事が楽しくないことも気にならなくなります。つまり、「仕事が楽しくなくても特に気にならない力」が身に付くのです。
趣味の時間を充実させたり、初めてみたかった習い事を始めたり、ジムやヨガ、ジョギングやウォーキングなど運動を始めたり、料理に凝ったりするのもいいでしょう。
プライベートの時間を充実させることで、自分の世界も広がりますし、仕事以外で気の合う友人を見つけたり、将来退職してからも続けられるような趣味や仕事につながったりと、得るものは意外に多くあります。
もし今、仕事や職場が楽しくなくても、待遇には不満がなく、特にこれといってやりたいことや目指したいキャリアも思い付かないのであれば、現状維持のまま仕事以外で楽しいものを見つけるというのは、現実的に考えて最もリスクが少なく、得られるものが多いおすすめの方法です。
4. 副業やプロボノ活動をしてみる
最近は副業OKの会社も増えています。もし今の会社が副業OKならば、仕事以外の時間で副業を始めるのもよいでしょう。
「副業に生かせるようなスキルや資格もないし…」という方は、趣味や自分の興味のある分野でブログを書いて広告収入を得ることを目指したり、あるいはNGOやNPOでボランティアやプロボノ活動をしてみるのもおすすめです。
副業にしてもプロボノにしても、本業以外のこうした活動をすることで、自分の世界が広がります。「会社の仕事」だけがメインの生活をしていると、それがつまらないのが気になってしまいますが、他に自分が何か打ち込むフィールドがあれば、自分の世界は「会社の仕事」だけではなくなります。
他に興味関心があり、自分が活躍できるフィールドがあれば、「会社の仕事」がつまらないのは大きな問題ではなくなってくるはずです。
5. 配置換えや担当替えを上司に相談する
もし、上司との人間関係には問題なく、かつ上司が部下思いであれば、部署内での配置換えや担当替えを相談し、現状を改善できないか試みるという方法もあります。これが「自分の環境を『仕事が楽しい状況』にできる力」です。
ただこれが実現するには、
・上司の物分かりがよく、部下のキャリア形成を真剣に考えている。
・配置換えや担当替えが適切な対応である、前向きな理由を訴える。
(つまらないからとかではなく、「自分はこちらの方が得意」「こういうことにチャレンジしてみたい」などあくまで前向きな理由で相談することが重要です)
・配置や担当を替える余地がある。
という3つの条件が満たされている必要があるので、難易度は高いのですが、ものは試し。一度相談しておくと、今は配置や担当替えの余地がなくても、そのような機会ができたときに考慮してもらえる可能性につながりますので、相談できそうな上司であれば、試してみてはいかがでしょうか。
6. 異動希望を出す
もし社内に異動希望を申請する制度があるならば、異動願いを出す。そうした行動を起こすのも「自分の環境を『仕事が楽しい状況』にできる力」です。
異動希望を申請する制度がないならば、人事や異動希望先の部署の課長や部長に直接訴えるという手段もあります。
かなりの勇気も必要だと思いますが、「なぜその部署に異動したいのか?」「自分はその部署で、今までの経験を活かしてどんな貢献ができるのか?」を前向きに、具体的に訴えることができれば、異動の実現可能性は高くなるでしょう。
7. 転職活動をする
最後の対処法が「転職活動をする」です。他の対処法を試してみたけど、なんとなく状況は変わらないと思ったら、実際に転職活動を始めてみましょう。本当に転職するかどうかは、活動を始める時点では決めていなくても構いません。
実際に転職サイトに登録し、転職エージェントに相談して、具体的な求人を探し、面接に行き…と転職活動をしていると、他社の情報と比較して、今の環境や自社を客観的に捉えることができます。
その時に「やっぱり今の環境は無理だな」と思えれば、そのまま転職活動を続けて転職すればいいですし、「改めてみると、実は悪くないかも」と思えれば現状維持でもまた新たな気持ちで仕事に向かうことができます。
転職活動も視野を広げる機会の1つです。実際に転職するかどうかはさておいても、ここで転職活動をして視野を広げることは決して無駄にはならないでしょう。
答えが見つからない時はキャリアコンサルタントに相談を

「仕事が楽しくない」という状況を変えるには、その状況に対する自分の考え方や捉え方を変えるか、環境そのものを変えるかどちらかです。しかし、自分がどうしたいのか、自分の気持ちがわからない、あるいは相談できるような同僚や先輩、上司がいないということもあるでしょう。
そんな答えが見つからない時には、ぜひキャリアコンサルタントを活用してみませんか。お話を丁寧にお伺いしながら、「本当は何がネックになっているのか?」「自分にとってはどうするのがいいのか?」を見つけるサポートをさせていただきます。